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臨牀消化器内科 2019 Vol.34 No.7 増刊号 炎症性腸疾患診療のupdate
鈴木 康夫 (監修) / 臨牀消化器内科編集委員会 (編集) / 日本メディカルセンター
商品情報
内容
【特集】炎症性腸疾患診療のupdate-診断・治療の最新知見
IBD 診療はこの10 年間で大きな飛躍を遂げ,さらに今後も新規薬剤導入を中心とした診療の発展は加速度をいっそう増すと思われ,“今”という時代はまさに,過去の診療体系とは大きく異なる新たなIBD 診療体制に突入する時代の分岐点にあるといっても過言でない(序文より抜粋).
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序文
"炎症性腸疾患30万人"時代の到来
本号の「Ⅰ 炎症性腸疾患の疫学―本邦におけるIBDの患者動向」をご執筆いただいた,東邦大学医学部社会医学講座衛生学分野教授 西脇先生のグループが,"難治性炎症性腸管障害調査に関する研究班"において3年前に難病疫学研究班との共同研究で明らかにした本邦の炎症性腸疾患(inflammatory boweldisease;IBD)患者数は,予想を大きく超える急激な増大を示す結果であった.日本は世界でも有数のIBD患者を抱える国として,間近に"IBD患者30万人(潰瘍性大腸炎患者約21万人,クローン病患者約7万人)"の時代を迎えようとしており,IBD患者数の増大傾向はおそらく今後も当分は持続すると予測される.IBDは以前考えられていたような希少疾患ではもはやなく,消化器医にとっては日常診療で遭遇し対処しなければならない疾患群の一つになったといえる.
従来から患者数が多い欧米諸国に加え,患者数が少ないとされてきた日本を含む東アジア・南米諸国を中心とした世界規模での患者数増加によって,病態解明研究は飛躍的に推進されている.その結果,複雑な腸内細菌叢解析から腸管免疫・再生に至る病態形成プロセスが次々と分子レベル・遺伝子レベルで明らかにされつつある.そしてその成果に基づき薬剤開発の競争は激化し,分子標的薬といった従来治療薬とは作用機序の大きく異なる新規薬剤が次々と臨床現場に登場しようとしている.患者にとっては治療選択肢が多くなったことは大いに喜ばしいことに違いないが,治療実施担当医にとっては各種治療法を適切に選択・運用する際大いに頭を悩ますところで,次々と登場する新規薬剤の特性と薬効を正確に理解することは簡単なことではない.
一方,テクノロジーの飛躍的進歩により各種画像診断技術が大いに進歩し,カプセル内視鏡・バルーン内視鏡・CT診断・MRI診断・超音波診断など,X線検査・内視鏡検査という従来の消化管診断法の診断能力を超える新たな診断手段が実地診療に取り入れられつつある.さらには,実用化が進むAIを用いた自動診断技術がIBD診療にも応用が試みられようとする時代を迎えている.また,カルプロテクチンに代表される,画像診断に代わり病勢を反映する各種バイオマーカーも臨床応用されようとしている.
強力な治療効果を発揮する新規薬剤が登場し,従来診断困難とされた小腸病変を含めた全消化管に対し精緻な病変評価が可能となった現在,治療効果判定基準には従来の"臨床的治癒"から"腸管粘膜治癒"へ,さらには"腸管病変部の組織学的治癒""分子レベル治癒"へと治療レベルの質向上がはかられようとしている.そのため治療に際しては,各種画像診断を適切に選択し,いかにタイミングよく実施し病勢を判断するのかが問われてもいる.
以上のように,IBD診療はこの10年間で大きな飛躍を遂げ,さらに今後も新規薬剤導入を中心とした診療の発展は加速度をいっそう増すと思われ,"今"という時代はまさに,過去の診療体系とは大きく異なる新たなIBD診療体制に突入する時代の分岐点にあるといっても過言でない.
そのような時代背景にあって,IBD診療のupdateを解説することを趣旨に本号企画がなされたといえる.しかし,従来から実施されてきた治療法や各種画像診断を十分に理解・使いこなしてこそ,初めて新規治療薬や新規画像診断は実施可能となることはいうまでもないことである.そこで,疫学研究・病態解明に近づく最新研究成果,そして従来の画像診断・治療法から最新治療法・画像診断に至るIBD診療のすべてを網羅する本号を企画させていただき,それぞれの分野のエキスパートの先生方に実地医家の先生方にわかりやすい解説の執筆をお願いした.IBD"今"の時代にふさわしい最新知見をすべて網羅した本書が診療に大いに役に立つことを期待する.
2019年4月
東邦大学医療センター佐倉病院IBDセンター
鈴木 康夫
目次
Ⅰ 炎症性腸疾患の疫学
本邦におけるIBDの患者動向
Ⅱ 炎症性腸疾患の病因・病態
1 遺伝子関連
2 炎症性腸疾患の病態
3 炎症性腸疾患と腸内細菌
Ⅲ 炎症性腸疾患の検査法
1 X線検査
2 大腸内視鏡検査
3 小腸バルーン内視鏡検査
4 CT・MRI
5 腹部超音波検査
6 炎症性腸疾患の病理検査
7 便中カルプロテクチン・ヘモグロビン検査
Ⅳ 炎症性腸疾患の診断
1 潰瘍性大腸炎の診断基準
2 クローン病の診断基準
3 潰瘍性大腸炎とクローン病との分類不能症例
4 炎症性腸疾患における腸管・腸管外合併症
5 炎症性発癌とサーベイランス
Ⅴ 炎症性腸疾患の内科治療
1 炎症性腸疾患治療指針・ガイドライン
2 5‒ASA(5‒アミノサリチル酸)製剤
3 副腎皮質ステロイド
4 免疫調節薬―アザチオプリン(AZA),6‒メルカプトプリン(6‒MP)
5 免疫抑制薬―シクロスポリン,タクロリムス
6 抗TNF‒α抗体製剤―インフリキシマブ
7 抗TNF‒α抗体製剤―アダリムマブ
8 抗TNF‒α抗体製剤―ゴリムマブ
9 抗IL‒12 p40抗体―ウステキヌマブ
10 JAK阻害薬―トファシチニブ
11 抗接着分子治療―ベドリズマブを中心に
12 抗菌薬療法
13 血球成分除去療法
14 栄養療法
15 漢方薬
16 内視鏡的拡張療法
17 サイトメガロウイルス(CMV)腸炎
18 粘膜再生治療法
Ⅵ 炎症性腸疾患の外科治療
1 炎症性腸疾患の外科治療
2 クローン病肛門病変の治療
3 術後pouchitis(回腸囊炎)の診断と治療
4 クローン病の術後再発と予防法
Ⅶ 妊婦・小児の炎症性腸疾患の診療
1 炎症性腸疾患患者の妊娠症例
2 小児炎症性腸疾患に対する治療指針
Ⅷ トピックス
1 大腸カプセル内視鏡
2 炎症性腸疾患診断におけるAI導入の可能性
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書籍情報
- ISBN:9784004003407
- ページ数:261頁
- 書籍発行日:2019年5月
- 電子版発売日:2019年6月5日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:2
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