特集①眼瞼の良性腫瘍 処置のコツとポイント

眼瞼の良性腫瘍の治療の目的は，必然的に眼瞼の悪性腫瘍の治療と異なり整容的なものである．悪性腫瘍であればすべてを切除することが目的となるため，眼瞼の機能温存は第一目標とはならない．本来残らないはずであった眼瞼の機能をどのように残せるか，そのために再建をどのようにするかがトピックとなるが，良性腫瘍では機能的に正常である眼瞼の状態を維持したままにする必要があり，機能障害をいかに抑え，整容的に満足を得るかがポイントとなる．このため悪性腫瘍への対応とは考え方を変えてアプローチする必要がある．とはいえ，眼瞼の良性腫瘍への対応が可能であれば外来診療の幅はかなり広がると思われる．今回のテーマは各分野のスペシャリストにお願いした．本稿が諸兄諸姉の診療の一助になれば幸いである．

プランナー 鹿嶋友敬

特集②甲状腺眼症 診断から治療まで

甲状腺眼症は，眼球突出，複視，眼瞼異常，視力低下など，さまざまな眼症状を来す疾患です．原因としてはバセドウ病が最も多いのですが，バセドウ病が治っても眼症状は残ってしまいます．後遺症を残さないためには発症初期から眼科的な治療が必要な場合があり，内科との連携を要する疾患です．

眼症には活動期，非活動期があり，活動期の消炎治療が重要です．活動性の判定にはMRIが有用であり，画像診断は眼症診療には欠かせない検査です．MRIは消炎治療の効果判定にも用います．

非活動期で後遺症のある場合，手術治療の適応となります．手術は外眼筋手術，眼瞼手術，眼窩減圧術など多岐にわたります．

今回の企画では，甲状腺眼症診療に携わる各診療科の先生方にそれぞれの視点から眼症診療のポイントについて解説していただきます．この特集が明日からの甲状腺眼症診療の一助になれば幸いです．

プランナー 井上吐州

特集③視神経炎の治療 －最新の潮流－

神経眼科領域で視神経炎は比較的に発生頻度が高く，急速に重篤な視機能低下を生じる疾患として認識されている．視神経炎の発生原因や機序は不明（特発性視神経炎）のものが多く，経過中に再発や他の中枢神経障害を合併する多発性硬化症の視神経炎が混在していた．いずれも治療はステロイドパルスで多くは視機能改善するが，経験的に約10 ％は無効で重篤な視機能障害を残した．2004年，この難治症例の半数以上に自己抗体の抗アクアポリン（AQP）4抗体が陽性と判明した（抗AQP4抗体陽性視神経炎）．また近年，再発を繰り返す症例に自己抗体の抗ミエリン乏突起膠細胞糖蛋白（MOG）抗体の陽性が明らかになった（抗MOG抗体陽性視神経炎）．これら視神経炎の臨床的な特徴はそれぞれの発生機序の差，特に免疫学的背景の違いに基づいて発生するため，治療法もそれに対応した配慮が必要になる．

今回の特集では，3人の執筆者に，まず各視神経炎の概要を解説し，発生急性期の視機能改善と慢性期の再発抑制を目指す具体的な治療法とその効果について述べてもらうこととした．読者の早期からの的確な視神経炎治療に役立てば幸いである．

プランナー 中尾雄三