地域包括ケアにおけるPT・OTの役割~個別地域ケア会議・介護予防事業から学ぶ

  • ページ数 : 216頁
  • 書籍発行日 : 2016年6月
  • 電子版発売日 : 2021年3月17日
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商品情報

内容

PT・OTが「触らない」で地域全体に貢献するための知識や技術を押さえた1冊!

「地域ケア会議」「個別地域ケア会議」「介護予防事業」に参加するPT・OTのための基礎知識と役割等について事例を使い解説している.PTやOTが地域包括ケアシステムの構築,そしてその推進に資する職種となり,有用な関わりができ,個を見るだけではなく,地域全体を見て,多くの場で「触らない」で貢献できるよう押さえておきたい内容をまとめている.これから「多職種連携」をしながら「地域」に関わるPT・OTに必ず役立つ1冊.

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序文

はじめに

「理学療法士や作業療法士が,地域包括ケアシステムの構築,そしてその推進に役立てる職種となれるように,教科書的な本を作りたいね.」

地域包括ケア研究会による報告書(平成20年度末)が出された当時,筆者も所属していた行政機関に勤務する理学療法士や作業療法士で取り組んでいた研究事業のメンバーで話し合っていたことを記憶している.

当時,「地域包括ケア」という言葉は理学療法士や作業療法士の間で全く知られていなかったが,地方行政に携わっていた私たちは「コレだ!」と直感していた.私たちは,これからの我が国の人口推計などから考えれば,地域包括ケアに関わる議論は至極当然であり,理学療法士や作業療法士もそこに有用な関わりが出来なければ,リハビリテーションの専門職として生き残れないであろうという認識を持っていた.

それから7年以上が経ち,地域包括ケアに関する議論は日常茶飯事となった.しかし,現職の理学療法士や作業療法士が集まる講習会で話をすると,地域包括ケアの植木鉢の概念図を知っている人は受講者の1割程度に留まっているのが現実である.果たしてこれで今後の地域包括ケア時代に生き残れるのであろうか.

理学療法士や作業療法士がその職能を活用し,地域全体をリハビリテーションの視点から考え貢献するためには,誤解を恐れずに言うとしたら「触らない」で勝負できる知識や技術が必要であろう.あなたの周囲に,公衆衛生に携わる医師や保健師のように地域全体を考えるリハビリテーション専門職はいるだろうか.地域リハビリテーションの議論が在宅リハビリテーション(特に,訪問や通所)の議論にすり替わってしまっていないだろうか.

本書の筆者の多くは,理学療法士や作業療法士の資格を有して行政職として活躍されている方々である.すなわち,個を見るだけではなく,地域全体を見ることを求められ,その現場から得たことを事業化,施策化,そして政策化につなげることを求められている方々である.そして,多くの場で「触らない」で勝負している方々である.そのような方々にお願いをして,地域包括ケアに資する理学療法士や作業療法士として最低限抑えておきたい内容をまとめた.これから「地域」に関与しようと考えている現職者,そして地域包括ケア時代に資する卒前教育に携わる先生方に役立つ書になっていると自負している.

最後に,ご執筆にご協力いただいた筆者の方々,そして私たちに叱咤激励を飛ばし膨大な編集業務に携わっていただいた奈須野様をはじめ文光堂の皆様に,この場を借りて厚く御礼申し上げる.


2016年5月

田中康之・清水順市

目次

PART 1 地域包括ケアシステムにおけるリハビリテーション専門職の役割と実際

第1章 地域包括ケアシステムとは

1 今,なぜ,地域包括ケアシステムなのか?

1 「地域包括ケアシステム」は,なぜ必要なのか?

2 地域包括ケアシステムとはどのようなものなのだろうか?

3 地域包括ケアシステムにおける医療の役割

4 地域包括ケアシステムにおける介護の役割

5 今,なぜ,地域包括ケアシステムなのか?

2 地域包括支援センターの役割

1 包括的支援事業

2 その他の事業

3 地域ケア会議とは?

1 地域ケア会議とは?

2 地域ケア会議におけるリハ専門職への期待

3 個別地域ケア会議に参加するための課題

4 個別地域ケア会議の流れ

5 個別地域ケア会議出席に際しリハ専門職に必要な視点

4 介護予防とは?

1 介護予防とは?

2 日本の介護予防施策の変遷

3 地域づくりによる介護予防の推進

コラム めざせ元気!!こけないからだ講座(介護予防事業)と関わって

5 リハビリテーション専門職の役割・機能 ①理学療法士

 〜地域ケア会議・介護予防における理学療法士の役割〜

1 地域ケア会議における理学療法士の役割

2 介護予防事業において理学療法士に求められること

6 リハビリテーション専門職の役割・機能 ②作業療法士

 〜地域包括ケアシステムにおける作業療法士の役割〜

1 地域包括ケアシステムにおける現状と作業療法士への期待

2 医療と介護の連携における作業療法士の役割

3 地域ケア会議と介護予防における作業療法士の役割

コラム 地域包括ケアに資する人材育成

第2章 実践事例(個別地域ケア会議における事例)

1 暴言や暴力で他者との関係性が築けないで,引きこもりがちな生活をしている

 独居のうつ病高齢者の事例

2 運動器疾患を背景に生活機能が低下している高齢者の事例

 ~膝の痛みにより温泉への参加ができずリハビリテーションと入浴を目的に

 デイケアを利用している一人暮らしの女性高齢者〜

3 中山間地域における独居認知症高齢者の生活支援

 〜過疎地ならではの背景が課題となっている高齢者の事例〜

4 住み替えが必要な地域背景が課題となっている高齢者の事例

 〜将来の住み替えに備えて2地域居住を提案した事例〜

5 高次脳機能障害を抱えた独居高齢者の支援事例

 〜地域包括支援センターの作業療法士としての多方面の視点での関わり〜

6 認認介護事例と認知症の独居など,処遇困難な認知症事例

 〜認知症のある要介護認定者2人暮らしの支援事例〜

7 本人が機能回復練習に固執して生活が広がらない脳卒中の事例

 〜障害福祉担当部署に勤務する理学療法士としての関わり〜

8 住環境が原因で生活機能が低下している障害者の事例

 〜障害福祉担当部署に勤務する理学療法士としての関わり〜

9 パーキンソン病でサービスの導入に消極的な事例への支援

 〜医療機関所属の作業療法士としての関わり〜

10 筋萎縮性側索硬化症などの神経筋疾患に関わる事例

 〜医療機関所属の作業療法士としての関わり〜

11 生活保護を受給しながら一人暮らしをしている40歳代片麻痺男性の事例

 〜活動・参加の視点と多職種連携により,いきいきとした生活を支援するには〜

12 知的障害者の長男と同居する下腿切断の60歳代男性の事例

 〜複数の制度の利用調整と自立支援の視点から〜

13 住民主体の介護予防への取り組み1

 住民主体による地域づくり型介護予防事業〜いんざい健康ちょきん運動〜

14 住民主体の介護予防への取り組み2

 〜やちよ元気体操による住民主体型の介護予防〜

15 住民主体の介護予防への取り組み3

 〜住民主導型介護予防事業鬼石モデル〜

16 住民主体の介護予防への取り組み4

 〜シルバーリハビリ体操指導士養成事業〜

コラム 東日本大震災の支援活動から地域活動へ向けて

PART 2 地域包括ケアシステムをより理解するために

第3章 地域とは何か

1 地域の定義〜AreaとCommunity〜

 1 地域で行われていること

 2 地域リハビリテーション

 3 今後の取り組み

2 地域づくりの意味

 1 「地域」と「地域づくり」

 2 なぜ,「地域づくり」がクローズアップされるのか

 3 「医療」,「介護」分野からみた地域づくり

 4 住民からみた地域づくり

 5 地域包括ケアシステムにおける「地域づくり」

3 地域の力~地域資源について~

 1 町内会

 2 民生委員・児童委員

 3 社会福祉協議会

 4 地域資源(NPO法人,ボランティア)

 5 地域における市区町村の役割

コラム 千葉県柏市の在宅リハビリテーション連絡会の試み

4 既存の地域保健・福祉活動〜高齢者福祉の歴史〜

 1 介護の歴史 −昔から介護は家族が担っていた?−

 2 日本の高齢者福祉の始まり −老人福祉法の制定−

 3 老人保健法の制定

 4 ゴールドプラン・新ゴールドプランの策定

 5 介護保険制度の導入

コラム リハビリテーション専門職に期待したいこと

コラム リハビリテーション専門職に期待したいこと

第4章 ヘルスプロモーションとICF を理解する

1 トータルヘルスプロモーションの考え方

 1 ヘルスプロモーション

 2 身体的健康(フィジカルヘルス)

 3 精神的健康(メンタルヘルス)

 4 トータルヘルスケア

2 ICFと生活行為向上リハビリテーション

 1 国際生活機能分類(ICF)の考え方

 2 ICFによる地域保健活動(ヘルスサービス)とリハビリテーションの協働

 3 地域ケア会議や家庭訪問でのICFの活用

 4 ICFと生活行為向上リハビリテーション

第5章 多職種連携

1 連携とは?

 1 連携とは何か?

 2 規範的統合

 3 顔の見える関係

 4 医療と介護の連携

 5 よりよい連携のために

2 専門職連携〜対象者の立場から捉える〜

 1 地域で生活していくということ

 2 対象者支援について考える

 3 多職種連携

 4 多職種連携からの広がり

 5 連携なしのデメリット

 6 会議などでの対象者支援

コラム 行政に所属するリハビリテーション専門職と保健師との関係

3 連携の評価〜医療・福祉施設から捉える〜

 1 連携が必要とされる背景

 2 多職種・多施設(機能)間連携の評価

 3 鍵となるこれからの制度改革と連携

4 産官学連携が生み出す「介護予防」の取り組みと可能性

 1 製造業の衰退と地方都市の沈滞化

 2 地域活性化へ向けた産官連携から産官学連携への取り組み

 3 健康づくりに関する産官学連携の取り組み

 4 金沢大学健康増進科学センターの取り組み

第6章 理学療法士・作業療法士の役割・機能

1 役割・機能の類型

 1 問題提起

 2 触らない理学療法士・作業療法士

 3 地域ケア会議で求められていること

 4 理学療法士・作業療法士の活動概念図

2 理学療法士の活動の実際

 1 自治体名

 2 自治体の概要

 3 従事している業務

 4 概念図を使った業務整理

3 作業療法士の活動の実際

 1 自治体名

 2 自治体の概要

 3 従事している業務

 4 概念図を使った業務整理

コラム 生活行為向上マネジメント(Management Tool for Daily Life Performance:MTDLP)

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書籍情報

  • ISBN:9784830645440
  • ページ数:216頁
  • 書籍発行日:2016年6月
  • 電子版発売日:2021年3月17日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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