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- 羽田野 義郎
- 抗菌薬ドリル 感染症診療に強くなる問題集
商品情報
内容
感染症の診断や抗菌薬の選び方・やめ方,アレルギー,感染対策など,感染症診療の基盤になる考え方が問題を解きながら楽しく身につく!やる気をなくすほど難しくはなく,笑い飛ばせるほど簡単じゃない,珠玉の73問に挑戦しよう!
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序文
序
2018年4月号のレジデントノートの特集からはや1年,「抗菌薬ドリル」が今回大幅にパワーアップして書籍として戻ってきました.簡単だった!難しかった!といろいろご意見を伺いましたが,今回も初期研修医が終わるころまでに身につけてほしい臨床感染症の基本を中心にまとめられています.
医療は日々進歩し続けていますが,近年の感染症周辺の変化のスピードは非常に速く,そしてそのインパクトは大きいものとなっています.
薬剤耐性アクションプランをはじめとした国としての取り組みにみられるように,耐性菌が当たり前になったこの時代を生き抜く,すなわちこれ以上の耐性菌の出現を抑えて,今ある抗菌薬を長く使えるようにするために,「必要なときに必要なだけ抗菌薬を使う」という基本に忠実な感染症診療の重要性が非常に高まっています.
感染症は臓器横断的な疾患で,どの専門科であっても必ず遭遇する疾患です.残念ながら感染症専門医は決して多くはありませんが,この時代を生き抜くには早期からの体系的な教育,およびトレーニングが重要であることは言うまでもありません.とは言え,学生時代から大量の微生物名を覚えるのが大変で...という方も少なくないと思います.しかしながらそうは言っていられないかもしれない(?)データを1つご紹介しましょう.オランダの医学部4年生を対象にした抗菌薬処方に関するeラーニングコースの評価をした研究では,実に74%の学生が抗菌薬処方に不安がある,または非常に不安があると答えています(このコース終了後に37%に低下).日本にそのままあてはまるかどうかはわかりませんが,医師だけでなく,医学生をはじめとした医療系学生の方たちへの抗菌薬使用に関する講義や情報提供はより必要なのかもしれません.
抗菌薬がほかの薬剤と決定的に違う特徴があるとすれば,それは「人体と体内に存在する微生物の両方,そして環境にも影響を与える」ということです.抗菌薬を使用すれば患者さんは治りますが,その一方で体内には耐性菌の出現のリスクが残り,それがほかの患者さんに伝播します.また環境中では,例えば農業や畜産業の世界でも抗菌薬は使用されています.微生物の側からみれば,生き長らえるために耐性機構をもつのは当然のことで,それはヒト同様の進化の過程をたどっています.微生物との戦いにおいてヒトは,ペニシリンとそれに続く抗菌薬の開発により一時的に優位に立ちましたが,その後微生物の進化に対し新たな抗菌薬開発が手詰まりの状況となっています.抗菌薬は「使えば使うほど使えなくなる」という特殊な薬剤であり,新たな開発も困難な状況となりつつある現在,今ある抗菌薬を大事に使うこと(使わないという判断も含めて)が全医療者に求められています.
レジデントノートでの特集のときと同様,非常に重要ですのでくり返します.私自身もそうでしたが現場で困っている皆さんは特に,「とりあえず抗菌薬の使い方がわからないので抗菌薬について教えてください」となりがちです.また,想定される微生物の議論が抜け落ちてしまい,疾患と抗菌薬を線結びで覚えてしまう傾向があります(例:肺炎-セフトリアキソンなど).同様のことは軽症か,重症か,またはCRPが非常に高いか否か,でも言えます(軽症-セフトリアキソン,重症-メロペネムなど).
感染症診療を行ううえで,考えるロジックは常に同じです.それは,患者さんのプロブレムに対する鑑別診断に感染症があがったときに,「背景,臓器から想定される原因微生物を想定して抗菌薬を選択する」ということです.当然,非感染症であれば抗菌薬は不要ですし,想定される原因微生物をカバーできていれば,正解はいくつもあります(そのなかでなるべくスペクトラムの狭い抗菌薬を選択します).すなわち,最も重要なのは病歴聴取や身体診察を丁寧に行うことであり,抗菌薬の知識はあくまで感染症診療を行ううえでの一部分であることを強調しておきたいと思います.病歴聴取や身体診察にも当然トレーニングが必要ですので,初期研修から後期研修中までにトレーニングすることを強くお勧めします.
本書の筆者の皆さんは,臨床の最前線で診療を実践されている方々で,その「臨床に使える知識」をドリルとし,問題を解きながらそれらが身につくようにしています.
本書が医学生や初期研修医,基本をおさらいしたい非専門医はもちろんのこと,昨今臨床推論の教育が進んでいる薬学部学生,薬剤師などメディカルスタッフの方々の入門書となれば幸いです.
2019年1月
羽田野 義郎
目次
序
解答記入用紙
略語一覧
1.これだけは覚える! 感染症診療に必要な微生物の知識
グラム染色に基づいて細菌を分類しよう
ヒトの常在細菌叢と病院環境中の細菌叢を理解しよう
患者背景から原因菌を考えよう
免疫異常ごとに微生物を分類しよう
耐性菌を理解しよう
Advanced Lecture 抗菌薬の適正使用
2.【抗菌薬の基礎知識①】ペニシリン系・セフェム系
ペニシリン系・セフェム系抗菌薬の特徴と分類
緑色レンサ球菌による感染性心内膜炎
腸球菌による腎盂腎炎
人工呼吸器関連肺炎
猫咬傷
市中発症の急性胆管炎
3.【抗菌薬の基礎知識②】カルバペネム系・抗MRSA薬
カルバペネムの使いどころ
カルバペネムを控えるべき理由
カルバペネムを上手に使おう
メロペネムを使用しにくい場面
抗MRSA薬の使い方
Advanced Lecture テジゾリド:新薬の吟味は慎重に
4.【抗菌薬の基礎知識③】その他の重要な抗菌薬(内服抗菌薬を中心に)
キノロン系抗菌薬の特徴
マクロライド系抗菌薬の特徴
ST合剤の特徴
テトラサイクリン系抗菌薬の特徴
「念のため処方」をやめることからはじめよう
5.【抗菌薬の基礎知識④】その他の重要な抗菌薬(嫌気性菌,抗真菌薬)
嫌気性菌の分類・特徴
嫌気性菌をカバーできる抗菌薬
メトロニダゾールを使いこなす
抗真菌薬の使い方
カンジダ血症
6.ペニシリンアレルギー
非アレルギー反応
重篤な遅発型反応
即時型反応の特徴を欠く軽症反応
即時型反応の特徴を有する反応
曖昧な病歴の患者さん
Advanced Lecture ペニシリンへの即時型反応の診断
7.抗菌薬の要否の判断 〜薬剤耐性(AMR)を防ぐのは僕たちレジデントだっ!〜
感冒に抗菌薬は必要?
急性鼻副鼻腔炎に抗菌薬は必要?
急性下痢症に抗菌薬は必要?
無症候性細菌尿に抗菌薬は必要?
周術期感染予防のための抗菌薬
8.【診断のためのアプローチ①】市中の発熱へのアプローチ:感染症と身体所見
発熱患者での注目ポイント
診断に役立つ「発熱+α」10連発!
9.【診断のためのアプローチ②】POCT,血液培養,CRPとプロカルシトニン
尿中レジオネラ抗原検査の落とし穴
血液培養のコンタミネーション
血液培養ボトルの陽性パターンから原因菌を推定する
CRPは有用か?
プロカルシトニンは有用か?
10.empiric therapyの考え方
尿路感染症のempiric therapy
市中肺炎のempiric therapy
CRBSIを疑う際のempiric therapy
感染性心内膜炎のempiric therapy
皮膚軟部組織感染症のempiric therapy
髄膜炎のempiric therapy
Advanced Lecture"重症=カルバペネム系薬+抗MRSA薬"でよいのか
11.効果判定・経過観察のしかた
治療効果判定について考えること
臓器特異的なパラメータ
治療中の発熱で考えること
治療失敗を危惧して考えること
12.培養結果が判明した後の抗菌薬選択,内服薬へ切り替えのタイミング
感染症診療のロジックを再確認〜自分は何を治療している?
Advanced Lecture① MRSA肺炎
de-escalationとは?
de-escalationって必要なの?
Advanced Lecture② ESBL産生菌に対するセフメタゾールの有効性
内服薬へ切り替えるタイミング〜「COMS」
13.抗菌薬のやめどき・治療がうまくいかないときのアプローチ
市中肺炎の経過と治療のやめどき
単純性腎盂腎炎の経過と治療のやめどき
複雑性腎盂腎炎での考え方
蜂窩織炎での考え方
胆管炎に隠れた薬剤熱
14.菌血症のマネジメント
黄色ブドウ球菌菌血症のマネジメント
カンジダ血症のマネジメント
末梢静脈カテーテル関連血流感染症のマネジメント
15.研修医に知っておいてほしい感染対策
勤務すべきでない症状を知っておこう
医療従事者として接種すべきワクチンを知ろう
手指衛生について意識しよう
血液・体液曝露事象の対応を知ろう
感染予防策の種類
Advanced Lecture 感染した医療従事者の権利保護
コラム
名称が変わった細菌
βラクタム系アレルギーのtips
MICの注意点・MICを考慮すべき状況は?
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書籍情報
- ISBN:9784758118446
- ページ数:182頁
- 書籍発行日:2019年2月
- 電子版発売日:2019年3月6日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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