泌尿器外科 2021年4月号(Vol.34 No.4)【特集】本邦のロボット支援前立腺全摘術のこれまでとこれから─標準術式と変法,拡大切除,新規ロボットについて─

  • ページ数 : 106頁
  • 書籍発行日 : 2021年4月
  • 電子版発売日 : 2022年8月19日
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内容

特集 本邦のロボット支援前立腺全摘術のこれまでとこれから─標準術式と変法,拡大切除,新規ロボットについて─
腹腔アプローチの歴史と標準術式の手技について/腹膜外アプローチの適応と手技/レチウス腔温存ロボット支援前立腺全摘の現況 ほか

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序文

序文


ロボット支援手術は,2000年に米国でダヴィンチシステムの登場とともに幕開け,前立腺全摘術を中心に発展してきた。本邦での本格導入は,2006年にまだ薬事未承認であったdaVinciTMによるロボット支援前立腺全摘術(RALP)で,以降先進医療としての認可,daVinci STMの薬事承認,2012年の保険収載を経て,普及し,現在の泌尿器科領域では腎部分切除術,膀胱全摘術,尿路変向術,さらに腎盂形成術も保険収載されている。ダヴィンチには基本的動きや関節などの特許が数百種類あるが,それら基本特許の多くが2019年に満了したことから手術支援ロボットの開発競争が始まり,世界で30社程度がダヴィンチシステムを追って開発にあたっており,国産のロボット「hinotoriTM」が2020年8月に厚生労働省から製造販売承認を取得,2020年末に同機器を用いた第一例目のRALPが実施された。

ロボット支援手術は今後新たな時代にはいると思われ,今回本手術の主軸として発展してきたRALPの歴史的背景,手術手技などをあらためて整理することを目的に本特集を企画した。標準的術式は頭低位で行う経腹アプローチであり,最も普及,汎用される術式であり,拡大切除やリンパ節郭清にも柔軟に対応可能である。ロボット支援手術により術中出血は極めて少量となり,尿禁制や勃起機能についても有利かつ早期の回復が期待できるようになった。しかしそれでも尿禁制の悪い症例が一定割合存在することも事実であり,さらに術中手技や術式そのものの改善に今後も努めていく必要があるかもしれない。変法としての腹膜外アプローチは,頭低位が不要で腹腔アプローチに何らかの障害がある場合にも適応できるが,リンパ節郭清に不利である。レチウス腔温存アプローチは尿禁制が極めて良好と報告されているが,手技の理解が難しいこと,断端陽性が多い可能性やリンパ節郭清が困難であるなどの課題があると思われる。拡大骨盤リンパ節郭清は,近年高リスクや中リスクの一部に推奨されるが,治療的意義や標準術式が確立されていない。局所浸潤がんなど超高リスクにもロボット支援手術の低侵襲性から手術療法や集学的治療が行われるようになっているが,その適応,術式などの統一も今後の課題であろう。

以上,これらの話題を取り上げ,各領域のエキスパートに教科書になり得るような手技の解説を中心に執筆をお願いした。また最新の話題として,前述の国産ロボット「hinotoriTM」の開発と経験についての紹介をお願いした。

今後,手術支援ロボットは,本体のみならず様々な関連デバイスの開発と価格競争などにより戦国時代にはいると考えられる。現在のロボットは術者がコンソールで操作をするマスタースレーブ方式であるが,高速通信システム5Gの普及や人工知能AIのさらなる開発により,遠隔地からの手術やAI制御による熟練外科医のテクニックの再現などが可能な時代の到来を期待したい。


茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター泌尿器科
島居 徹

目次

特集:本邦のロボット支援前立腺全摘術のこれまでとこれから─標準術式と変法,拡大切除,新規ロボットについて─

序文

茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター泌尿器科 島居  徹

腹腔アプローチの歴史と標準術式の手技について

行田総合病院泌尿器科 澤田 陽平,他

腹膜外アプローチの適応と手技

天理よろづ相談所病院泌尿器科 奥村 和弘

レチウス腔温存ロボット支援前立腺全摘の現況

東京女子医科大学泌尿器科 飯塚 淳平

ロボット支援前立腺全摘術における拡大骨盤リンパ節郭清

聖路加国際病院泌尿器科 服部 一紀,他

局所進行性前立腺癌に対する拡大摘除の手技,適応とその限界

愛媛大学医学部泌尿器科 福本 哲也,他

新しい手術支援ロボットシステム「hinotori」について─前立腺全摘を前提に─

神戸大学大学院医学研究科腎泌尿器科学分野 日向 信之,他

座談会

ARAMIS試験日本人データからニュベクオの有用性を考える

座 長 大家 基嗣

討論者 上村 博司,鈴木 和浩,鈴木 啓悦

連載

第123回 泌尿器科領域におけるトラブルシューティング

膀胱癌に対する膀胱全摘・回腸導管造設術で術中迅速診断で尿管断端陽性だったため追加切除を複数回施行した1例

横浜市立大学附属病院泌尿器科 山崎 将頌,他

臨床研究

前立腺肥大症に合併した慢性骨盤疼痛症候群(NIH 分類Ⅲ B)に対するタダラフィルの効果と無効例の分析

横浜東口鳥居クリニック 鳥居  毅,他

症例報告

分子標的薬加療中に低カリウム血症性ミオパチーを呈した転移性腎細胞癌の1例

日本大学医学部泌尿器科学系泌尿器科学分野 荒川 滋行,他

腫瘍摘出術後に播種性血管内症候群(DIC)をきたした副腎癌の1例

東京医科大学八王子医療センター泌尿器科 相澤  卓,他

ペムブロリズマブ投与後に続発性副腎機能低下症をきたした尿管癌の1例

国際親善総合病院泌尿器科 小林 幸太,他

腎摘除術後11 年目に急速な全身転移をきたした腎細胞癌の1例

東芝林間病院泌尿器科 時田 貴史,他

膀胱粘膜下腫瘍として発症した異所性前立腺組織の1例

聖路加国際病院泌尿器科 西野 貴斗,他

統 計

当院における精巣腫瘍の後方視的検討

昭和大学藤が丘病院泌尿器科学講座 松井 祐輝,他

報 告

分子標的薬時代における転移性腎細胞癌に対する予後因子の臨床的検討

大阪労災病院泌尿器科 辻本 裕一,他

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書籍情報

  • ISBN:9784865174151
  • ページ数:106頁
  • 書籍発行日:2021年4月
  • 電子版発売日:2022年8月19日
  • 判:A4判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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