特集①：涙道手術最新版

涙道閉塞による眼脂，流涙は深刻な眼不快感を生じさせるだけではなく，視機能をも障害する．自然に治癒する可能性はないため，手術治療を行わなければ生涯にわたりこれらの症状に悩まされることになる．手術治療には涙道の確実な再建および導涙機能の改善とともに，近年では低侵襲性も要求されてきている．涙道閉塞の部位にはバリエーションが多く，それぞれの病型に適した術式選択が必要であることはもちろんであるが，閉塞部位および閉塞距離により難易度に大きな差があることも事実である．また，患者背景は病歴の短い若年者から罹病期間の長い高齢者までさまざまであり，高齢者では抗凝固薬などを内服している症例が多いことも状況を複雑にしていると考えられる．これらの多様なニーズに答えるべく涙道手術を行っている施設では新しい術式の開発や従来の術式の改良が行われている．

本特集ではこれらを涙道手術最新版としてまとめてみた．各術式の特徴と適応を知っていただければ幸いである．

プランナー　井上 康
井上眼科

特集②：斜視のアジャスタブル手術

斜視手術をより正確に行い，患者満足をえるためにアジャスタブル手術が行われている．しかし，通常の手術以上の時間がかかることやアジャストを行う時期の問題，最終的な結果から，行う医師は限られている．これからアジャスタブル手術を行おうという術者に対して，症例の選択方法，さまざまな手術方法についてそれぞれの立場から考えを述べていただく．

プランナー　佐藤美保
浜松医科大学眼科学教室

特集③：適応拡大： ボトックス^Ⓡ斜視への応用

ボトックス^Ⓡは1996 年に眼瞼けいれんに，2000年に片側顔面けいれんに適応となり，2015 年6 月から斜視への適応拡大へとつながった．ボトックス^Ⓡは本来，乳児内斜視への応用が最も期待されたが，現在は12 歳以上が適応となっている．当院での良い適応は急性内斜視，自然軽快を期待される麻痺性斜視（特に外転神経麻痺），斜視手術を迷う水平斜視症例などだろうか．このボトックス^Ⓡの斜視への応用は始まったばかりの治療であり，熟練した者はいない．皆，初心者である．思いもよらぬ副作用に遭遇するであろうし，症例数の増加に伴いコツもつかめるであろう．

本特集は，そのなかでも，とりわけボトックスⓇの斜視への応用に秀でていると思われる先生方に，自験例を用いてコツと副作用，実際の手技における注意点等についてそれぞれに述べていただくことにした．明日からの臨床に役立つ内容であると確信している．

プランナー　木村 亜紀子
兵庫医科大学眼科学教室