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- スペシャリストが教える 認知症を合併している患者の診かた、関わりかた
商品情報
内容
京都式オレンジプランには「私は、体調を崩した時にはすぐに治療を受けることができ、具合の悪い時を除いて住み慣れた場所で終始切れ目のない医療と介護を受けて、すこやかにすごしている」というビジョンがあります。病気になったら適切な医療を受けたい。本書はこのビジョンを現実にしたいという熱意ある執筆陣によってまとめられました。どんな工夫が必要なのか、さまざまな職種、診療科のキーパーソンが、認知症のひとの身体疾患の診かたをわかりやすく解説しました。入院時から退院支援を始める視点は、職種を問わず知っておきたい。
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序文
超高齢社会を迎えて,どの診療科でも高齢の患者が増加し,治療の低侵襲化にともなって積極的に治療が行われるようになっている.その一方で,認知症を併存している高齢患者も増えており,理解力や判断力の低下に配慮して治療を行うことが重要になってきている.
認知症の存在はさまざまな生活場面に支障をきたす.例えば,金融機関で通帳を何度も紛失して再発行を求めたり,行政からの通知文書が理解できず手続きが行えなかったりする.とりわけ,病気になった時やもともと罹患している慢性疾患の治療を受けることについては,受診の申し込みや予約,服薬,検査のための事前の準備など他の生活場面よりも難しい判断や手続きが求められることから,認知症の人にとってはハードルが高い.民間企業は,顧客の確保や利便性の向上の観点から,認知症になっても利用しやすいサービスを開発したり,職員の教育を行って対応力を向上させたりするよう心がけており,認知症サポーター養成講座の受講も進んでいる.一方で,医療の世界は,認知症の医学的理解には長けているとはいえ,受診や諸手続きに及ぼす影響の理解や,それに応じた工夫については,民間企業と比べてまだ不十分なところがあると感じる.
骨折や肺炎など急性に入院を要する疾患では,認知症の人は急な環境変化や日常の環境からかけ離れた環境への適応に苦労する.痛みや呼吸苦などの苦痛症状は,普段は認知症の程度が軽い人でも認知機能の問題が強く出現したり,不安や焦燥感,不眠などの精神症状を引き起こしたりする.糖尿病や慢性心不全などの慢性の疾患では,これまで自分で行っていたインスリン注射などの治療手技ができなくなったり,食事や運動などの生活習慣が変化してしまったりして悪化につながることがある.また,がんをはじめとする手術など侵襲的な治療を要する疾患では,治療の必要性やその内容に関する説明が十分理解できず,治療を拒否してしまったりすることもある.
このような認知症の人の診療に関する課題を解決するには,多診療科,多職種による連携が欠かせない.そのためには,各診療科の治療に認知症がどのような影響を与えるかについての共通理解が必要である.本書では,認知症を持つ患者への対応に役立つ基礎知識として,身体疾患の治療場面において実施可能な認知症のスクリーニング方法やせん妄予防策,治療の支障となる認知症に伴う症状への対応に加えて,治療方針決定における意思決定支援の方法について解説している.続いて,高齢者に多い病態について各診療科の専門家から認知症のある患者への治療の実践的な工夫について書いていただいた.本書が,認知症を持つ人への診療に携わる医療従事者の一助となり,多くの認知症の人が必要な治療をより効果的に受けることができるようになることを願っている.
2021年7月
成本 迅,谷向 仁
目次
第1章 病棟における認知症対応のポイント
1 病棟での対応のポイント
1 コミュニケーションのポイント
1.コミュニケーションの原則と認知症者の特徴
2.苦痛に関心を寄せながら意識・注意・記憶を評価する
2 環境調整のポイント
1.環境調整とは
2.すぐに実践できる効果的な環境調整による支援
3 認知症者への検査・処置の際の留意ポイント
4 病棟での対応で医療スタッフが避けるべきポイント
5 認知症者の意思の尊重と医療安全とのバランス
2 病棟で困るよくある認知症の症状とその対応のポイント
1 せん妄
1.せん妄の病態
2.臨床での対応
3.せん妄の予防
4.せん妄の治療
2 不眠
1.高齢者の不眠
2.不眠の原因
3.薬物療法の注意点
4.不眠とせん妄の鑑別
3 うつとアパシー
1.高齢者のうつ
2.高齢者のアパシー
3.うつ,アパシー,せん妄の鑑別
3 認知症が疑われる場合の対応
1 認知症の併存に気づくことの重要性
2 認知症の存在が疑われる場合の対応として必要なこと
1.注意深く言動を観察し,客観的に評価する
2.家族からこれまでの生活面での情報を得る
3.簡易な認知機能スクリーニング評価を行う
3 せん妄や行動・心理症状(BPSD)から認知症が疑われる場合の注意点
4 意思決定支援のポイント
1 意思決定とは
2 認知症の人の意思決定支援
1.人的・物的環境の整備
2.意思形成支援
3.意思表明支援
4.意思実現支援
3 意思決定能力に関連する認知機能障害への対応
1.注意
2.ワーキングメモリー
3.抑制
4.セットシフト
5.流暢性
4 医療同意能力評価
5 多職種で考える意思決定支援
第2章 病棟における認知症の身体合併症対応のポイント
1 糖尿病
1 疾患概要ポイント
1.糖尿病と認知機能障害・認知症
2.認知機能障害や認知症発症の危険因子
2 認知症患者特有の注意点
1.糖尿病における認知機能障害のスクリーニングを行う
2.フレイルの評価を行い,その対策を立てる
3.低栄養は認知機能を低下させるので,エネルギー量やタンパク質の摂取不足に注意する
4.坐位時間を短くし,レジスタンス運動を含む多要素の運動を行う
5.家への閉じこもりと孤立,いわゆる社会的フレイルの対策を立てる
6.BPSDを防ぐために多職種のチームでかかわり,介護者の負担を軽減する
7.薬物療法では介護者にも低血糖・シックデイ対策を指導する
8.認知機能などを考慮した血糖コントロール目標を設定する
3 事例:70歳代後半,女性
1.病歴
2.身体所見と検査所見
3.高齢者総合機能評価
4.入院後経過
4 不適切な対応
1.低血糖のリスクが高い厳格すぎる血糖コントロール
2.厳格すぎる食事制限
3.体調不良の際の不適切な対処
2 大腿骨近位部骨折
1 疾患概要ポイント
1.疫学
2.分類
3.治療法と要点
4.予後
2 認知症患者特有の注意点
1.受傷から来院まで
2.入院から手術まで
3.手術後
4.全般を通して
3 事例
1.症例1:80歳代,女性
2.症例2:90歳代,女性
4 不適切な対応
3 慢性腎臓病・透析
1 疾患概要ポイント
1.慢性腎臓病と日本の腎代替療法の疫学
2.日本における認知症透析患者の疫学
3.腎代替療法のメリット・デメリットと保存的腎臓療法
4.透析患者の認知症の原因
2 認知症患者特有の注意点
1.認知症透析患者への対応の注意点
2.CKD・透析患者における薬剤使用の注意点
3 事例:透析中の不穏を訴える80歳代,女性
1.現病歴
2.社会背景
3.入院時現症
4.検査結果
5.経過
4 不適切な対応
4 心不全
1 HF患者における病みの軌跡
2 HF患者における認知機能障害の頻度
3 HF患者における認知機能障害の評価
4 HFの認知機能障害に関する潜在的な要因
5 HF患者における認知機能障害発症のメカニズム
6 認知機能障害はHF患者の予後不良因子
7 認知機能障害を伴うHF患者への治療
1.薬物療法
2.非薬物療法
8 今後に期待されること
5 呼吸器疾患
1 疾患概要ポイント
1.COPD
2.高齢者の肺炎:誤嚥性肺炎
2 認知症患者特有の注意点
1.認知症と肺炎
2.認知症患者の誤嚥性肺炎と食事
3.在宅医との連携
3 事例:80歳代前半,女性
1.本事例における不適切な対応
2.不適切な対応を避けるために
4 地域包括支援センターへ伝えるポイント
5 成年後見人などへ伝えるポイント
6 がん
1 治療概要ポイント
2 認知症患者特有の注意点
1.意思決定能力の評価と支援
2.周術期管理
3 事例:意思決定支援に関する仮想事例
1.80歳代,男性,下咽頭癌
2.それぞれの立場からの意見
3.実際の対応
4 不適切な対応
7 白内障
1 疾患概要ポイント
1.老化としての白内障
2.白内障と認知機能の関係
2 認知症患者の白内障手術
1.意思決定プロセスにおける問題点
2.白内障手術:術中管理のポイント
3.白内障手術:術後管理のポイント
4.麻酔管理
3 事例
1.はじめから全身麻酔を選択した80歳代,男性
2.術中に不穏となった80歳代,男性
4 不適切な対応
第3章 退院に向けた地域資源との連携のポイント
1 退院に向けた地域資源との連携のポイント
1 退院支援の基礎:支援過程を理解しよう
1.入院から暮らしの場への移行を支援する
2.退院支援の3段階のプロセス
3.3段階プロセスのポイント
4.2つの視点で,在宅移行する際の “気になること” を整理していこう
2 地域での支援者との連携によるサポート
1.入院時連携カンファレンス(第1段階から第2段階)
2.退院前カンファレンス(第3段階)
3 事例
1.70歳代,女性.心不全.地域包括支援センターとの連携ができたAさん
2.80歳代,男性.医療連携ができたBさん
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書籍情報
- ISBN:9784880021164
- ページ数:120頁
- 書籍発行日:2021年8月
- 電子版発売日:2021年8月11日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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