麻酔2023年7月号【特集】安全管理におけるノンテクニカルスキルの重要性:航空業界と麻酔医療

  • ページ数 : 114頁
  • 書籍発行日 : 2023年7月
  • 電子版発売日 : 2023年8月8日
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内容

航空業界では、ノンテクニカルスキルの重要性を認識し発展させてきた。安全に関して航空業界から学んできた歴史がある医療や麻酔領域においても、ノンテクニカルスキルの必要性は強く求められている。本特集はすべての麻酔科医、手術室で仕事をするチームメンバーが理解し実践すべき必読の内容となっている。

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序文

巻頭言
わが国の麻酔科の進むべき方向性


日本麻酔科学会の前身である日本麻酔学会は1954年に設立され,来年2024年には設立70周年を迎える。当講座は日本麻酔学会の設立から3年後の1957年に講座としては全国で4番目に開講し,2022年に開講65周年を迎えた。ほかの医学分野と同様,麻酔科学の発展も欧米がリードしていたが,その専門性の認識から日本でも学会が設立され,1960年には厚生省(当時)による標榜医制度が始まり,1963年には学会による専門医制度が開始された。ここ20年間で会員は倍増し,現在は14,000人の会員を擁する学術団体に成長した。

ほかの診療科よりも急成長を遂げたため,比較的マンパワーが充足していると考えられ,都道府県によっては,“この人数以上の後期研修医を登録できない”いわゆる「シーリング」が課されていることからも,諸官庁がそのような認識であることが分かる。一方,外科医が麻酔を行ってきた時代に終止符を打ち,手術麻酔業務のみを行ってきた麻酔科医が周術期の患者管理に加え,救急医療や集中治療にも携わり,さらに国としても問題視している慢性疼痛医療や緩和医療にも参画できるように,やっと道筋が見えてきている,というのが私の認識である。多くの大学病院が,所属する麻酔科医師のみでは麻酔管理ができていない現状,さらにごく一部ではあるがフリーランスという形態を取り,比較的高額な麻酔料金を得ている麻酔科専門医がいることからも,まだまだ麻酔科医が不足しているのは明らかである。

最近,タスクシフトや医師の働き方改革開始に合わせたかのように,周麻酔期看護師(perianesthesianurse:PAN),手術看護認定看護師(certifiednurse:CN),そして特定医行為研修修了看護師なる資格が次々と認められ,その研修を修了した看護師の多くがわれわれ麻酔科医と一緒に働く機会が増えてきている。術前・術後の回診や,指示書に従った(認められた)医行為の施行は,われわれ麻酔科医の過労を防ぎ,そのぶん重要な麻酔管理場面に集中できることから,手術を受ける患者の安全性に寄与すると考えられる。

では,主に米国で存在するいわゆる麻酔看護師(certified registered nurse anesthetist:CRNA)は日本に適応できるだろうか。米国のCRNAの歴史は古く,1931年には国家資格としてのCRNAが誕生しており,現在では50,000人以上いると聞く。麻酔科専門医の約2倍である。都市部では麻酔科専門医が,地方では麻酔看護師が主に麻酔を行っている現状を見ると,やはり麻酔科医不足を補っている実態があると推測する。日本では医師法があるため,絶対的医行為を看護師を含め多職種医療者が行うことはできない。つまり,胃切除術を看護師ができないのと同様,気管挿管や硬膜外麻酔を看護師が行うことはできない。

今回,日本でも導入された上記の資格をもってしても,手順書に従って,認定された看護師が認められた医行為を行うことは,担当する患者に説明すべきである。米国では,CRNAが麻酔を担当することは患者の同意が必要であり,外科医は,緊急手術の対応などで夜寝ていない場合,“寝不足の自分が執刀医でいいか?”と患者に説明することになっている。インフォームドコンセントの質の違いに驚かされる。

さて,著者が医師になった1988年には,実は附属病院手術室内に麻酔科専従の看護師が10名程度いた。初期研修もなく,見学型の臨床実習がメインであったその当時では,若手の麻酔科研修医よりも麻酔管理に習熟した看護師がいた。ここでいう麻酔管理とは挿管・抜管を意味するわけではなく,麻酔器の取り扱い,麻酔手技の介助,血圧低下や大量出血などの危機管理を意味する。その当時の麻酔科研修医にとってはまさに天使のような存在であった。その後,手術室看護師不足の問題から吸収合併されてしまったが,今も存在していれば,今回のタスクシフトや働き方改革において,とても参考になるモデルケースであったと残念でならない。

今後,さらに超少子化高齢化が進み,人口減少に拍車がかかり,都市部と地方の差がより大きくなる近い将来,われわれの急性期医療はどのような方向に進むべきかを念頭に置き,育成や人材配置を検討すべきである。“麻酔科専門医に麻酔をしてほしい”と国民が安心して手術を受けられる環境をさらに整えていくべきであると考える。


(札幌医科大学教授 山蔭 道明) 

目次

巻頭言

わが国の麻酔科の進むべき方向性 山蔭 道明

【特集】安全管理におけるノンテクニカルスキルの重要性:航空業界と麻酔医療

緒言とまとめ:安全な手術室業務実施のためのノンテクニカルスキル習得トレーニング 磯野 史朗

航空業界の安全性向上の歴史:何が貢献したか?何が達成されていないか? 豊田 隆一

安全のためのパイロットのコンピテンシーの導入とノンテクニカルスキル 豊田 隆一

医療安全におけるノンテクニカルスキル重視の歴史と現状 相馬 孝博

麻酔医療におけるノンテクニカルスキル重視の歴史と現状 木山 秀哉

多職種連携による麻酔科診療の安全性の向上を目指して 宮坂 清之ほか

症例集積研究

専門施設におけるCOVID-19患者の概要と治療経過:1‒7波を通じて 小田 裕ほか

小児の脊椎手術中に生じた運動誘発電位(motor evoked potential:MEP)消失に先行する急激な血圧上昇に関する研究 仁田畑和紀ほか

症例報告

気腫性膀胱炎による膀胱破裂から偽性腎不全を呈した1症例 大井智香子ほか

術後悪性高熱症を疑い悪性高熱症関連遺伝子検査を施行した1症例 小西 華子ほか

全身麻酔下脳血管内治療後の抗凝固療法中にPONVによりマロリー・ワイス症候群から出血性ショックに至った1症例 平島梨容子ほか

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書籍情報

  • ISBN:9784014007207
  • ページ数:114頁
  • 書籍発行日:2023年7月
  • 電子版発売日:2023年8月8日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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