序文
この度,本書「日本の作業療法発達史―萌芽期の軌跡を尋ねて―」をお届け出来ます段に至り,ご尽力いただきました関係者の皆々様,及びご活用下さいます皆々様と共に,この“知る喜び” を共有いただけますれば,何より嬉しく,望外の喜びと致すところでございます.
本書は,時代に先駆けて,私たちの道である“作業療法” に先達としての役割を陰日向に,種をまき,育み導き下さった多くの先生方の思いやその最初期の戦闘の日々をも辿るものです.ご縁あって,リハビリテーションでは更地同様の日本に早々と作業療法を手探りで始められた先輩,同胞の皆様方にご登場いただき,最後に未来を担う若き勇士の諸氏にもご登場いただきました.
実は本書誕生の発端は,日本に作業療法発足の折から今日に至りますまで,出版一筋に“作業療法の成長” に関心をお寄せ下さり,共に歩んで下さいました,元三輪書店社長,シービーアール前社長の三輪 敏氏の発案に依りますことを,まずは申し上げます.またこの出版社シービーアールのご提案に賛同されました福田恵美子氏(編者略歴参照),及び藤井浩美氏(編者略歴参照)のご努力により実現に至ったものであります.
紙面の都合上,余儀なく掲載削除させていただきましたこと,また不行き届きの点につきましては,陳謝申し上げます.
本書を世に送り出すにあたり,幾年迎える未来に在っても,作業療法の理念,原理に堅く立ち,柔軟に時代に役立つ作業療法の発展を祈念させていただきます.並々ならぬご努力,ご尽力をいただきました出版社シービーアールのご担当の皆様に,厚く御礼申し上げます.
2021年1月 編集担当 矢谷 令子
2018年の夏のある日,出版社シービーアールの前社長から,「作業療法の教育関係の出版を考えているのだが…」との問いかけに端を発し,私が国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院(通称,清瀬リハ学)の3期生ということもあり,話は作業療法最初期となる萌芽時代の探訪へと進みました.
日本作業療法士協会は,2016年に「五十年史」を出し,大変有意義な数々の情報が盛り込まれ,貴重なものとなりました.
そこで,今回は,一つの専門職がその国に育つというルーツを尋ね,日本の作業療法士協会発足前の時代背景,関わられ労してくださいました多くの先輩諸氏の過ぎた日々にお逢いしたいと願いました.加えて,協会発足前後の四半世紀を対象に,残された協会活動の記録を辿ることに,編集者3人の思いが一致いたしました.
編集方針としましては,本の題名をひとまず「日本の作業療法発達史」とし,「発達」という言葉にこれまでに愛され育まれてきた作業療法らしさを込めて2部構成とし,第一部を歴史を中心に,第二部を草創期からの作業療法実践の立場から,また,「これからの作業療法」として,将来の一端をみる立場から,執筆者のご協力をいただくことに致しました.第一部は,日本作業療法士協会初代及び2代の会長に,Ⅱ部を編集者全員で,担当することに致しました.
作業療法はわずか50数年の歴史ではありますが,作業療法士以外の方々が核となって尽力してくださいましたことと,日本に新たな職種が誕生した経緯を知ることは,重要なことではないかと考えた次第でした.おそらくそうした支援がなければ,まだまだ資格制度は遅れたのではないでしょうか.
編集者の一人である私が,20数年前に矢谷令子氏の研究室で,いくつもの箱にぎっしりと詰まった資料や文献を拝見しました時に,「この資料はいつか日の目をみせなければもったいない.これから巣立っていく作業療法士に伝えるべきものではないだろうか?」と密かに思っていたことが,出版社の声掛けにより実現致しました.「思いは叶う」ということを実感致しています.
「温故知新」を改めて考えながら,第一部,第二部を関連させ,作業療法士協会の「五十年史」と合わせて通読していただき,「日本の作業療法発達史―萌芽期の軌跡を尋ねて―」のタイトルの意図とともに,先人たちの息吹を感じ取っていただけましたらこの上ない喜びです.人類の曙があるように,専門職はどうやって生まれてきているのかを先人たちの文章から読み取っていただけることを願って止みません.
ご提案された株式会社シービーアール前社長の三輪 敏氏は,『長いこと出版の仕事に携わってきましたが,そのほとんどは「作業療法」にかかわり,「作業療法」「作業療法士」の皆様と親しくさせて頂き,今日に至りました.「作業療法を,大変大事に思う」一人です』と常々仰っていました.また,「本書は,実は私の念願成就の一冊であります.本書出版の喜びを読者の皆様と共にし,広く社会の皆様のお役に立てることは望外の幸せと思っています」とのコメントもいただきました.
ご提案された三輪 敏氏,ご苦労多くもご協力いただきました鈴木春香氏,横尾直享氏をはじめ株式会社シービーアール現社長の小林俊二氏のご協力を戴きましたことに心より厚くお礼申し上げます.
2021年1月 福田 恵美子(清瀬リハ学3期生)
「日本の作業療法発達史―萌芽期の軌跡を尋ねて―」の編集に関わりました私は,1980年に文部省が2番目に設置した弘前大学医療技術短期大学部で作業療法の学びを始め現在に至っております.
日本に作業療法が誕生して半世紀が過ぎた現在,99,788人の作業療法士が誕生しております.この先,高品質な作業療法を提供するには,作業療法の原点を紐解き,現在を見据え,未来に向けて,作業療法の発達史として,時系列で考えることが重要ではないかと常日頃考え,この企画に携わってきました.
日本に初めて開校された清瀬リハ学(通称)の卒業生が最初期の作業療法士としてのご体験を,二番目に開校された労働福祉事業団九州リハビリテーション大学校(通称,九州リハ大)については一期生の理学療法士の橋元 隆氏,作業療法士の大丸 幸氏に学生時代を回顧してご執筆いただきました.清瀬リハ学と同様に,英語で学んだ時代でした.
種々検討を重ねて,2年余の期間を費やして発刊に至りました.本書に登場する先達,お一人お一人の体験が,種々の作業療法の現場で活躍している現在の作業療法士に伝えられていくことを心から願っております.
2021年1月 藤井 浩美(弘前大学医療技術短期大学部1期生)