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- Heart View 2018年10月号 Vol.22 No.10 循環器疾患におけるディベート
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序文
企画にあたって
山下武志(心臓血管研究所所長)
医療の現場では多数決という決め方は好まれない。多数の意見が正しいとは限らないからである。かといってエビデンスとして利用価値があるのは多数をもとにした知見であり,さらにいえば,それらを無作為化したうえでの前向き大規模試験の結果であろう。しかし,たとえそのようなエビデンスが得られたからといってことが済むわけではない。その大規模試験は限られた一部の理想的な対象例に限ったものであったり,あるいは脱落例が多かったりする。その結論は海外では通用するものの,日本のように医療費が安価で気楽に医者にかかれる国ではどうなのか,高齢者で低体重の患者が多い国でも同じと言えるのか,といった疑問が残る。さらには,知りたいけれど,その答えを出すために費用と時間のかかる面倒くさい試験がなかなか行われない,という事情もある。何年もかかる長期試験では,結果の出るころには新しい治療法が出てきているかもしれない。
それでも臨床医からはしつこくガイドラインを求められる。いきおい,ガイドラインの執筆者はエビデンスのない部分を,批判を浴びながら,汗をかきながら埋めていかなければならない。そんな苦労をしてもなお,医療はまだまだ未熟で,曖昧で,わからないことだらけである。
そんなときにこそ,独断や偏見にとらわれず,ものごとを公平にみる姿勢が求められる。まさにPro とCon の両方の立場から互いを批判するディベートが役に立つのである。循環器が扱う虚血,心不全,不整脈,高血圧,どの分野においても,わからないことは山ほどある。それに対する答えは一見明白なようであっても実は怪しい,本当にそうなのか,今でもそうなのか,日本でもそうなのか。
本特集では,とくに実臨床で遭遇しそうな疑問,多くの臨床医が困っているような話題を勝手に選ばせていただいた。残念ながら紙面の都合上,Pro とCon に分かれての対決というよりは,エキスパート自身の心の中でディベートを繰り広げていただいた。本企画によって循環器臨床のモヤモヤが解けたら,あるいは問題点を浮き彫りにできたら,きっと役に立つに違いない。きっと患者のためになるに違いない。きっと勉強になるに違いない。そして,ここが大事なのだが,きっと面白いに違いない。
Medicine is a science of uncertainty, and an art of probability.( William Osler)
目次
特集:循環器疾患におけるディベート 企画・構成/三田村秀雄
診る
1.心エコーがあれば,聴診器は不要か? 赤石 誠
2.coronary CTがあれば運動負荷試験は不要か? 野原隆司
3.[Expertise]検診で見つかるearly repolarizationは放置してよいのか? 鎌倉 令,草野研吾
識る
4.血圧は低ければ低いほどいいのか? 藤原健史,苅尾七臣
5.LDLコレステロールは低ければ低いほどいいのか? 土井貴仁,片岡 有,安田 聡
6.[Expertise]心臓病の遺伝的リスクを知ることで臨床はどう変わるか? 古川哲史
治す
7.安定期冠動脈疾患への介入 ベストはどれか? 薬物 vs PCI vs CABG 新美 望,池村修寛,香坂 俊
8.DES後のDAPTはいつまで続けるべきか? 下浜孝郎,亀田 良,阿古潤哉
9.HFpEFの治療ターゲットは何か? 百村伸一
10.どのような重症心不全例にCRTを勧めるか? 絹川弘一郎
11.[Expertise]TAVIをintermediate riskのASにも勧めるか? 渡邊雄介
12.無症状の心房細動にも積極的にアブレーションを行うべきか? 山根禎一
連載
・【責任冠動脈を追え!PCIエキスパートになるための25カ条】
第9条:マイクロカテーテルの使い分けを身につけるべし 伊藤良明
・【魅せる!聴かせる!学会発表プレゼンテーション技法】
9.大切な「ホワイトスペース」 渡部欣忍
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書籍情報
- ISBN:9784008102210
- ページ数:98頁
- 書籍発行日:2018年9月
- 電子版発売日:2021年10月20日
- 判:A4変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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