序文

本号の特集はPNLとECIRSのstate of the artです。小職が泌尿器科医になった1991年当時はESWLが尿路結石に対して保険適用となったばかりで，小職の結石治療分野の研修はほぼESWL一本槍でした。当時のTULに関しては，内視鏡を尿管に挿入すること自体がまだ名人芸の時代で，PNLはレジデントの頃は数例程度立ち会ったのみでした（記憶によれば，超音波砕石機が熱を持たないように，吸引がきちんと動いているかの監視係）。

その後，尿管鏡の細経化と画質向上，レーザーを含めた砕石・抽石デバイスの長足の進歩が相まって，TUL，特にfTULが結石治療の主役に躍り出ました。腎結石に対してもfTULを第一選択としている施設が増加していると思われます。一方，fTULあるいはESWLでは治療困難と考えられる腎結石に対してはPNLが選択肢となります。PNLにも，標準的なPNL（Standard-PNL）の他に細径腎盂鏡を用いたPNL（Mini-PNL）が普及し始め選択肢が増えています。さらに令和2年度に診療報酬上の評価がなされたことによりEndoscopic Combined IntraRenal Surgery（ECIRS）という選択肢も考慮する必要があります。尿路内視鏡手術という括りであっても，PNLは経尿道的ではなく経皮的に尿路にアクセスを要する点に大きな違いがあります。このため，PNLあるいはECIRSの実施に際しては，collecting systemへの安全かつ砕石・抽石に最も効果的なアクセスの確立を含めていくつかのハードルがあると思われます。そこで，本特集では，PNLとECIRSの勘所に関して，dos and don’tsやトラブルシューティングを含めて，エキスパートの先生方に写真，図表を交え具体的に分かりやすく解説していただきました。「腎結石治療におけるPNLとECIRSの現在の位置付け」で両術式を俯瞰していただいた後は，内容に一部重複する部分は出てきますが，複数のエキスパートの先生方のお考えや手技を記載いただくことは読者にとって勉強になると考え，PNLとECIRS双方で，「適応と術前準備」，「手術室のセッティング・体位・Collecting systemへのアクセス」，「砕石と抽石＆術後管理」という項目立てとしました。尿路内視鏡手術では，1つ1つの手順を着実・確実に踏んで行くことが大切であると考えています。1つ前の段階でやっていなければならなかった操作を後戻りしてやり直すことは難しい場合も多く，手順を踏まないことが積み重なると重篤な合併症につながるリスクが高まると思います。尿路内視鏡を用いた結石の治療は有効性はもちろんのこと安全性も極めて重要であり，その点で，PNLやECIRSはピットフォールの多い非常に難しい手術といえます。本特集は，PNLやECIRSの経験の浅い先生方はもちろん，導入はしたが壁に当たっておられる先生方，さらには指導的立場の先生方にとっても資するところの多い実践的な内容と思います。本特集がPNLやECIRSの有効性・安全性の向上の一助になれば望外の喜びです。

末筆ですが，短期間に教育的な原稿を寄稿していただいた執筆者の先生方には感謝の言葉もございません。本当にありがとうございました。

東邦大学医療センター大橋病院泌尿器科
関戸　哲利