脳卒中×臨床OTー「今」、リハ効果を引き出す具体的実践ポイント

  • ページ数 : 311頁
  • 書籍発行日 : 2020年9月
  • 電子版発売日 : 2021年8月18日
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内容

脳卒中に対する具体的実践は、マニュアルにはできません。誰一人として同じ症状とはならないからです。昨今はICF(国際生活機能分類)に則り、「心身構造・活動と参加、そして個人因子・環境的側面」等のバランスの良い関わりが重視されています。一方、心身構造に対するアプローチとして、対象者に直接的な介入をしている場面での具体的な効果が求められています。何をもって効果があったのか、変化がなければ何を変更するのか、効果があれば次へどのように展開するのか等、悩むところです。「今」、自身の目の前で何をするべきか、それをまとめた一冊です。基本動作からADL・Activityアプローチ、応用・困難事例も満載になっております。(著者 山本伸一)

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序文

はじめに

脳卒中リハビリテーションは,機能分化されている医療・介護・福祉分野において,各専門職が関わりを持つようになっているだろう.急性期・回復期・生活期・終末期というStage.全てにおいてリハビリテーション専門職が関わることができる.各時期においてセラピスト数は,若干に偏りもあるだろうが,日本という国は素晴らしい.それを実行できるのだから.そのような環境で私たちリハビリテーション専門職は,時代と共に圧倒的な右肩上がりで増え続けている.しかしながら,本当の意味での未来はあるのか? そう感じ始めたこの頃である.

私たちの対象は,全国民である.介護予防から疾患別リハビリテーション,看取り直前まで.はたして,その臨床教育は実態に追いついているのだろうか.医学と科学とリハビリテーション,そしてエビデンス.これらの整合作業は,はじまったばかり.エビデンスが重要なのは当然のことである.しかし,エビデンスがあることだけが臨床なのか?


臨床は嘘をつかない.なぜなら対象者にその効果がみえるから.


真の臨床家は知っている.「現場の泥臭さ」を.単純な運動療法・ロボット訓練,単純なROM訓練だけではどうにもならないことを実感している.当疾患において言えば,「運動が麻痺している」だけではない.感覚・知覚障害や重度の痙性・低緊張,肩の痛み,失調症,高次脳機能障害・認知症,内部障害との合併,そしてパーソナリティや環境の違い等,一人一人の持ち合わせた背景は異なる.それに対応した私たちでなければならない.また,効果は「何をもって効果なのか?」.昨今,ADL至上主義に感じているのは私だけだろうか.いや,対象者に寄り添ってみれば,それだけではよくないことに誰もが気付いているはず.もちろん,当院でもFIM等のADL評価を行う.FIM利得とFIM効率もかなりの数字と自負している.だが対象者が望んでいることは,それだけでない.「身体を治してほしい」誰が何といっても,絶対的本音である.ICFにも「心身構造」は存在する.身体あっての「ADL」,「活動」であることを忘れてはならない.

私たちは対象者の効果判定において,長期間による効果も診るだろう.短期間でも同様.しかし,重要なのは「その場」である.今,この場での,1回介入での「効果」を,私たちセラピストや対象者が実感しているだろうか.長期間での効果は,もしかしたら自然回復かもしれないし,他職種によるものかもしれない.自分かもしれない.それが分からないのは苦しい.1回での効果がみえることは,新たな活動につなげられ,質を変え,予後を見据えることができるだろう.

今回の書籍のテーマは,『「今」目の前の対象者で臨床推論,効果を引き出す』である.私は,これまで30年以上の臨床経験ではあるが,まだまだ.「自分はへたくそだな」そう思う毎日.「これはよかった.いい反応だ」もある.そう繰り返しての長いようで短い期間でもあった.山梨リハビリテーション病院(当時は,山梨温泉病院)に就職して培った臨床はかけがえのない宝物.この職場で縁のあった現役職員全員とOBたちでまとめたこの一冊である.私たちにとって,皆様にとって,気付きの書籍になれば幸いである.


2020年8月執筆者を代表して

山梨リハビリテーション病院
山本伸一

目次

発刊に寄せて① 中澤良太

発刊に寄せて② 山城亘央

はじめに 山本伸一

STEP 1. 臨床評価と具体的実践のまえに①

臨床推論のための概論①(脳卒中の理解) 山本伸一

STEP 2. 臨床評価と具体的実践のまえに②

臨床推論のための概論②(介入の在り方を再考する) 山本伸一

STEP 3. 実践①運動療法アプローチ1

事例1:背臥位・寝返り 野上雅史

事例2:起き上がり・座位 武本幸子

事例3:リーチ 青木栄一

事例4:立位バランス 安田貴光

事例5:移乗 香川美恵子

STEP 4. 実践②運動療法アプローチ

事例6:体幹の促通 佐尾健太郎

事例7:パーツの促通 肩甲骨 原田直輝,原田成美

事例8:パーツの促通 骨盤 相川浩貴,浅川 愛

事例9:パーツの促通 足関節 土居史和

事例10:パーツの促通 手 濱渦健弘,石野佳奈

STEP 5. 実践③活動介入アプローチ

事例11:更衣 廣田真由美

事例12:トイレ 上野智広

事例13:食事 山本祐紀

事例14:整容 佐野絵理,三谷祐司

事例15:入浴 沢田尚司

STEP 6. 実践④Activityアプローチ

実践!Activity を活かすとは? 片岡聡子

事例16:輪入れ・輪投げ 木村奈保美

事例17:コーン 佐藤靖伸

事例18:お手玉 濱田一登志

事例19:新聞紙 栢沼卓也,島袋圭太

事例20:おはじき 森谷禎寛,森谷瑞穂

事例21:書字 三浦 渚,上原清太

STEP 7. 応用・困難事例

事例22:高次脳機能障害 半側空間無視 森下和美,三瀬和彦,森田拓弥

事例23:高次脳機能障害 前頭葉症状 工藤 亮

事例24:高次脳機能障害 失語症 土岐泰子

事例25:高次脳機能障害 認知症 門脇達也

事例26:ポジショニング 背臥位 飯島有里

事例27:ポジショニング 車いす 浅尾章彦,森下和美,野上雅史,浅尾千紘

事例28:肩の痛み インピンジメント 児玉浩志

事例29:肩の痛み ストレッチペイン 児玉浩志

Column

①新人としての心構え 和知れいな

②患者とのコミュニケーション 菅野信継

③業務の把握が難しい非常勤の悩み解消!! 林 佳奈子

④他部署連携の中の工夫 佐藤 綾

⑤子育てをしながらの工夫 栗田裕子

⑥職員教育の工夫 鈴木千恵美

⑦作業療法士であるお母さんの工夫 大浦祐子

おわりに 山本伸一

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書籍情報

  • ISBN:9784908083563
  • ページ数:311頁
  • 書籍発行日:2020年9月
  • 電子版発売日:2021年8月18日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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