身体的苦痛症群 解離症群 心身症 食行動症または摂食症群<講座 精神疾患の臨床4>

  • ページ数 : 448頁
  • 書籍発行日 : 2021年7月
  • 電子版発売日 : 2021年8月4日
17,600
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内容

本巻でテーマとしている,いわゆる神経症はDSM-Ⅲから解体が始まり,ついにICD-11ではその痕跡も消えて細分化された.それに伴い,疾患概念や診断要件も大きく変わっている.そこで本巻では,それぞれの疾患群の歴史を振り返りながら再度整理し,心身症を加え全体像を浮き彫りにするとともに,最新の治療法などを解説している.

あわせて読む → 「講座 精神疾患の臨床」シリーズ

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序文

古くはヒステリーにまで遡ることができる,いわゆる「神経症」概念は,米国精神医学会による「精神疾患の診断・統計マニュアル第III版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Third Edition: DSM‒III)によって解体が始まり,DSM‒5では生物学的原因論を重視する方向性の中,疫学的エビデンスに基づいて,ますます細分化され,再分類されるに至っている.また,世界保健機構(World Health Organization:WHO)による国際疾病分類(International Classification of Diseases, 10th revision: ICD‒10)では,「神経症性障害」という分類がかろうじて残されていたが,ついにICD‒11では,その痕跡も消えてしまった.神経症としての大枠がなくなったことにより,対象の総括的な把握や検討が困難になってしまった感は拭えない.その是非については賛否両論があるところであろう.神経症概念の消失後に,どのような軸を基に再構築が進んでいくのか,今後に注目したい.

一方,心身症は,生物-心理-社会モデルが適用されて,その病態が理解されてきた,精神医学の中の重要な領域の一つである.にもかかわらず,最近のDSM‒5やICD‒11では,診断の明確な位置付けが与えられていない.このことにより,この領域への精神科医の関心が薄れていくことを危惧するのは筆者だけではないであろう.

本巻では,他の領域にも増して疾患概念や診断基準の変化が著しい身体的苦痛症群または身体的体験症群,解離症群,食行動症または摂食症群(ICD‒11)に心身症も加え,これらの疾患群について再度整理し直し,それぞれの全体像を浮き彫りにすることを目指して,各方面の第一人者に執筆を依頼した.また,それぞれの治療においても,洗練されたさまざまな精神療法・心理社会的アプローチが近年,可能になってきていることから,最新の治療論についても整理することを試みた.

時代とともに疾患概念が大きく変遷してきた本領域では,当然のことながら,各疾患の表現型や病態もその時代の社会文化的背景の影響を色濃く受けている.そのような興味深い話題を各章のトピックスとして取り上げた.さらに,消化器系心身症における「腸内細菌と脳腸相関」のように,全く新しい観点からの病態解明が進展している分野もあり,併せてトピックスとして取り上げた.

本巻は,身体的苦痛症群または身体的体験症群,解離症群,心身症,食行動症または摂食症群の診断・治療にかかわる精神科医あるいは精神医療関係者に,有用かつ最新の臨床精神医学・医療の成果と経験を提供するためのバイブルとなることを目指して編集されている.各関係者にとって診療・研究・教育のいずれにおいても有益なものとなることを願ってやまない.


2021年6月

北海道大学大学院医学研究院精神医学教室
久住一郎

目次

本書で用いるICD-11の日本語病名・用語および診断ガイドラインの和訳について (神庭重信)


はじめに

「神経症」概念の変遷 (久住一郎)

1章 身体的苦痛症群または身体的体験症群

身体的苦痛症群または身体的体験症群 総論 (山田和男)

身体的苦痛症 総論 (山田和男)

 Topics 身体的苦痛症と作為症 (村松太郎)

身体的苦痛症と慢性疼痛 (富永敏行)

 Expert comment ICD-11における慢性疼痛と身体的苦痛症の鑑別 (針間博彦)

 Topics 歯科領域の身体的苦痛症 (宮地英雄)

身体的苦痛症の治療 総論 (名越泰秀,小川奈保)

身体的苦痛症の薬物療法 (名越泰秀)

 Topics 身体的苦痛症の漢方治療 (田 亮介)

身体的苦痛症の認知行動療法 (田口佳代子,中村英輝,清水栄司)

身体完全性違和 (美馬達哉)

2章 解離症群

解離症群 総論 (岡野憲一郎)

解離症に関する諸理論 (野間俊一)

 Topics いわゆる「ヒステリー」概念との関連 (江口重幸)

解離性神経学的症状症 (田中 究)

解離性健忘と解離性遁走-全生活史健忘の臨床 (大矢 大)

解離性同一性 (柴山雅俊)

離人感・現実感喪失症 (大饗広之,立花昌子)

解離症の鑑別診断 (岩井圭司)

 Topics 種々の尺度 (田辺 肇)

解離症の治療論 (野間俊一)

 Topics 自我状態療法 (福井義一)

3章 心身症

心身症 総論 (須藤信行)

 Topics ecological momentary assessment( EMA) (吉内一浩)

消化器系の心身症 (福土 審)

 Topics 腸内細菌と脳腸相関 (須藤信行)

心血管系の心身症 (中尾睦宏)

 Topics たこつぼ心筋障害(たこつぼ心筋症) (髙倉 修)

呼吸器系の心身症 (丸岡秀一郎)

神経・筋肉系の心身症 (金光芳郎)

 Topics イップス/イップス・スペクトラム症 (八木孝彦)

内分泌・代謝系の心身症 (野崎剛弘,小牧 元,須藤信行)

歯科口腔領域の心身症 (豊福 明)

皮膚科領域の心身症 (羽白 誠)

耳鼻咽喉科領域の心身症 (五島史行)

眼科の心身医学 (気賀沢一輝)

4章 食行動症または摂食症群

食行動症または摂食症群の疫学 (安藤哲也)

摂食症の病態生理 (福土 審)

 Topics 物質使用症と摂食症群 (松本俊彦)

神経性やせ症 (賀古勇輝)

神経性過食症 (西園マーハ文)

むちゃ食い症 (岡本百合)

回避・制限性食物摂取症,異食症,反芻・吐き戻し症 (作田亮一)

食行動症または摂食症群と精神・身体合併症 (田中 聡)

 Topics 矯正医療の視点から見た食行動症または摂食症群 (瀧井正人)

食行動症または摂食症群の治療 精神療法 (永田利彦)

食行動症または摂食症群の治療 身体医学的管理と治療(身体治療) (鈴木(堀田)眞理)

食行動症または摂食症群の治療 リハビリテーションとソーシャルサポート (野間俊一)

 Topics 食行動症または摂食症群の当事者活動 (林 利香)

児童・思春期領域における食行動症または摂食症群 (中里道子)

 Topics 低出生体重児の増加とその影響 (鶴見晴子)

 Topics 欧米における「やせすぎモデル規制法」の動き (山田 恒)


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書籍情報

  • ISBN:9784521748245
  • ページ数:448頁
  • 書籍発行日:2021年7月
  • 電子版発売日:2021年8月4日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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