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- Annual Review 神経 2017
商品情報
内容
大隈栄誉教授のノーベル生理学・医学賞受賞で脚光を浴びた「オートファジー」に関するトピックスをはじめ、再生医療の最新知見や酸化ストレスの数値による評価など、本書ならではのコンテンツは必読!
序文
序
2010年から我々の編集となり,8年目の本書をお届けできる年となりました.
今年は例年とは違った意味で,この本に込める編集者一同の熱い思いがあります.だれも予想しなかった事ですが,我々の仲間であり,本書の編集をずっと一緒に行ってきてこの号の編集もして下さった,川原信隆先生がこの一年の間にご逝去されました.元気にこの号の編集をして車で横浜に戻られた編集会議から10日以内の出来事でした.残念な思いとともにご冥福をお祈りいたします.
本書の内容に関しては,例年通り最新の情報を含めつつ,神経疾患を診ていらっしゃる先生方に興味を持っていただける内容を考えてみました.最近の特色として目立つ点がいくつかあります.神経系の研究の歴史を見ていると,神経細胞(ニューロン)が主体でまずはそこに研究が集中しますが,一段落すると周りの環境としてのグリアなどに研究が向く時期があり,それも一段落するとまたニューロンに戻ってくるという周期です.最近またニューロンからグリアにという傾向が見られる中,そのような傾向が特集の中にも見られています.もう一つは日本人のノーベル賞受賞が続く中,autophagyに関連した項目も今回含まれています.ノーベル賞が決まる半年以上前に編集会議を開いていますので,それを意識したものではありません.ここで取り上げた筋肉のオートファジーは,20年以上前から知られていた事実であります.もう一つのノーベル賞で,国の方針としても力を入れている再生医療関係の項目も散見されます.今後,発展が期待される分野でしょう.さらに,ヒトの脳を生体のまま見る事ができるとして,多くの画像検査が臨床でも使用されています.今回は酸化ストレスを数値で評価するという新しい検査を紹介いただきます.これら以外にも,新しくて興味深い内容を掲載しております.
上述の内容が日々多忙を極めていらっしゃる先生方にとって,最新の病態生理の理解の一助になるものと確信しております.日々の臨床に本書を大いに活用していただければ,故川原信隆先生を含めた編集者一同,喜びとするところです.また,今後は新しく杏林大学脳外科学講座の塩川芳昭先生に参加いただき,皆さんに喜んでいただける書を継続的に企画していきたいと思っております.
2017年1月
編集者一同
目次
I.Basic Neuroscience
1.神経生理
(1)Transfer entropy を用いた神経回路の解析
A. 情報理論から見る因果性:transfer entropy
B. TEを用いた神経回路解析の研究例
(2)恐怖記憶の神経機構
A. 恐怖記憶の神経回路
B. 恐怖記憶解析の実験手法
C. 恐怖記憶の分子基盤
2.神経病理
(1)アストロサイトパシーとしての脱髄疾患
A. 炎症・脱髄におけるアストロサイトの役割
B. 視神経脊髄炎
C. 多発性硬化症,Baló病
D. その他の脱髄性疾患
(2)リン酸化αシヌクレインの局在
A. 正常脳におけるαシヌクレインの局在と機能
B. レビー小体病におけるリン酸化αシヌクレインの蓄積
C. 多系統萎縮症におけるリン酸化αシヌクレインの蓄積
D. 前シナプスにおけるαシヌクレインの異常
E. αシヌクレインのリン酸化の意義
3.生化学(分子生物学)
(1)鉄代謝と神経疾患
A. 生体内の鉄サイクル
B. 中枢神経系の鉄代謝
C. 細胞内の鉄代謝調節
D. NBIAの臨床,原因蛋白質の細胞内局在と機能
(2)自己貪食空胞性ミオパチーとオートファジー
A. オートファジー(自己貪食)
B. 自己貪食空胞性ミオパチー
C. ポンペ病
D. AVSF関連ミオパチー
E. RV関連ミオパチー:RVを伴う遠位型ミオパチー(GNEミオパチー)
4.画像
(1)タウPETイメージングの最近の進歩
A. タウPETプローブの開発状況
B. Alzheimer病におけるタウPET研究
C. Alzheimer病以外の疾患への応用
(2)新たな拡散MRI解析;DKI,NODDI,MR g-ratio,コネクトーム解析
A. 新たな拡散MRI
B. 構造的コネクトーム解析
C. MR g-ratio
D. 展望
II.本年の動向
1 q-Spaceミエリンマップ法による髄鞘の可視化
A. 髄鞘を可視化する既存技術:MTR法とMWF法
B. q-Spaceミエリンマップ法
C. q-Spaceミエリンマップ法の将来展望
2 精神・神経疾患特異的iPS細胞を用いた創薬研究
A. 疾患特異的iPS細胞の樹立と病態再現,病態解析
B. 治療へのアプローチと薬剤スクリーニングへの応用
C. 病態解析と治療開発のための新技術の開発
D. 今後の展望
3 東日本大震災被災者における認知機能と日常生活動作の前向きコホート研究
A. はじめに
B. 発災−避難
C. 避難所
D. 応急仮設住宅
E. 災害公営住宅
4 ジストニアと基底核・小脳
A. ジストニアの定義,分類
B. 新しいジストニア原因遺伝子と予想される病態
C. ジストニアと小脳の関連
5 神経変性疾患の酸化ストレスイメージング
A. 酸化ストレスと神経変性疾患
B. 62Cu-ATSM PETによる酸化ストレスイメージング
C. ミトコンドリア病における酸化ストレスイメージング
D. パーキンソン病における酸化ストレスイメージングALSにおける酸化ストレスイメージング
E. 今後の展望
6 プルキンエ細胞を作る
A. 小脳の発生
B. 多能性幹細胞から神経細胞の分化
C. ヒト多能性幹細胞から小脳神経細胞の分化誘導
7 自家骨髄間葉系幹細胞による脊髄の再生医療―医師主導治験による実用化―
A. 脊髄損傷および脳梗塞に対する医師主導治験
B. 治験薬の概要
C. 治験の概要
D. 先駆け審査指定制度の対象品目として指定
8 脳脊髄液の産生・吸収の最新知見とiNPH
A. 脳組織間液=脳リンパ液
B. 脳組織間液の解剖学的吸収経路
C. 血管周囲腔(perivascular space)の組織解剖の新知見
D. 脳脊髄液の産生と吸収:最近の知見
E. 脳組織間液と脳脊髄液の相互交換脳リンパ排液の障害による病態仮説
9 フローダイバーター(FD)による新規脳動脈瘤治療
A. 構造
B. 展開
C. 適応
D. 効果
E. 合併症
III.各種疾患
1.感染症
(1)EBウイルスと多発性硬化症:発症リスクとしての環境因子を標的とした治療の可能性
A. MSでのEBVの関与の証拠
B. 伝染性単核症と抗myelin oligodendrocyteglycoprotein(MOG)抗体
C. MSでのB細胞を標的とした治療
D. B細胞を標的とした治療で明らかになったこと
E. Rituximab治療で注目されたCD20+T細胞
F. SPMSとB細胞
G. B細胞と自然免疫
(2)蚊媒介性ウイルス感染症の最近の動向と対策
A. 蚊媒介性ウイルス感染症
B. 日本脳炎
C. デング熱
D. チクングニア熱
E. ジカウイルス感染症
2.脳血管障害
(1)塞栓源不明脳塞栓症の診断と治療
A. 塞栓源不明脳塞栓症の概念
B. 定義と診断
C. 臨床像
D. 治療
(2)脳卒中と糖代謝異常・脂質代謝異常の疫学:久山町研究
A. 久山町研究
B. 心血管病危険因子の有病率の時代的推移
C. 脳卒中罹患率の時代的推移
D. 糖代謝異常,脂質異常症が心血管病発症に及ぼす影響
3.脳腫瘍
(1)脳腫瘍の免疫療法
A. 中枢神経系の免疫学的環境
B. 脳腫瘍の微小環境と免疫チェックポイント阻害療法
C. 脳腫瘍に対するワクチン療法
(2)IDH1変異神経膠腫に対する新たな治療戦略
A. IDH1変異とグリオーマ分類
B. IDH1変異が誘導するグリオーマ進展メカニズム
C. IDH1変異グリオーマに対する治療エビデンス
D. IDH1変異腫瘍に対する新たな治療法の展望
E. 今後の展望
4.外傷
(1)てんかんと自動車運転をめぐる諸問題に対するevidence-based approach
A. てんかんのある人の自動車事故危険率
B. 運転適性に求められる無発作期間
C. 初回発作後の再発率と事故危険率
D. 医師による強制通報制度の効果
(2)小児頭部外傷の最新の動向
A. 疫学
B. CT適応
C. 脳振盪
D. 抗痙攣薬
E. Abusive head trauma(AHT)重症頭部外傷治療ガイドライン
F. 神経集中治療におけるパラメータ
G. 外科的治療(減圧開頭術)の有用性
H. リハビリテーション
5.変性疾患
(1)拡散尖度画像によるパーキンソン症候群の鑑別
A. DKIの原理
B. DKIの基礎研究
C. DKIの臨床研究
D. パーキンソン症候群の画像診断とDKI
(2)運動失調症の自然歴(自然史)研究
A. はじめに
B. 多系統萎縮症
C. 遺伝性脊髄小脳失調症
6.中毒・代謝疾患
(1)糖尿病と認知症
A. 糖尿病と認知症の疫学
B. 糖尿病とアルツハイマー型認知症の分子病態
C. 糖尿病と認知機能障害
D. 糖尿病における脳画像解析
E. 糖尿病に伴う認知機能低下:新しい臨床概念の提唱
F. 糖尿病薬による認知症治療の可能性
7.脱髄・免疫性疾患
(1)視神経脊髄炎の分子標的治療
A. 抗CD20抗体製剤
B. 抗補体C5抗体製剤
C. 抗IL-6受容体抗体製剤
D. その他
(2)多発性硬化症の「炎症・変性」と進行型多発性硬化症に対する治療の最新動向
A. MSと関節リウマチに共通した作業仮説「炎症と変性」
B. MSにおける「炎症」
C. MSにおける「変性」
D. 進行型MS治療の最新情報
E. NMOの「炎症と変性」・MSとの違い
8.末梢神経障害
(1)ギラン・バレー症候群の新規治療の動向
A. 現在の標準治療
B. 現行治療の問題点
C. 過去に臨床試験が試みられた新規治療
D. 現在開発中の新規治療
E. 今後の展望
(2)iPS細胞ハイブリッド型人工神経による末梢神経再生
A. 末梢神経欠損に対する治療法
B. 臨床で使用できる人工神経
C. 我々が開発した人工神経
D. iPS細胞ハイブリッド型人工神経
(3)抗contactin1・neurofascin 155 IgG4 抗体陽性CIDP
A. Ranvier絞輪部の構造
B. Ranvier絞輪部関連分子の機能
C. Ranvier絞輪と免疫介在性ニューロパチー
D. 抗CNTN1抗体陽性CIDP
E. 抗NF155抗体陽性CIDPとCCPD
F. 獨協医科大学での経験
G. 治療
9.神経筋疾患
(1)免疫性筋疾患とHLA
A. 重症筋無力症
B. MGの病型とHLA
C. MGの自己抗体とHLA
D. 炎症性筋疾患
E. 炎症性筋疾患とHLA
F. 壊死性ミオパチーとHLA
(2)神経筋疾患の超音波診断
A. 神経筋USの進歩
B. USによる末梢神経疾患の診断および評価
C. USによる骨格筋疾患の診断および評価
D. USによる運動ニューロン疾患の診断および評価
10.自律神経疾患
(1)心不全における交感神経系
A. 心不全における交感神経異常の原因,循環調節機構と中枢の関与
B. 心肥大と心臓交感神経の幼若化
C. 心不全における心臓交感神経の解剖学的・機能的変化
D. 心不全に対する自律神経介入による治療
(2)情動反応と自律神経活動
A. 情動反応と自律神経反応
B. 情動反応と自律神経機能をつなぐ神経基盤
C. 情動に関わる求心系の知覚
D. アレキシサイミアと自律神経障害からみた情動
(3)中枢と末梢を結び付ける神経科学的アプローチ―脳と体から「こころ」を探る
A. 神経科学研究のツールとしてのオプトジェネティクス
B. 光は動物の行動・情動を調節できるのか?
C. 脳と体を結ぶには
11.機能性疾患
(1)高周波振動(HFO)とてんかん
A. てんかん性HFOの特徴と意義
B. 非てんかん性・生理的HFOとてんかん性HFOの識別
C. 複数脳部位・電極間のHFOの関係性
D. HFO自動検出技術の開発
E. 頭皮脳波や脳磁図によるHFOの非侵襲的記録
F. 小児てんかんとHFO
G. 広帯域脳波における発作時のHFOと直流電位の関係
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書籍情報
- ISBN:9784498228764
- ページ数:282頁
- 書籍発行日:2017年1月
- 電子版発売日:2017年11月24日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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