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臨牀消化器内科 2022 Vol.37 No.8 ウイルス肝炎制御時代の肝発癌
臨牀消化器内科編集委員会 (編) / 日本メディカルセンター
商品情報
内容
C型肝炎関連肝癌は減少した.しかし現在,非B 非C型肝癌の増加が著しく,50%を超えている.この状況にしっかりと対応していく必要がある.
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序文
巻頭言
日本肝臓学会が設立されてから58 年目になる.肝臓学会の発展は,ウイルス肝炎研究の進歩と歩みを共にしてきた.学会設立の1965 年は,B 型肝炎ウイルス(HBV)のHBs 抗原が米国のBlumberg によって報告された年である.それから四半世紀が経過した1989 年にC 型肝炎ウイルス(HCV)が発見された.HCV 発見の原動力となった分子医学の発展は,その後のウイルス肝炎研究と薬剤開発を猛スピードで進めていった.
筆者が肝臓医としての駆け出しだった1980年代前半には,肝臓病を治す薬などは存在しなかった.血液検査によってAST,ALT 値を測定し,「言葉による治療」で患者さんを安らかな気持ちにして外来から送り出していた.それは,内科医としての技能を磨いてくれた貴重な経験ではあったのだが,肝臓病を積極的に治せないのは歯がゆいことであった.
1992 年にわが国でのインターフェロン(INF)によるC 型慢性肝炎の治療が承認されたが,ウイルス駆除率は全体の2 割程度にすぎなかった.しかし,2014 年7月に,初めてのIFN フリーの治療薬として,DAA(direct‒acting antiviral)と呼ばれるdaclatasvir とasunaprevir による経口2 剤併用療法が認可されると状況は一変した.次々と新たなDAA が承認され,ウイルス駆除率100%近いDAA 治療時代が到来した.圧倒的なスピード感であった.
当初から,「HCV 駆除=C 型肝炎の治癒」ではないことを,われわれ肝臓専門医は声高に啓発をしていた.慢性肝炎の比較的早期にHCV 駆除が達成されれば,肝発癌は有意に抑制されるが,それでも肝癌発生はゼロになるわけではない.HCV 駆除後の肝発癌リスクがいくつか指摘された.駆除後も継続して画像検査(腹部エコー等)を含むフォローアップを定期的に受けることを,確実に患者に指導した.その成果で,HCV 駆除後の肝癌発生は的確に捉えられ,早期肝癌治療が多く行なわれるようになった.その早期肝癌の局所療法として,肝切除とラジオ波焼灼術との間に,無再発生存率(RFS)や全生存率(OS)には有意差が存在しないことも,SURF トライアルによって明らかにされた.
B 型肝炎では,まだウイルス駆除を達成する抗ウイルス薬は登場していない.しかし,Tenofovir(TDF,TAF)やEntecavir という逆転写酵素阻害薬(核酸アナログ)治療では,思いのほか,耐性発生が低頻度であった.HCV 駆除ほどのインパクトはないが,核酸アナログ継続によってB 型肝癌発生は有意に減少できる.
そして,わが国の肝癌発生は「外因性」から「内因性」へと変化してきている.非B 非C 型肝癌の増加である.肝臓学会の当初の50 年間が「ウイルス肝炎との戦い」であったことは前記した.「外因性」肝癌との戦いであった.その後の8 年間は,「代謝関連肝癌(metabolism‒associated liver cancer;MALC)」ともいえる「内因性」肝癌との戦いの序盤戦であったといえる.脂肪性肝疾患であるNAFLD(nonalcoholic fatty liver disease)あるいはMAFLD(metabolism‒associated fattyliver disease)の病態も少しずつ明らかになってきている.肥満が最大のリスク因子ではあるが,非肥満者や痩せ型(Non‒obese あるいはLean)の脂肪性肝疾患患者も世界的に大勢おり,その一部は進行性であり,肝硬変や肝癌発生へと発展することも明らかになってきた.進行性の脂肪性肝疾患に対する薬剤開発は,現在のところ失敗続きである.
まずは,「ウイルス肝炎制御時代」の肝癌に対する早期発見,早期治療のサーベイランス・システムを確立し,やがて上市される(であろう)肝線維化治療薬や脂肪性肝疾患治療薬・予防薬の元,肝癌の制圧された世界を目指したいものである.
小池 和彦 公立学校共済組合関東中央病院
目次
【特集目次】「ウイルス肝炎制御時代の肝発癌」
巻頭言: /小池 和彦
1.ウイルス肝炎制御をめぐる疫学と最新動向
(1)わが 国における HCV感染症の疫学-最近の疫学と HCV eliminationの見通し/田中 純子
(2)わが 国におけるHBV感染症の疫学-最新の治療薬,ワクチンのトピックス/八橋 弘
(3)わが国における NAFLD/NASHの疫学/角田 圭雄 他
(4)わが国における肝硬変成因の動向/榎本 平之 他
(5)MAFLDと肝硬変・肝癌/川口 巧 他
(6)わが国における肝癌成因の動向/建石 良介
2.HCV駆除後の肝発癌における課題
(1)HCV駆除後の肝癌発生の現状とリスク因子/石堂 舜,黒崎 雅之 他
(2)HCV駆除後発癌の基礎的考察-形態とゲノムからの考察/相崎 英樹 他
3.HBV増殖制御下のB型肝炎における肝癌発生の現状とリスク因子/保坂 哲也
4.NAFLD/NASHにおける肝癌発生の現状とリスク因子/徳重 克年
5.非B非C型肝癌発生をどう考えるか/中塚拓馬,建石 良介
6.NAFLD肝癌における肝癌薬物療法の注意点/葛谷 貞二 他
連載
「胃炎の京都分類」の使い方
第2回 除菌後に新たに出現する地図状発赤とは/鎌田 智有 他
大腸ポリープに挑む
第3回 大腸ポリープ診療に人工知能(AI)がもたらすもの/三澤 将史 他
内視鏡の読み方/Brunner腺過形成/鳥谷 洋右,遠藤 昌樹 他
講座/ 消化管領域の人工臓器開発-人工食道,人工括約筋,人工舌開発プロジェクト/山家 智之 他
消化管異物の診断と治療/異食と精神疾患/渡邉 己弦 他
胆膵超音波内視鏡の読み方と描出法
第5回 肝門部領域胆管および肝臓(後編)/永塩 美邦,肱岡 範
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書籍情報
- ISBN:9784004003708
- ページ数:120頁
- 書籍発行日:2022年7月
- 電子版発売日:2022年7月21日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:2
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