網膜,硝子体〈眼科診療ビジュアルラーニング5〉

  • ページ数 : 360頁
  • 書籍発行日 : 2020年8月
  • 電子版発売日 : 2021年1月22日
12,100
(税込)
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商品情報

内容

糖尿病網膜症や網膜血管閉塞症などの血管性病変,杆体錐体ジストロフィなどの遺伝性疾患,裂孔原性網膜剥離などを含めて,広く網膜疾患をとりあげた.眼底自発蛍光やOCT Angiographyなど,新しい検査手法による所見が満載.加齢黄斑変性,黄斑ジストロフィなどは本シリーズ「6. 黄斑部」に譲った.

あわせて読む → 「眼科診療ビジュアルラーニング」シリーズ
ぜんぶ読む → 〈眼科診療ビジュアルラーニング〉1~6巻セット

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序文

序文

今から約30 年前,私は眼科1 年生としてのトレーニングを開始し,散瞳した患者から初めて双眼倒像鏡でくっきりと,しかも立体的に眼底を観察したとき,そのあまりに美しい網膜の反射に感激した.よく見ると,患者の視神経乳頭の血管がヒクヒク拍動しているではないか.さらに後ろから,「生体の血管を生(ナマ)で見ることができるのは,眼科医だけなんだよ」という先輩の声が聞こえて感動し,迷わず網膜グループに入ってしまった.その頃は眼底を見るのがとにかく楽しみで,自腹で双眼倒像鏡を購入し(当時15 万円くらい),外勤のときでも大きなケースに入れてもち運んで診察した.同僚からからかわれたが,毎日の診療がとにかく楽しみで,一つ一ついろいろな網膜の病気を経験するたびに眼底写真を撮ってファイルに保存していたのを覚えている.そう,あの頃は眼底写真とフルオレセイン蛍光眼底造影(FA),そして視野と網膜電図(ERG)くらいが重要で,これらの情報だけで診断していた時代であった.

あれから30 年の時が流れた.テクノロジーの発達により,たくさんの網脈絡膜観察・診断機器が開発され,しかも大学病院だけでなく一般の診療所にも普及した.まず,なんといっても光干渉断層計(OCT)である.網膜断面がスキャンできるだけでなく,網膜各層の厚みマップや血流情報(OCT angiography)も得られ,脈絡膜構造まで非侵襲的に観察できるようになってしまった.眼底写真も,通常のカメラだけでなく,画角200 °を超える広角眼底写真が無散瞳で撮影できるようになった.さらに眼底自発蛍光(FAF)の役割も大きい.網膜変性疾患領域では,FAF が登場したことで,ほぼFA は必要なくなった.ERG も今や皮膚電極型の小型かつ高性能な装置が登場している.これからの網膜診療は,これらの新しい診断機器を組み合わせて使いこなし,患者の負担を減らして診断しフォローしていく時代となったのだ.これらの機器を使い網膜疾患の新たな所見がみつかるたびに,私はいつも感動する.

この『眼科診療ビジュアルラーニング』は,中山書店が長年,眼科領域の書籍に掲載してきた資料をフル活用し,眼科医の先生がたの診療技術のステップアップに役立てていただくことを目的に作成されたシリーズである.本書は3 つの章から成る. “1.基礎編”では,網膜の構造や機能に関する基礎知識のおさらいを,“2.診断編”では,主要な網膜疾患の診断のポイントやコツについて解説する.最後の“3.診療編”では,しばしば遭遇する網膜疾患を専門の先生がたに症例提示していただき,どのように診断したか,またどのように治療・フォローをしたかを詳しく記載していただいた.特に,“3.診療編”は実に読み応えのある内容となっている.どの章から読んでも構わないが,私は,“3.診療編”から読み始め,疑問に感じた場合に“1.基礎編”や“2.診断編”で調べる,という読みかたをお勧めしたい.


2020 年7 月

三重大学大学院医学系研究科臨床医学系講座眼科学/教授 近藤 峰生

目次

1 基礎編

解剖と構造

 硝子体

 網膜,脈絡膜

生理と機能

 血管と血流

 血液網膜関門

 網膜神経線維層

 網膜の電気生理

検査法とその選択

治療法の概要

 網膜光凝固

 硝子体手術

2 診断編

網膜血管病変

 糖尿病網膜症

 網膜静脈閉塞症

 網膜動脈閉塞症

 高血圧網膜症

 網膜細動脈瘤

網膜剥離

 裂孔原性網膜剥離

 増殖硝子体網膜症

変性疾患

 網膜色素変性

 若年網膜分離症

 錐体(杆体)ジストロフィ

 小口病

 白点状眼底

 先天停在性夜盲

発達障害

 家族性滲出性硝子体網膜症(FEVR)

 Coats病

 未熟児網膜症

炎症性疾患

 AZOOR complexと眼底白点症候群

腫瘍性疾患

 癌関連網膜症,悪性黒色腫関連網膜症

 網膜血管腫,脈絡膜血管腫

 網膜芽細胞腫

 眼内悪性リンパ腫

転移性脈絡膜腫瘍

3 診療編

血管性病変/単純糖尿病網膜症 (兼子裕規)

 光干渉断層血管撮影で正常な網膜血管灌流を確認した単純糖尿病網膜症の症例

血管性病変/増殖前糖尿病網膜症 (福田洋輔,中尾新太郎)

 OCT angiographyにて,短期間で灌流密度の低下がみられた増殖前糖尿病網膜症の症例

血管性病変/増殖糖尿病網膜症 (後沢 誠)

 血管新生緑内障に至った増殖糖尿病網膜症の1例

血管性病変/糖尿病黄斑浮腫 (杉本昌彦)

 薬物治療が奏効した糖尿病黄斑浮腫の症例

血管性病変/網膜中心静脈閉塞症 (冨田 遼)

 血管新生緑内障を生じた網膜中心静脈閉塞症の症例

血管性病変/網膜静脈分枝閉塞症 (平野佳男)

 網膜静脈分枝閉塞症の慢性例で,網膜光凝固術が有効だった症例

血管性病変/網膜中心静脈閉塞症 (原 千佳子)

 高血圧眼底に発症した虚血型半側網膜中心静脈閉塞症

血管性病変/網膜動脈分枝閉塞症 (加藤亜紀)

 早期に診断された網膜動脈分枝閉塞症の症例

血管性病変/Coats病 (横井 匡)

 重症度が異なるCoats病の3例

血管性病変/Eales病 (笠井彩香)

 網膜光凝固術で鎮静化した両眼のEales病

血管性病変/網膜細動脈瘤 (坪井孝太郎)

 網膜細動脈瘤破裂の症例

血管性病変/高血圧網膜症,腎性網膜症 (村岡勇貴)

 悪性腎硬化症の患者にみられた高血圧網膜症の症例

血管性病変/眼虚血症候群 (岡本紀夫,張野正誉)

 糖尿病網膜症経過観察中に片眼の乳頭新生血管を認めた症例

血管性病変/放射線網膜症 (竹内真希,一尾享史)

 陽子線治療により発症した放射線網膜症の症例

血管性病変/未熟児網膜症 (野々部典枝)

 ラニビズマブ硝子体内注射後に網膜光凝固を併用した未熟児網膜症の症例

血管性病変/膠原病による網膜症 (三浦 玄)

 広範な網膜虚血を呈したSLE網膜症の症例

血管性病変/白血病網膜症,貧血網膜症 (東 惠子,小畑 亮)

 白内障術後に白血病再燃を認めた症例とAIDS に伴う貧血網膜症を認めた症例

遺伝性網脈絡膜疾患/網膜色素変性 (池田康博)

 特徴的な色素沈着のない網膜色素変性の症例

遺伝性網脈絡膜疾患/Leber先天黒内障 (國吉一樹)

 生後まもなく眼振を認めた女児の症例

遺伝性網脈絡膜疾患/錐体(杆体)ジストロフィ (藤波 芳,藤波 優,鈴木泰賢)

 ABCA4 関連網膜症と診断された錐体杆体ジストロフィの症例

遺伝性網脈絡膜疾患/クリスタリン網膜症 (池田華子)

 特徴的な結晶様網膜沈着物を認めるクリスタリン網膜症症例

伝性網脈絡膜疾患/白点状眼底 (小南太郎)

 白点状眼底の典型例

伝性網脈絡膜疾患/小口病 (西口康二)

 幼少期からの夜盲を主訴とする小口病の症例

遺伝性網脈絡膜疾患/先天停在性夜盲 (近藤峰生)

 弱視として経過観察されていた先天停在性夜盲不全型の症例

遺伝性網脈絡膜疾患/先天網膜分離症 (林 孝彰)

  就学時健診で視力障害を契機に診断された症例と黄斑ジストロフィの精査過程で診断された症例

遺伝性網脈絡膜疾患/家族性滲出性硝子体網膜症 (近藤寛之)

 乳児の鎌状網膜ひだの症例

網膜剥離,脈絡膜剥離/裂孔原性網膜剥離 (馬場隆之)

 術後黄斑パッカを生じた裂孔原性網膜剥離の症例

網膜剥離,脈絡膜剥離/増殖硝子体網膜症 (白木彰彦,坂口裕和)

 白内障手術の既往のある,比較的若年者の増殖硝子体網膜症例

網膜剥離,脈絡膜剥離/脈絡膜剥離 (一尾享史)

 脈絡膜?離を伴った増殖硝子体網膜症の症例

炎症,自己免疫性,腫瘍/悪性腫瘍随伴網膜症 (上野真治)

  癌関連網膜症(cancer-associated retinopathy;CAR)とメラノーマ関連網膜症(melanoma-associated retinopathy;MAR)の症例

炎症,自己免疫性,腫瘍/多発消失性白点症候群 (松井良諭)

 ステロイド内服が奏効した多発消失性白点症候群の症例

炎症,自己免疫性,腫瘍/急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR) (齋藤 航)

 視力低下が自然に回復した急性帯状潜在性網膜外層症の症例

炎症,自己免疫性,腫瘍/点状脈絡膜内層症(PIC) (廣岡季里子,橋本勇希,石田 晋)

 治療にステロイドを使用した点状脈絡膜内層症の症例

炎症,自己免疫性,腫瘍/地図状脈絡膜炎(SC) (橋本勇希,齋藤 航)

  ステロイド全身投与後に脈絡膜血流速度が増加したserpiginous choroiditis(地図状脈絡膜炎)の症例

炎症,自己免疫性,腫瘍/急性後部多発性斑状色素上皮症(APMPPE) (髙橋寛二)

 ステロイドの後部Tenon嚢下注射で軽快した急性後部多発性斑状色素上皮症の症例

炎症,自己免疫性,腫瘍/網膜芽細胞腫 (鈴木茂伸)

 後極の多発腫瘍が発見された両側性網膜芽細胞腫の症例

炎症,自己免疫性,腫瘍/網膜血管腫 (古田 実)

 網膜光凝固術を行った網膜血管芽腫(網膜毛細血管腫)

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書籍情報

  • ISBN:9784521745145
  • ページ数:360頁
  • 書籍発行日:2020年8月
  • 電子版発売日:2021年1月22日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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