特集1:絶対苦手分野にしない 肩関節の画像診断
序説
肩関節は解剖が複雑で,その機能,疾患,撮影方法などを理解して読影することは敬遠されがちです。骨軟部領域を専門としない画像診断医にとっては適切なトレーニングの機会がない,レポートの内容にかかわらず臨床医からのフィードバックがないなどの状況が苦手意識に拍車をかけていると思われます。本特集はすでに肩関節に対して苦手意識のある画像診断医の先生方,これから肩関節の画像診断に取り組む若手画像診断医を対象としました。
胸部や腹部ではモダリティごとの読影の手順がそれぞれの読影医にあるように,本特集を通じて肩関節全体を評価する方法を身につけることを目的にエキスパートの先生方に各項目を担当していただきました。臨床で遭遇する頻度の高い基本的な疾患が繰り返しさまざまな観点から解説されています。エキスパートの先生方の,診断の手順やコツ,必ずチェックすることにしている読影のポイントがちりばめられています。また,関節MR造影(MRアルトロ)については施行しない施設も多いため,通常MRIでの所見が中心となっており,日々の読影の際に参考になると思います。練習帳のようなつもりで活用していただき,自分の読影方法と解説を対比させることで,少しでも肩関節の画像診断に対する苦手意識が少なくなることを願います。
最後に,限られた誌面のなか,本特集の趣旨に沿い,素晴らしい原稿をご執筆いただいた先生方にこの場を借りてお礼申し上げます。
中田和佳
特集2:画像診断管理加算を知ろう
序説
本企画は「画像診断管理加算を知ろう」と題し,画像診断管理加算の歴史,算定要件,取得からその維持における工夫,種々の問題点,また今後の展望について幅広く考えていくものです。
画像診断管理加算(特に画像診断管理加算3)は読影,撮像指示,被ばくなどの管理を行い,画像診断業務の質の向上を目指すものです。誕生から四半世紀以上が過ぎました。放射線診断医にとっては画像診断管理加算の取得や維持は,病院経営に寄与できることで病院内における放射線診断医のプレゼンスを示すことができます。
一方,全国的にみても放射線診断医は数が少なく,現場は慢性的なマンパワー不足に常に悩まされています。特に画像診断管理加算2以上では,翌営業日までに80%以上の読影完了やそのほかさまざまな要件が課せられています。そのため,病院経営上の理由などから生じる画像診断管理加算の無理な取得や維持は,放射線診断医の過重労働につながるという弊害も懸念されています。
今回,画像診断管理加算の歴史や今後の展望を語るだけでなく,市中病院や地方の大学病院における画像診断管理加算の取得・維持のための工夫や苦労などをさまざまな視点から語っていただきます。
まず,順天堂大学 放射線診断学講座の隈丸加奈子先生と内川 慶先生からは,1996年から開始された画像診断管理加算誕生の経緯とその歴史・変遷,そして2022年の改定の要点をご紹介いただきます。兵庫県立尼崎総合医療センター 放射線診断科の金柿光憲先生からは,市中病院の立場から画像診断管理加算2取得への取り組みや維持における工夫,その問題点をご紹介いただきます。また,福井大学医学部 放射線医学の小坂信之先生と辻川哲也先生からは,地方の大学病院の立場から画像診断管理加算3取得への取り組みや維持における工夫,その問題点をご紹介いただくだけでなく,その打開策をご提案いただいています。最後に,診療報酬に詳しい国立国際医療研究センター国府台病院の待鳥詔洋先生からは画像診断管理加算の考え方や課題,今後の展望を語っていただきます。
いずれの記事もさまざまな立場,視点から画像診断管理加算を語っていただき,画像診断管理加算を再考できる大変充実した内容になっていると確信しております。また,若手の放射線診断医の先生においては画像診断管理加算を詳しく知るよいきっかけになると思います。
私見ですが,画像診断管理加算は画像診断業務における質の向上,また病院の収益に貢献できる面でとても重要なものだと考えております。しかし一方で,画像診断管理加算の無理な取得や維持は放射線診断医への過重な負荷になり,「諸刃の剣」になりうるとも思っています。この制度にはまだ不十分な面が多くあるようにも感じています。本稿をとおして,改めて放射線診断医が画像診断管理加算の取得・維持における工夫を考えるだけでなく,その問題点を考え直し,声を上げていくきっかけになればと思っております。
鹿戸将史