診断エラー学のすすめ

  • ページ数 : 338頁
  • 書籍発行日 : 2021年4月
  • 電子版発売日 : 2021年4月21日
5,500
(税込)
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商品情報

内容

診断エラーに なぜ、遭遇してしまったのか!どうすれば、避けられたのか!
エラー分析にとどまらず、診断思考におけるバイアスの回避方法(de-biasing)や確度の高い診断の思考モデル(Diagnostic Strategy)を、実践例を通して多数提示!


診断エラーと言えば、真正面から向き合うことを避けたくなるテーマだ。しかし、なぜ診断エラーに遭遇してしまったか、どうすればエラーを避けることができたのか ----を考え続けることなくして、臨床医の診断が完結することはない。本書は、真の診断力を身につけるために必要不可欠な「診断エラー学の極意」を、臨床医が実践例を通して書き下ろしたもの。
そもそも診断エラーとは何なのかを問い直しながら、その実像を鮮明に。診断エラーからの学びを通して、その奥にある診断思考におけるバイアスの回避方法やエラー発生を包含した確度の高い診断戦略にたどり着くための道標を解説。さらに、多職種や患者・患者家族との連携、医療情報技術の活用、組織的な教育の実践、職場環境のリデザインなどに言及し、セーフティネットを幾重にも重ねていくマネジメントの重要性を説く。症例として、臨床現場で得られた教訓的な事例(現代版「苦いカルテ」)に基づく診断エラーを抽出・分析し、明日からの診療に役立つノウハウをテイクホームメッセージとしてまとめた。
日本でもようやく、日本病院総合診療医学会、日本内科学会などでワーキンググループが立ち上がり、診断エラー防止の機運が高まってきている。本書が診断エラー学を切り拓くきっかけとなり、診断推論の質向上、患者安全・質改善領域の向上に寄与することを目指している。

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序文

はじめに

原田 拓 (昭和大学江東豊洲病院 救急総合診療科)
宮上 泰樹 (順天堂大学医学部 総合診療科学講座)


米国では2005年にPat Croskerry氏が、Canadian Patient Safety Conference Series内で診断エラーのカンファレンスを開催したことを皮切りに、2008年にはDiagnostic Error in Medicine Conferenceが初めて開催されました。これが現在の米国診断エラー学会(Diagnostic Error in Medicine International Conference)の第1回大会となりました。その後も米国では、診断エラー学会が定期開催され、現在も参加者は増えています。近年は、日本からの参加者も増加傾向で、2019年は20人を超える日本人が参加しました。

翻って日本国内では、日本内科学会では矢吹拓先生、山本祐先生を中心に診断プロセス向上ワーキンググループが誕生し、2017年に1回目のワークショップが開催されました。2018年9月には、学会ベースとしてのワーキンググループが、日本病院総合診療医学会内で誕生しました。本ワーキンググループは、日本病院総合診療医学会の初代若手代表である高橋宏瑞先生が、若手が積極的に取り組むべき課題として診断エラー学を掲げたことに端を発します。群星沖縄臨床研修センター長を務める徳田安春先生をはじめ、本書籍の監修を務めてくださった志水太郎先生、和足孝之先生、綿貫聡先生が、日本に診断エラーという概念を広め、エラーを少しでも減らすことを目的として活動されてきたことを踏襲し、日本国内に診断エラーへの理解を深めることを目的に発足しました。

従来、日本で診断エラーを取り扱うことには非常にセンシティブで、ともすれば診断エラーという言葉自体に嫌悪感を持つ先生も多数いらっしゃるかと思います。その中で、本ワーキンググループメンバーには、明るくポジティブで活動力のある先生方がたくさん集まりました。その推進力を生かして、診断エラーをポジティブに振り返り、我々が潜在的に持っている診断エラーへのアレルギー反応ともいうべき陰性感情を除去すべく活動を展開して参りました。実際に我々は、学会に基盤を置いた組織であることを強みとして、学会内での定期的なワークショップや勉強会を行うとともに、臨床研究や論文発表などの学術的活動にも積極的に取り組み、診断エラー学の普及のため尽力して参りました。

我々2人は発足時より約2年余の間、共同代表者として本ワーキンググループの活動を牽引し、その記録の1つとしてここに本書を出版するに至りました。日本で最初の診断エラー学のテキストブックとして、読者の診断エラーへの理解が深まり、日常診療のさらなる向上を目指して作成しました。本書が皆様の診療に良い影響を及ぼすことができる ことを心より願っております。

最後に、監修の先生方の温かいご指導とワーキンググループのメンバーの熱意にこの場をお借りして改めて敬意を表します。同時に、日経メディカル編集部の三和護様には度重なる校正と編集作業に心より御礼申し上げます。

目次

はじめに

第二版への夢

監修者からの言葉

監修者からの言葉

監修者からの言葉

編集部から

執筆者一覧

第1章 診断プロセスの神髄を知る

 ■ 診断へのアプローチ

診断推論と診断エラーの進歩

効果的な病歴聴取とコミュニケーション

直観と分析を使い分ける ~Dual process Theory~

 ■ 鑑別診断の戦略

疾患想起のストラテジー ~Semantic Qualifier~

病態生理に基づいた疾患想起 ~VINDICATE+P~

解剖学的アプローチ

引き算診療とは ~Zebra DiseaseとCommon Disease~

クローズドクエスチョンで切り分ける ~Divide and Conquer~

類縁疾患との距離を診る ~Pivot and Cluster Strategy~

コラム/水平的追跡と鉛直的追跡

不確実性との向き合い方

 ■ 状況因子との関わり

診断推論に影響を与える因子

患者の受療行動から探る ~Behavior-based medical diagnosis~

患者に自分の問題を語るように促すプロセス~Inductive foraging and Triggered routine~

陰性感情を乗り越えるには ~Difficult Patient Encounter~

器質疾患と心因性疾患

第2章 そもそも診断エラーとは何なのか

診断エラー総論

診断エラー分析

過剰診断と過剰検査 ~Overdiagnosis/Overtesting~

第3章 チーム医療×診断エラー

患者協働 ~Patient Engagement~

多職種連携、チームワークが診断エラーを減らす!

診断プロセスとチームワーク

個人のパフォーマンスを引き上げる

第4章 情報技術×診断エラー

Health IT×診断エラー

臨床意思決定支援×診断エラー

第5章 組織×診断エラー

診断エラーにおける組織の役割

組織にとっての診断エラー4カ条

第6章 教育×診断エラー

診断エラーの効果的な教育・フィードバック

診断エラーに対する教育・介入

診断エラーを共有するカンファレンス ~M&Mカンファレンス~

第7章 どこかで起きていてもおかしくないエラー症例

寿司を食べた翌日の心窩部痛、正しい診断は?

夕食後に右上腹部痛を生じ受診した30代女性

学年が少し上の医師が患者として救急外来に

胃腸炎って専門医の先生たちがおっしゃるから

CTで捕まらない高血圧+縮瞳を呈する意識障害

急速上向性の感覚障害、それってギラン・バレー症候群?

急性腹症疑いのコンサルトが胃腸炎の判断に!?

COVID-19の影が招く診断エラーとは

癒着性小腸閉塞を繰り返している、今回もどうせ

過信は禁物、勝ったと思ったときには負けている

認知症の方の誤嚥性肺炎の入院お願いします

炎症反応陰性のリウマチ性多発筋痛症とみたが

Ballon d’Or ~女性には分からない痛み~

手術して退院するだけだったはずなのに

コロナがとにかく心配な患者が発熱外来に

混み合った救急外来に「めまい」の患者が

6回受診してやっと化膿性脊椎炎の可能性が想起

まれな診断困難事例を遅延なく診断するには

たかが便秘、されど便秘、でも実際は

SAHを疑わなければならない状況とは?

患者は糸が切れたように崩れ落ちたのです


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書籍情報

  • ISBN:9784296109319
  • ページ数:338頁
  • 書籍発行日:2021年4月
  • 電子版発売日:2021年4月21日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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