発達障害の理解と対応 改訂第2版<小児科臨床ピクシス>

  • ページ数 : 184頁
  • 書籍発行日 : 2014年7月
  • 電子版発売日 : 2021年12月8日
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商品情報

内容

小児科医にとって発達障害はさらに深く,そして長く関わるテーマとなっている.2013年にDSM-5が発表され,広汎性発達障害という総称が自閉症スペクトラム障害へと変更された.また,ADHDに保険適用となったメチルフェニデートとアトモキセチンは成人まで使用可能となり,早期介入とともに,思春期以降も途切れなく治療・支援にあたることが前提となっている.

あわせて読む → 「小児科臨床ピクシス」シリーズ

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序文

序─改訂にあたって


本書の初版が2008年に上梓されてから6年の月日が流れました.この間に,発達障害はその対応が,医療のみならず保育や教育においても,そして社会そのものにおいても大きなテーマとなってきました.また法制度や診断基準などを含めた変化もありましたので,部分的ではありますが改訂することといたしました.

法制度の面では見直しが予定されていた発達障害者支援法は理念法であり,まだそのままですが,施策法である障害者自立支援法(2013年度から総合支援法となりました)の中で発達障害は精神障害の一部と位置づけられ,これによって法的にも障害として認められました.このことによって障害者手帳の取得が可能になったほか,障害者雇用なども可能になりました.しかし障害基礎年金の取得においてはまだ地域により格差があります.

診断基準の面では2013年5月にアメリカ精神医学協会(APA)によるDSMが従来のⅣ─TRに変わって5版が発表されました.自閉症のグループは広汎性発達障害(pervasive developmental disorder:PDD)という総称から自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD;ただし日本語訳ではdisorderを障害ではなく症と訳するようになったため,それに従えば自閉症スペクトラム症)という総称になり,従来のKanner型の自閉症もAsperger型の自閉症も連続性(スペクトラム)をもつことから一連の疾患と位置づけられました.このためAspergerの表記は消えました.ADHDについては衝動性の診断項目の大幅改定も予測されていましたが実際には小さな変更で,従来の自閉症との併存診断を認めないとする記述はなくなりました.

治療の面ではADHD治療薬がメチルフェニデート(コンサータ®)とアトモキセチン(ストラテラ®)の2種類となり,成人まで使用できることになりました.自閉症についての薬物療法には大きな変化はありませんが,ABA(applied behavior analysis)を始めとする行動介入療法がより広く行われるようになり,SST(social skills training:社会生活訓練)が広まってきた反面,2013年からの通所支援サービスの規制緩和とも相まって,必ずしも質的に高いサービスが提供されているとは限らないという状況にもなっています.

以上のように発達障害をとりまく状況にはこの6年間で変化は見られるものの,発達障害を抱える子どもたちに対しては,将来のQOL(quality of life)を確保するために治療や対応を行うという根本的な面での変化はありません.発達障害を抱えた子どもたちは増加しているといわれていますが,私たちにとっては適切な対応を少しでも多くの子どもたちに届けることに尽きると考えています.


2014年6月

Rabbit Developmental Research
平岩 幹男

目次

1章 発達障害とは

発達障害とは (平岩幹男)

発達障害の原因と病態-最近の考え方 (宮本信也)

発達障害者支援法と障害者自立支援法 (平岩幹男)

特別支援教育の流れ (野村東助)

乳幼児健診と発達障害 (関 あゆみ)

幼稚園・保育園での発達障害児 (小林繁一)

小・中学校での発達障害児 (小林繁一)

IT・マスメディアの発達への影響 (谷村雅子)

2章 診断と治療

ADHDの診断基準 (安原昭博)

ADHDの二次障害 (安原昭博)

ADHDの薬物療法 (安原昭博)

自閉症の診断をめぐる問題点 (橋本俊顕)

高機能自閉症の診断基準 (渡辺慶一郎,金生由紀子)

高機能自閉症の二次障害 (渡辺慶一郎,金生由紀子)

高機能自閉症の薬物療法 (渡辺慶一郎,金生由紀子)

学習障害の診断基準 (平谷美智夫)

学習障害への対応 (平谷美智夫)

発達障害における診断の重なり (宮本信也)

発達障害とてんかん (小平かやの)

発達障害における睡眠関連病態と対応 (神山 潤)

発達障害の脳画像所見 (橋本俊顕)

解明された自閉症の原因遺伝子 (大野耕策)

米国の現状 (宮本信也)

3章 さまざまな対応

PARSの地域での臨床適応 (辻井正次,行廣隆次)

PT (岩坂英巳)

SST (岩坂英巳)

TEACCH (服巻智子)

ABA-VBを中心に (若井道子,平岩幹男)

PECS (園山繁樹)

HACプログラム (海野 健)

WISC-Ⅳとその使い方 (瀬尾亜希子,平岩幹男)

5歳児健診 (関 あゆみ)

4章 患者の会

JDDネット (田中康雄)

日本自閉症協会 (尾崎ミオ)

全国LD親の会 (矢作裕子)

アスペ・エルデの会 (辻井正次)

5章 社会経済的支援

社会経済的支援の現状 (平岩幹男)

発達障害者支援センターとは (田熊 立)

就学時健診と就学指導 (平岩幹男)

成人への支援 (平岩幹男)

就労支援 (佐藤賢治)

6章 DSM-5での発達障害の考え方

DSM-5と発達障害 (神尾陽子)

付表

1 PARS項目と評定 (橋本俊顕)

2 発達障害者支援センター一覧 (田熊 立)


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書籍情報

  • ISBN:9784521739687
  • ページ数:184頁
  • 書籍発行日:2014年7月
  • 電子版発売日:2021年12月8日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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