整形・災害外科 2023年1月号 66巻1号 特集 TKAの成績向上のためのバイオメカニクス 【電子版】

  • ページ数 : 118頁
  • 書籍発行日 : 2023年1月
  • 電子版発売日 : 2022年12月26日
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商品情報

内容

特集:TKAの成績向上のためのバイオメカニクス(企画:冨田哲也)
 TKAのバイオメカニクス総論
 TKA術後軟部組織バランスおよびキネマティクスが臨床成績に及ぼす影響
 Augmented reality を応用したTKA
ほか

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序文

人工知能への期待

人工知能(artificial intelligence;AI)が世の中で騒がれ始めてから久しい。2006年にトロント大学のジェフリー・ヒントン教授が多数の層のニューラルネットワークを学習する方法を発表し,2012年の画像認識の国際コンテスト,ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge(ILSVRC)で,深層ニューラルネットを用いた手法で圧勝した。それから現在の第三次AIブームとなり,もう10年の歳月が経っているが,その勢いは衰える気配がない。当初は,過去の2回のブームと同様に一時的なトレンドとみる懐疑的な見方や,仕事が奪われるのではないかといった不安視する声が多かったが,既に第4次産業革命として社会に大きな変革をもたらしている。昨今の自動翻訳機能や,顔認証機能,音声認識機能の優秀さを実感している人も多いだろう。

AIの医療への応用範囲は,疾患診断,予後予測,発症リスク評価,治療法選択と幅広く,AIの臨床応用研究が指数関数的に増加している。2019年以降,整形外科領域の臨床応用研究の報告も増えている。AIが広く認知され,情報科学系の専門誌でなくても論文審査され,採用されることが多くなってきた。現状では十分なデータ量があってvalidationがされているAIであれば採用されることが多く,必然的に玉石混交となっている。異なる画像モダリティを統合するAIや,画像情報とカルテ記録などの言語情報を統合するAI,2D画像AIから3D画像AIへの発展など,新規技術の臨床応用も多く,この加熱気味の傾向はまだまだ続く可能性が高い。Gartner社が2022年に発表した「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2022」でも,"AIの自動化の加速"に分類される多くの技術はまだ黎明期に分類されている。

実際の臨床現場に導入されて社会実装まで至ったAIはまだ少ないが,米国食品医薬品局(Food andDrug Administration;FDA)は2017年7月に「Digital Health Innovation Action Plan」を公開し,医療用ソフトウェアの承認プロセスを刷新し,AIを用いた医療診断ソフトウェアの商品化を推し進める方針を示している。それ以降,FDA承認された医療AIが増加しており,Apple,Google,Amazon,Microsoftなどの巨大IT企業もスマートウオッチや診療情報記録,遠隔医療サービスなどの領域で続々と医療AIに参入している。既にネット検索や遺伝子診断などで医師を経ずに患者に直接診療情報が提供される時代に突入しているが,それがさらに加速されることが予測される。コロナの抗原検査の前に既にパンドラの箱が開いていたといってもいい。これからの医師としては,日本の医療に到来したD2C(direCTto consumer)の状況に対応した柔軟性とより高度な専門性が求められると考えられる。もちろんカルテ記録,文書記載の自動化や,診断補助などで恩恵を受ける部分も多くなるだろう。骨折の診断では,自動診断の結果が心電図の自動所見のように付随してくる時代もそう遠くないと思われる。骨粗鬆症診断も胸部や腹部,骨盤の単純X線像や他目的で撮影したCTなどから自動的に診断され,未診断症例が減ることが期待される。

AIに期待するのは,自動診断などによる医療の効率化だけでなく,大量データの自動解析による新しい医学的発見である。鉱脈探しの新しい探査ツールが増えたことになるが,鉱石発見の確率は決して高くないことは,他の研究手法と同様である。いかに良質の大規模データベースを整備し,AI研究者のアクセスを担保し,電子カルテ内に直接AIを導入できる仕組みを構築するかが,今後の日本の医療技術の発展に重要になってくると思われる。


髙尾 正樹
Masaki TAKAO,愛媛大学大学院医学系研究科,整形外科学

目次

特集:TKAの成績向上のためのバイオメカニクス(企画:冨田哲也)

TKAのバイオメカニクス総論 中村伸一郎

TKA術後軟部組織バランスおよびキネマティクスが臨床成績に及ぼす影響 水内秀城 ほか

Augmented reality を応用したTKA 塚田幸行 ほか

両十字靱帯温存型TKAの術後動態 河野賢一 ほか

6 自由度関節力学試験ロボットシステムを用いたTKAバイオメカニクス解析 岡田葉平 ほか

ナビゲーションシステムを用いたTKA術中キネマティクス解析 和田佳三

キネマティックアライメントのバイオメカニクス 金田和也 ほか

臨床成績向上のためのコンピュータシミュレーション 渡邉 睦 ほか

解剖学的関節面形状を有するTKA術後動態 石橋輝哉 ほか

―Personal View―

人工知能への期待 髙尾正樹

―新しい医療技術―

選択的後根切断術 金城 健

―臨床―

プレカット法を用いたPS型TKAにおけるバーチャルギャップと術中キネマティクス評価 濱岡航大 ほか

肋骨骨折の検討 若杉正嗣 ほか

Femoral Neck System の整復保持に関する経時的評価―外反整復とtelescoping量の関連 藤田敦也 ほか

―症例―

K-MAX KTプレートSを用いた人工股関節再置換術後に生じた

腸腰筋血腫の2例 石原(伏谷)由基 ほか

化膿性関節炎の鑑別を要した小児恥骨骨髄炎の1例 山元雅典 ほか

整形外科手術 名人の know‒how「舟状骨骨折偽関節に対する鏡視下手術」 坪川直人

スポーツ医学 つれづれ草(37) 「よき人の物語するは」 武藤芳照

机上の想いのままに(56) 「変人の勧めと老化の効用」 西野仁樹

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書籍情報

  • ISBN:9784003306601
  • ページ数:118頁
  • 書籍発行日:2023年1月
  • 電子版発売日:2022年12月26日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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