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- 画像診断 2021年増刊号(Vol.41 No.11)頭部単純CTこと始め-次のステップまでつなげよう-
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序文
序 文
頭部単純CTは,MRIや核医学検査などの他の画像診断装置(モダリティ)とは異なり,撮像の敷居が低く簡便なため,日常診療における施行頻度が高い.中枢神経症状を来す疾患のスクリーニング検査として,“念のために”まず行われることもままある.
画像診断における読影の基本として,複眼的な2軸思考が大事である.つまり,演繹的方法(トップダウン)と帰納的方法(ボトムアップ)である.演繹的方法とは,現病歴,現症(身体所見)および検査データから原因となる鑑別リストを絞り込み,特定の疾患を念頭に置き,その存在を確認するために画像検査を行うことである.一方,帰納的方法とは,年齢性別など臨床情報に関してはグッと堪えて,ひとまず脇に置いておき,まっさらな眼で系統的に画像所見を拾い上げて物語を紡ぎ出し,画像から病態生理に迫る行為である. 画像検査の本来の目的は,これら両者のうち,演繹的方法が主体であることが望ましい.なぜならば,事前確率が低い状態で検査をした場合には,ある特定の所見や徴候が陽性という知見を得ても,その所見と結びつきの高い疾患を示唆するとは限らないからである(ベイズの定理).
しかし,残念ながら頭部単純CTは前述の通り,“とりあえず”闇雲にスクリーニングとして行われることが多い.このような検査は,帰納的方法で取り組むべきである.つまり,所見を丹念にみつけなければならない.検査の入り口となるような,一見,簡単にもみえる検査ほど奥は深いのである.
本書は,入門書として切り口をいくつか変えて,頭部単純CTを攻略する読影法を伝授する.その基本的態度は,頭部単純CTのみで当てる(診断にたどりつく)ことは期待せず,入り口として次のステップへの方向性の指針を示すことを主眼とする.つまり,次に行うべきことは血管造影なのか,単純MRIなのか,造影MRIなのか,病歴確認なのか,経過観察なのか,はたまた何もしないで良いのかを示せるようになることを目的として企画した.
総論としてまずは,頭部単純CT読影の基本の基本として,画像がどう得られているのか,どのように表示することが読影に影響するのかなど,教育的なことのみならず最新の技術について村山和宏先生にまとめていただいた.次いで,その原理を理解した上で,見落としのない読影のための読影の手順やお作法,特に注意してみるべきミニマム・リクワイアメントについて松木 充が真髄を語った.また,異常を検知するには正常を知らなければならないので,正常解剖や変異について青木茂樹が基本を押さえた.
各論では,いよいよ特定の所見から鑑別診断に迫る方法を伝授する.頭蓋内の高吸収な病変について安藤沙耶先生,脳実質の低吸収値について木下俊文先生,脳萎縮,脳室拡大や脳室周囲の嚢胞性病変について金柿光憲先生,その他の頭蓋内嚢胞性について岡本浩一郎先生に詳しく記述していただいた.また,演繹的方法として疾患別にも対応を要する急性期・亜急性期の重要所見として,急性期脳梗塞を渡邉嘉之先生,急性期脳出血を沖 摩耶先生,くも膜下出血を沖 達也先生,外傷・硬膜下血腫を若田ゆき先生に解説していただいた.陳旧性脳梗塞・脳出血と陳旧性脳挫傷の鑑別を,CTだけで完結することの危険性を前田正幸先生に説いていただいた.そして,脳腫瘍ではCTでしか得られない情報や,CTでも鑑別を絞れる疾患について増本智彦先生にまとめていただいた.
さらに本書の特徴として,頭蓋内だけでなく撮像範囲内に写り込んでいる頭蓋外の構造(頭蓋骨,副鼻腔,眼窩や頭皮など)についても必要最低限の知識を提供している.頭蓋底解剖について浮州龍太郎先生に,側頭骨疾患について小玉隆男先生に,頭蓋骨疾患について内山雄介先生に,耳下腺や皮膚について加藤博基先生に,眼窩・副鼻腔について眼科や耳鼻咽喉科コンサルテーションを勧めるか否かの観点から豊田圭子先生にミニマル・エッセンシャルを概説していただいた.
このように本書は,頭部単純CTを多方向から切り込み,立体的に再構築している意欲的な増刊号である.本書を手掛かりに,次のステップへ繋がる,よりよい医療を提供して欲しい.
最後に,日常臨床や業務でご多忙中にもかかわらず,本書へ寄稿していただいた先生方に厚くお礼を申し上げたい.
2021年7月
順天堂大学大学院医学研究科放射線医学 青木茂樹
自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児画像診断部 松木 充
自治医科大学医学部放射線医学講座 森 墾
目次
第Ⅰ章 頭部単純CT‐総論
1 頭部単純CT読影のために知っておくべき技術 (村山和宏,大野良治,外山 宏)
1 CT値に影響を及ぼす要素
1 CT値(HU)とは
2 管電圧と管電流
3 分解能
4 被ばく線量と被ばく低減技術
[豆知識] 1. 部分容積効果(partial volume effect)
2 撮影方法と各パラメータ,アーチファクト
1 シングルスライスCTとマルチスライスCT
2 ノンヘリカルスキャンとヘリカルスキャン
3 スライス厚
4 ピッチファクタ
5 アーチファクト
3 ウインドウ幅 / ウインドウレベルの調整
1 頭部のWW/WL
[豆知識] 2. 早期虚血性変化(early CT sign)
2 読影におけるWW/WLの重要性
4 dual energy CT(DECT)
2 見落としのない読影のために-特に注意してみるべきところ- (松木 充)
1 位置決めのスカウトビューを観察
2 辺縁から皮膚,皮下,耳介,外耳道を観察
[豆知識] 1. 顔面皮膚多発性粟粒骨腫
3 頭蓋骨を観察
[豆知識] 2. 石灰化上皮腫を合併した筋強直性ジストロフィ
4 くも膜下腔,脳槽を観察
5 静脈洞,深部静脈,大脳鎌を観察
6 脳回,脳溝,灰白質を観察
7 脳室を観察
8 白質,深部灰白質を観察
9 涙腺,眼球,眼窩,海綿静脈洞を観察
[豆知識] 3. 糖尿病性舞踏病
10 鼻腔,副鼻腔,中耳,内耳,内耳道を観察
11 翼口蓋窩,顎関節,下顎窩後方,咀嚼筋間隙,頭蓋底を観察
[豆知識] 4. 無セルロプラスミン血症
12 その他,大孔,環軸椎,椎体前方,耳下腺を観察
3 頭部単純CT読影のための正常解剖 (ザミラ マハムチ,青木茂樹)
4 異常と間違えやすい正常構造・変異( 頭蓋底含む)( 青木茂樹)
第Ⅱ章 頭部単純CT―所見から迫る鑑別診断
1 頭蓋内の高吸収値 (安藤沙耶,安藤久美子,石藏礼一)
1 石灰化を伴う病変
1 生理的石灰化
[豆知識] 1. 頭蓋内生理的石灰化を来す部位
2 内分泌代謝疾患などによる比較的左右対称性の石灰化(生理的な石灰化が亢進するもの)
3 生理的な部位以外に石灰化を認める疾患
4 石灰化を伴う腫瘍性病変
2 石灰化以外の理由での高吸収
1 細胞密度の高い腫瘤
2 出血による高吸収
3 転移性脳腫瘍(治療後変化も含む)
3 その他の高吸収
1 造影CT後,血管造影後,造影MRI後にみられる高吸収
2 脊髄の造影剤マイオジール
3 眼内のシリコンオイル
4 皮膚の高吸収(血管の石灰化,皮膚多発性粟粒骨腫)
[豆知識] 2. 異物
5 静脈洞
2 脳実質の低吸収値 (木下俊文)
1 脳実質のCT
1 健常人の脳CT
2 脳実質病変の吸収値低下の要因
2 皮髄境界の不明瞭化を生じる病態
1 低酸素脳症による全脳虚血
[豆知識] 1. 早期虚血変化(early ischemic change)
2 脳梗塞
[豆知識] 2. isolated cortical swelling
3 感染症
4 浸潤性脳腫瘍
[豆知識] 3. IDH 変異陽性・染色体1p/19q 共欠失を有さない神経膠腫
5 その他,灰白質に浮腫を生じる病変
3 大脳白質にみられる低吸収域
1 転移性脳腫瘍の周囲の浮腫
2 脳膿瘍周囲の浮腫
3 多発性硬化症
4 副腎白質ジストロフィ
5 その他,大脳白質に低吸収を生じる病変
4 脂肪を含む頭蓋内病変:脂肪腫
5 脳梗塞と脳腫瘍の鑑別点
3 脳脊髄液,脳溝,脳室 (金柿光憲)
1 脳萎縮・水頭症
1 大脳萎縮
2 変性認知症
3 神経性食思不振症
4 小脳萎縮および脳幹萎縮
5 水頭症
6 特発性正常圧水頭症
7 非交通性水頭症
8 LOVA
2 脳室の正常変異
1 非対称な側脳室
2 透明中隔腔/Vergae腔
3 中間帆腔
3 脳室周囲の嚢胞性病変
1 松果体嚢胞
2 コロイド嚢胞
3 脈絡叢嚢胞
4 上衣嚢胞
5 脈絡裂嚢胞
4 頭蓋内の嚢胞性病変( 岡本浩一郎)
1 テント上
1 脳実質内
2 脳室内
3 脳実質外(穹窿部・大脳縦裂・Sylvius裂~中頭蓋窩)
4 松果体部
5 トルコ鞍部・傍鞍部,脳底槽・脈絡裂
2 テント下(後頭蓋窩)
1 脳幹・小脳実質内
2 脳幹・小脳実質外
3 第四脳室内
第Ⅲ章 頭部単純CT―疾患別
1 対応を要する急性・亜急性の重要疾患
① 急性期脳梗塞( 渡邉嘉之,沖 達也,沖 摩耶)
1 急性期脳梗塞のCT所見
1 超急性期脳梗塞
2 急性期脳梗塞
3 異常所見をみつける方法,コツ
2 脳梗塞と脳腫瘍で鑑別を有する症例
1 出血性脳梗塞
2 退形成性星細胞腫
3 診断を間違わないためのポイント
3 単純CTの次に行う検査
② 急性期脳出血 (沖 摩耶,沖 達也,渡邉嘉之)
1 高血圧性脳出血
1 被殻出血
2 視床出血
3 橋出血
4 小脳出血
5 皮質下出血
2 非高血圧性脳出血
1 アミロイドアンギオパチー
2 静脈洞血栓症(静脈性梗塞)
3 脳動脈瘤の脳実質内穿破
4 もやもや病
5 脳動静脈奇形
6 脳腫瘍
③ くも膜下出血 (沖 達也,沖 摩耶,渡邉嘉之)
1 典型的な画像所見
2 非典型的な画像所見
3 原因疾患
4 偽性くも膜下出血
5 単純CTの次に行う検査
④ 外傷・硬膜下血腫 (若田ゆき)
1 頭部外傷での読影手順
[豆知識] 1. 近年の頭部外傷症例
1 脳挫傷・脳内血腫
2 びまん性脳浮腫
3 外傷性くも膜下出血・脳室内出血
4 頭蓋骨骨折
5 硬膜外血腫
6 急性硬膜下血腫
7 慢性硬膜下血腫
[豆知識] 2. 再発性慢性硬膜下血腫に対する中硬膜動脈塞栓術
2 その他のよくみる疾患 (前田正幸)
1 陳旧性脳梗塞
2 陳旧性脳出血
3 大脳白質病変
[豆知識] 1. leukoaraiosisの名称
[豆知識] 2. 脳小血管病
[豆知識] 3. 大脳白質病変の病理
4 脳萎縮
3 その他のよくみる腫瘍 (増本智彦)
1 脳腫瘍の単純CTで注意すべきポイント
1 頭蓋骨の変化
2 石灰化
3 脂肪
4 出血
2 代表的な脳腫瘍の単純CT所見
1 脳実質内腫瘍
2 脳実質外腫瘍
第Ⅳ章 頭蓋外の単純CT
1 頭蓋底解剖 (浮洲龍太郎)
1 前頭蓋底
1 盲孔
2 篩板孔
[豆知識] 1. vein of foramen cecum(盲孔静脈)
2 中頭蓋底
1 視神経管
2 上眼窩裂
3 下眼窩裂
[豆知識] 2. 上眼窩裂症候群・眼窩先端症候群
4 正円孔
5 Vesalius孔
6 卵円孔
7 棘孔
8 頸動脈管
9 破裂孔
10 翼突管(Vidian canal)
3 後頭蓋底
1 内耳道
[豆知識] 3. 翼口蓋窩
[豆知識] 4. 神経周囲進展
2 顔面神経管・茎乳突孔
3 頸静脈孔
4 舌下神経管
5 大後頭孔
6 顆管
[豆知識] 5. 頸静脈孔症候群
2 側頭骨疾患ミニマムエッセンシャル-頭部単純CTを評価する際に留意しておきたい疾患を中心に- (小玉隆男)
1 側頭骨外傷
1 側頭骨骨折
2 耳小骨脱臼・離断
2 炎症性疾患,真珠腫
[豆知識] 1. コレステリン肉芽腫
3 腫瘍性病変
[豆知識] 2. Prussak腔とscutum
4 先天奇形
[豆知識] 3. CHARGE 症候群
3 頭蓋骨疾患ミニマムエッセンシャル (内山雄介,田中法端)
1 転移性腫瘍
2 骨髄腫/ 形質細胞腫
3 脊索腫
4 骨腫
[豆知識] 1. Gardner症候群
5 軟骨性腫瘍
6 Langerhans細胞組織球症
7 線維性骨異形成
[豆知識] 2. McCune-Albright症候群
8 コレステリン肉芽腫
4 耳下腺・皮膚(頭皮) (加藤博基,川口真矢,安藤知広,松尾政之)
1 耳下腺
1 石灰化含有病変
[豆知識] 1. Sjögren 症候群に合併する耳下腺MALT リンパ腫
2 脂肪含有病変
2 皮膚(頭皮)
1 石灰化含有病変
2 脂肪含有病変
[豆知識] 2. 毛母腫の多彩な名称
3 悪性腫瘍
4 脳回転状皮膚
5 眼窩・副鼻腔 -眼科,耳鼻咽喉科コンサルテーションを勧めるか否か- (豊田圭子)
1 鼻副鼻腔炎
1 真菌性副鼻腔炎
2 好酸球性副鼻腔炎
3 歯性上顎洞炎
4 多発血管炎性肉芽腫症
5 悪性腫瘍
2 眼窩先端症候群
1 浸潤性副鼻腔真菌症
2 Onodi蜂巣および粘液瘤
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書籍情報
- ISBN:9784780904307
- ページ数:232頁
- 書籍発行日:2021年9月
- 電子版発売日:2021年9月17日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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