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- 超アトラス眼瞼手術―眼科・形成外科の考えるポイント―
商品情報
内容
眼瞼手術の基本・準備から、部位別・疾患別の術式までを盛り込んだ充実の内容。
豊富な術中写真を用いたビジュアルな解説で、実際の手技がイメージしやすく、眼形成の初学者にも熟練者にも、必ず役立つ1冊です。
※本製品はPCでの閲覧も可能です。
製品のご購入後、「購入済ライセンス一覧」より、オンライン環境で閲覧可能なPDF版をご覧いただけます。詳細はこちらでご確認ください。
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序文
序
私が形成外科に入局してから数年経った頃,今は亡き恩師から「どんな医者になりたいか」と質問を受けました.当時の私は皮膚悪性腫瘍に興味を持っておりましたため,「診断から切除範囲や所属リンパ節郭清の要否の決定,腫瘍切除から再建手術,さらに化学療法まですべて一人でできる医者になりたい」と答えました.しかし,恩師からの返事は「そのようなことは考えず,経験ある皮膚科医から要求されたとおりに腫瘍を切除したうえで,皮膚科医の予想をはるかに凌ぐ最高の再建をしなさい」というものでした.形成外科は新しい診療科ですので,各科の中心的分野ではない境界領域を対象としてきた歴史があります.そのため,他科と共同して診療する機会も必然的に多くなり,多少なりとも他科の知識が必要となります.私は18年ほど前に,大学の先輩が開業した眼科医院で眼瞼手術を独学で始めましたが,通常の教育を受けた形成外科医ではスリットランプは扱えず,術前診断および術後評価は正確にできません.そこで,眼科医からの要求どおりに手術することのみが,そのクリニックでの私の仕事でした.
皮膚悪性腫瘍手術の場合では,皮膚病理医から顕微鏡をのぞいた結果をレポートとしていただきますが,形成外科医にとっての最優先事項は切除断端が陽性か陰性かに集約されます.よって,安全域をもって腫瘍が切除されていることさえわかれば,レポートの詳細を理解しなくとも,機能および整容の評価を肉眼的にすることができます.一方で,眼瞼手術の場合では,肉眼的に整容を評価することは可能ですが,機能の評価にはスリットランプをのぞいた結果が必要となります.よって,眼科医に依頼することになりますが,いただくレポートが形成外科医にとって専門性が高すぎることもしばしばあります.しかし,それらすべてが自分の手術手技に直結する内容であることを知れば,自ずと興味は細部にまで及ぶはずです.このような環境に長年いました私に,20年前もそうであったように,自分一人ですべてを完結したいという気持ちが芽生えることは自然の成り行きと思われます.
今回,眼瞼手術に特化した書籍の企画をいただきました時,形成外科医には眼科的知識と感覚を,眼科医には形成外科的知識と感覚を少しでも知り感じたうえで,まずは,両科のコラボレーションの必要性を理解してもらい,次いで,一人ですべてができることを大目標に据えながらも,一方で,これから眼瞼手術を始めようとする先生方が第一歩を踏み出しやすくすることも意識した欲張りな内容にしたいと考えました.よって,両科に関わる基本的事項は総論にまとめ,各論は文字を少なくビジュアルにすることとし,執筆は実際にその手術を現在行っている先生方に生の声として書いていただくよう依頼しました.Quality of visionが必要条件で,quality of lookは十分条件ですが,どちらが欠けてもquality of lifeを満足させることはできません.
以前に同出版社の依頼で企画しました雑誌PEPARS No. 51「眼瞼の退行性疾患に対する眼形成外科手術」の巻頭言では「両科のコラボレーションを期待しております」と結びましたが,今回は「一人ですべてができる眼形成外科医になりたいと思う医師が本邦に増え,眼形成外科が独立した診療科になることを期待しております」と結ばせていただきます.
2014年8月
村上正洋
日本における眼形成手術は,残念ながら現在までに眼科の主要な領域とはなってはいない.これは近年の眼内における診断機器や手術機器の急速な発達があり,必然的に眼科で話題になってきた分野が主に眼内の疾患であったことが理由の一つであるように思われる.また眼形成領域では,眼内手術と手術手技が大きく異なることと,眼形成手術に精通した先人が少なかったこともあり眼科医にとって習得が難しいものであると認識され,眼形成領域を担う眼科医が育たず,結果として眼形成手術を行う医師が少ない状態が続いているためでもあろう.このような事情もあり,日本では眼形成手術を形成外科医が担っている地域も多く存在している.
形成外科は全身の手術を行うため広範な知識と,どの部位でも手術を行うための形成外科的手技に精通し,その技術や経験は到底他科の及ぶものではないと考える.一方で眼科医は日常診療の中心業務が顕微鏡などの眼科的機器を使用して眼表面や眼内の診察を行うことであり,これらの知識や経験は他科には真似ができないものであろう.このため眼科医と形成外科医が眼形成領域について交流を深めることは喫緊の課題であり,かつ眼科医と形成外科医の得手不得手が異なっており,双方にとって学ぶべきものが非常に多いと感じられる.
最近数年で眼形成を担う眼科医が増え,少しずつではあるが眼科での衆目を集めるようになった.また一方で,これにより形成外科領域でも少しずつ衆目を集めるようになってきており,眼形成領域をさらに発展させる土壌が整ってきているのではないかと感じている.本書は眼科医と形成外科医の得手領域・不得手領域を相補的に理解できるように,多くの著名な術者に執筆頂いている.眼瞼というごく狭い領域を扱ったものではあるが,それぞれの疾患に多面的な考えが存在することを念頭に編集した.
数々のトップサージャンの疾患に対する考えや手術手技が,諸兄の眼瞼の診断技術や手術手技の向上に貢献できたら,誠に幸いに思う.
2014年8月
鹿嶋友敬
目次
Ⅰ 手術前の[基本][準備]編―すべては患者満足のために―
A まずは知っておくべき「眼」の基本―眼科医の視点から― 鹿嶋 友敬
B おさえておきたい眼瞼手術の基本・準備のポイント―形成外科医の視点から― 村上 正洋
C 高齢者の眼瞼手術における整容的ポイント―患者満足度を上げるために― 野平久仁彦 新冨 芳尚
D 眼瞼手術に必要な解剖 柿﨑 裕彦
E 眼瞼形成外科手術に必要な神経生理 伴 緑也
Ⅱ 眼瞼手術の[実践]編
A 上眼瞼の睫毛内反
上眼瞼の睫毛内反とは 鹿嶋 友敬
埋没縫合法 村上 正洋
切開法(Hotz変法) 今川 幸宏
B 下眼瞼の睫毛内反
下眼瞼の睫毛内反とは 鹿嶋 友敬
若年者における埋没法 林 憲吾
若年者におけるHotz変法 田邉 美香
退行性睫毛内反に対するHotz変法(anterior lamellar repositioning) 末岡健太郎
Lid margin split法 今川 幸宏
牽引筋腱膜の切離を加えたHotz変法 小久保健一
内眥形成 鹿嶋 友敬
C 下眼瞼内反
下眼瞼内反とは 鹿嶋 友敬
牽引筋腱膜縫着術(Jones変法) 野崎 真世 野田 実香
眼輪筋短縮術(Wheeler-Hisatomi法) 西本 浩之
Lower eyelid retractors’ advancement(LER advancement) 柿﨑 裕彦
牽引筋腱膜縫着術と眼輪筋短縮術を併用した下眼瞼内反手術 村上 正洋
D 睫毛乱生・睫毛重生
睫毛乱生・睫毛重生とは 鹿嶋 友敬
電気分解法 兼森 良和
毛根除去法 鹿嶋 友敬
Anterior lamellar resection(眼瞼前葉切除) 中内 一揚
E 上眼瞼下垂
上眼瞼下垂とは 村上 正洋
Aponeurosisを利用した眼瞼下垂手術 奥村 仁
Muller tuck法(原法) 西條 正城
CO2レーザーを使用した眼瞼下垂手術(extended Muller tuck宮田法) 宮田 信之
Aponeurosisとミュラー筋(挙筋腱膜群)を利用した眼瞼下垂手術 上笹貫太郎 嘉鳥 信忠
眼窩隔膜を利用した眼瞼下垂手術(松尾法) 伴 碧
若年者に対する人工素材による吊り上げ術 林 憲吾
退行性変化に対する筋膜による吊り上げ術 権太 浩一 平林 慎一
Aponeurosisの前転とミュラー筋タッキングを併用した眼瞼下垂手術 高見 昌司
F 皮膚弛緩
上眼瞼皮膚弛緩とは 村上 正洋
重瞼部皮膚切除(眼科的立場から) 三島 史子 鹿嶋 友敬
重瞼部皮膚切除(形成外科的立場から) 廣冨 浩一 前川 二郎
眉毛下皮膚切除術 村上 正洋
G 眼瞼外反
下眼瞼外反とは 村上 正洋
Lateral tarsal strip 尾山 徳秀
Kuhnt-Szymanowski Smith変法 幸島 究
Lazy T & Transcanthal Canthopexy 柿﨑 裕彦
コラム 眼科医と形成外科医のキャッチボール 村上 正洋
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書籍情報
- ISBN:9784865192056
- ページ数:257頁
- 書籍発行日:2014年10月
- 電子版発売日:2021年7月30日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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