特集①：スマートフォンが変える！ 眼科検査

近年，スマートフォンを用いた眼底撮影や前眼部撮影の有用性が国内外から報告され，眼科診療への臨床応用が広がっています．また，眼科領域に限らずさまざまな診療科においてもスマートフォンが活用され，皮膚科領域では遠隔医療アプリも開発されているようです．診療記録を正確に残すという作業は極めて重要であり，正しい診断・適切な治療に必須であるばかりでなく，治療効果を経時的に比較する際にも極めて重要な情報となります．しかし実際の医療現場では，寝たきり患者や乳幼児をはじめ眼底撮影や前眼部撮影が極めて困難な症例に遭遇することは珍しくありません．また医療過疎地では撮影装置を有していない施設も多々あります．このような状況においてスマートフォンを使用した撮影記録はたいへん有用であり，近年のモバイル端末の進化も相まって医療情報として十分な画質が得られるようになってきました．このような潮流は本邦の遠隔地医療を発展させる原動力となりますし，眼科医がほとんど存在しないような発展途上国の眼科診療においても大きな福音をもたらす可能性を秘めています．今回この企画を行うにあたり，当領域で活躍されている先生方に執筆をお願いしました．前眼部診療，後眼部診療，小児診療，ロービジョンケアのパートに分け，それぞれ分かりやすく解説していただいております．明日からの診療に活用できる有用な情報が満載ですので，ぜひご一読ください．

プランナー
大鹿哲郎　筑波大学医学医療系眼科

特集②：目からウロコのオルソケラトロジー 賛成VS反対

オルソケラトロジーレンズが米国FDAで認可されてから約14年，本邦の厚労省で認可されてから約7年が経過した．外科的侵襲を伴わない新しい屈折矯正手段として世界的に普及してきたが，近年では学童の近視進行抑制効果が多数報告され，特にアジア諸国において学童への処方が顕著である．

本邦では2009年にガイドラインが策定されたが，年齢制限が明記されたため，学童への処方は原則認められていない．また本治療は意図的に角膜形状を変化させるがゆえ，角膜障害などの合併症や高次収差に起因する光学的問題も考慮しなければならない．過度の矯正や杜撰なレンズケアは感染性角膜潰瘍を引き起こす．したがって本治療の適応に関しては，小児はもちろんのこと成人に関しても未だ賛否両論がある．

国内学会でも本治療に関する演題に対して侃々諤々の議論が繰り広げられてきたが，日本人のデータもかなり蓄積し，改めて本治療の適否や適応範囲について見直す時期に入ってきたと思われる．

そこで本邦のコンタクトレンズ診療を牽引する4人の先生方にお願いし，オルソケラトロジーの成人および学童への処方について忌憚のない意見を拝聴する特集を企画した．賛成派にも反対派にも深い根拠に基づいた考え方がある．屈折矯正手術しかり，治療を採用するか否かは個々の医師のphilosophyによるところが大きく，画一的な答えはないが，ぜひ先入観や偏見を取り除いてエキスパートの考え方に触れてほしい．そして，共感できる部分を見出し，今後の診療に生かしていただければ幸いである．

プランナー
平岡孝浩　筑波大学医学医療系眼科

特集③：『この所見』を見たら『この疾患』を見逃さない！キーワードで覚える『専門外』眼科疾患

眼科で扱うのは直径2.5cm程度の小さな器官なのに，膨大な量の知識が要求されます．自分の専門とする分野や一度ひどい目にあった疾患，発表をした疾患のことはよく知っていても，専門外となるとおぼつかなくなるのは私をはじめ多くの先生に当てはまることだと思います．あなたも，患者さんを診察室に残して，後ろでこっそり教科書やスマホのお世話になった経験もあるでしょう？そんな時に，役立つキーワードがあればどれだけ助かるかと思い，本特集を企画しました．まず初回は，角膜感染症とぶどう膜炎です．専門医試験にも役立てば，プランナーとして望外の喜びです．

プランナー
瓶井資弘　愛知医科大学眼科学教室