まえがき
前著『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』はお蔭様で多くの方々に手に取っていただくことができました。「私自身が初学者だった頃によくわからなかったこと」をきちんと解説する、そんな本を作りたいという思いで完成させた一冊で、今読み返してもよくできています(自画自賛)。各地で講演や勉強会をさせていただくと、本当にたくさんの医学生・研修医の皆さん、看護師さんはじめコメディカルスタッフの皆さんにお読みいただいているのがわかります。
そこで最近ちょいちょい尋ねられるのが、「この本を読んで基礎はわかったんですが、今後どうやって胸部画像の勉強をして行ったらいいのでしょうか?」ということです。その答えは、昔から私の中では変わっておりません。「とにかくたくさん画像を読みましょう」ということに尽きるのです。
しかしながら、ただ画像をぼーっと眺めていても読めるようにはなりません。まず自分で読影してみて、正しい(スタンダードな)読影と自分の読影を付き合わせてみる。そしてどこが間違っていたのか、どう見たらいいのかをセットアップしなおす、という作業が必要になってきます。
学生さんや若い研修医の先生にお勧めしているのは、胸部CTを撮った時に、必ず単純X線も撮影し、両者を見比べて「単純X線写真のこの所見がCTだとどれにあたるのか」をフィードバックしていく、という方法です。答えを見ながら練習問題を解くようなものです。
とはいえ、誰もがすぐにCTを撮ることができるとは限りません。そんなお話の中で「もっといろいろな画像を見て勉強したいのですが、良い本はありませんか」というご質問をいただくことが多くなってきました。できるだけ多くの画像を見て、練習問題を解きながら、画像の見方・考え方をしっかりと身につけていく。こういうことが繰り返し行えるような書籍はないものか…あまり思い当たりません。じゃあ作ってみたらどうだろうか。ということで『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』の続編としてのこの企画が始まりました。
症例数はどのくらいが適当でしょうか。50? 70? 80? いっそ100例か!?となったのですが、こうして100例を並べてみますと、なんとなく見たことがあるような所見が繰り返し出てきたりして、胸部画像の全体像をつかむのに適した数であるなあと思いました。実際の臨床でも、多くの症例を見ていくうちに同じような画像に何度か行き当たります。「あっ、これ見たことある!」という経験が、記憶と認識を強化し、読影力がアップしていくのです。
前著を理論編とすれば本書は実践編にあたりますが、序章「胸部X線写真を読むための準備」に読影のコツをぎゅっと濃縮して収録しましたので、前著をお読みでない方でも知識の整理になるかと思います。また、前著には収録していなかった、幻の「リンパ節体操」を新たに収録しました。こちらもぜひお役立ていただければと思います。
100例もあるので、一気にやる必要はありません。少しずつでよいので継続してトレーニングしていただくことで、着実に読影力がついてくることが実感されると思います。コツコツ頑張りましょう。
日本医事新報社の皆様には『やさしイイ~』シリーズの刊行当初から本当にお世話になり、ありがとうございます。また2020年6月に島根大学に異動しましたが、それまでの勤務先である滋賀医科大学の先生方、そして現在お世話になっている島根大学の先生方にも大変よくしていただいております。感謝申し上げます。そして島根への単身赴任を受け入れ、送り出してくれた妻と子供たちに、本当に感謝しています。
長尾大志