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- 井川 房夫
- 前大脳動脈瘤・椎骨脳底動脈瘤(ACA・VBA Aneurysm)のすべて[動画付き]
商品情報
内容
序文
監修のことば
僕が脳神経外科医を専門領域として選ぼうかどうかと迷っていたころ,「スター・ウォーズ」シリーズの第1作『エピソード4』が,米国での公開にやや遅れて日本で公開された.「スター・ウォーズ」は,ご存じのように興行的理由や映像技術上の制約があり,まず『エピソード4』から公開された.以来,2015年に公開された直近の『エピソード7/フォースの覚醒』まで,7作がこの40年間に発表された.この映画シリーズには多くの賞賛のことばが寄せられているが,第1作から長くファンであった者の一人として一番に思うことは,第1作を今見ても,まったくその映像に古さを感じないことである.これは,この間の映像技術の驚異的な進歩を考えると驚嘆すべきことである.
本「部位別に学ぶ脳動脈瘤シリーズ」も第4巻をもって完成となる.もちろん,「スター・ウォーズ」シリーズには並ぶべくもないが,どの巻も現在考えられる最高のスタッフにより,最高の表現技術を駆使して,まさに「動脈瘤のすべて」があますところなく記載されている.そして,「スター・ウォーズ」といくつかの共通点を見出すことができる.まずどの巻から学び始めても,各巻がそれぞれに完成しており,まるで,一つひとつがエピソードのように,一つの閉じた物語として完成している.そして,今回本シリーズの掉尾を飾って発刊された『前大脳動脈瘤・椎骨脳底動脈瘤のすべて』は,本シリーズの完成にふさわしいできであるように思われる.それは,本シリーズの統一的な発刊に尽力された井川房夫先生のことばにもあるように,この部位の動脈瘤の治療に対する並々ならぬ熱い思いが,シリーズの最終作に結集したからだと思う.
もう一つ,「スター・ウォーズ」シリーズと共通する点がある.それは4巻すべてにおいて最高の画像技術が駆使され,また優れた動画が提供されていることである.その結果どの1巻をとっても,今後,何年か先にわれわれの後輩が手にしたとき,少しも時の流れによる陳腐化を感じないであろうと確信できる.これは,優れたすべての外科手術書に通じることであるが,外科治療の技術は,完成の頂点に登りつめることは容易ではない.しかし,いったん完成した技術は,言わば幾重にも年輪を重ねた巨木のように,確固として揺るぎないものになる.
脳卒中の外科も技術認定制度が考慮されている.本シリーズは,長く,脳卒中の外科のど真ん中である脳動脈瘤手術を学ぶ者にとって,いつまでも輝きを失わないものになると確信している.
宝金 清博
刊行にあたって
多くの方々のご協力のもと,2014年2月に『中大脳動脈瘤のすべて』を,2015年2月には『内頚動脈瘤のすべて(近位部・遠位部)』を発刊することができました.ご協力いただいた先生方には本当に感謝申し上げます.いよいよ今回は第4(最終)弾として,『前大脳動脈瘤・椎骨脳底動脈瘤のすべて』を発刊する運びとなりました.
本シリーズの第一弾の「刊行にあたって」でふれた破裂脳動脈瘤で死亡した私の同級生は前交通動脈瘤の破裂でした.そのとき「前交通動脈瘤を安全に治療できる医師にならなければ自分の存在価値はない」と感じ,使命感をもって診療にあたってきました.前交通動脈瘤は本シリーズのなかでは最も術野が深く,外科的治療では最後に習得する部位です.本書はさらに困難な椎骨脳底動脈瘤も含みますが,相対的に血管内治療が有利となる領域です.血管内治療もタイプ別に分類し,治療のポイント,ピットフォール,最新デバイスなど,懇切丁寧に解説をいただいております.
現在,施設による格差はあるものの,世代交代,若い人の価値観の違い,デバイスの改良などの理由で血管内コイル塞栓術が浸透しつつあり,外科的治療の経験は減少の一途をたどっております.手術が困難な部位は元来経験数が少なかったのですが,今後はさらに少なくなり,この領域の手術可能な医師の減少が危惧されます.何らかの理由で血管内治療ができない場合もあり,できるだけ多くの患者さんに役立つためには各地域に対応できる医師が必要です.
「日本脳卒中の外科学会」では技術認定制度の導入が決まり,講習会などの出席や,より厳密な技術が求められるようになってきております.技術の習得をより効果的に行うためには他人の経験を自分の経験に代え,論理的に理解することが重要です.
一方,日本の脳神経外科の利点の一つとして,クリップもコイルも脳神経外科医が行うため,それぞれの利点・欠点を理解し,相補的に治療を行えることが挙げられます.本書は手術と血管内治療どちらの方法も動脈瘤のタイプ別に分類し,術前シミュレーションを行った後に動画を参照することにより手術経験を共有し,少ない経験値をカバーできます.手術動画を見る前にぜひ術前の画像,動画より自分自身でシミュレーションし,実際の手術動画との違いを体感してほしいと思います.
執筆をお願いした先生方は,日本の第一線でご活躍されている方ばかりで,ご多忙にもかかわらず,充実した内容に仕上げてくださり,この場を借りて厚く御礼申し上げます.
本書は,豊富な図・写真とインターネットを利用した術前シミュレーション動画,手術・IVR動画を含み,ネット環境さえあればどこでも動画を見ることができます.これから手術・IVRにあたられる先生方の右脳に働きかけ,お役に立てると確信しております.ひいてはできるだけ多くの患者さんのお役に立てることができましたら幸いです.
井川 房夫
目次
監修のことば
刊行にあたって
執筆者一覧
WEB動画の視聴方法
本書における略語一覧
1章 前大脳動脈瘤概論
1 前大脳動脈の解剖と分類
2 前大脳動脈瘤の画像診断と術前シミュレーション
3 前大脳動脈瘤の疫学と特徴
2章 前大脳動脈瘤の手術─手術アプローチと術前シミュレーション方法
1 前交通動脈瘤に対するpterional approach
2 前交通動脈瘤に対するinterhemispheric approach
3 末梢性前大脳動脈瘤に対するアプローチ
3章 前大脳動脈瘤のIVR─血管内アプローチ
1 前交通動脈瘤に対するアプローチ
2 末梢性前大脳動脈瘤に対するアプローチ
4章 前大脳動脈瘤のシミュレーションと手術の実際
1 前交通動脈瘤 pterional approach
A 下方・前方向き(低位)
B 上方・後方向き(低位)
C 下方・前方向き(高位)
D 上方・後方向き(高位)
E Keyhole surgery
2 前交通動脈瘤interhemispheric approach
A 下方・前方向き
B 上方・後方向き
C 鋭角A2 fork 上向き
D 大型
E コイル後再発
3 末梢性前大脳動脈瘤
A 脳梁膝部より上方・下方
B 大型
5章 前大脳動脈瘤のシミュレーションとIVRの実際
1 前交通動脈瘤
A 横前向き(terminal type)
B 上向き(true Acom)
C 微小破裂瘤
D 大型瘤
E アシストテクニック(バルーン,ステント)
F アシストテクニック(複数の動脈瘤が存在する場合)
2 末梢性前大脳動脈瘤
A 前向き破裂瘤(標準)
6章 前大脳動脈瘤応用編
1 前大脳動脈瘤のトラブルシューティング
2 巨大前大脳動脈瘤の手術
3 前大脳動脈瘤─ アデノシンを用いた手術
7章 椎骨脳底動脈瘤概論
1 椎骨動脈,脳底動脈の解剖
2 椎骨脳底動脈瘤の画像診断と術前シミュレーション
3 椎骨脳底動脈瘤の疫学と特徴─ 破裂・未破裂脳動脈瘤
4 椎骨動脈を中心とした解離性脳動脈瘤の病理と臨床
8章 椎骨脳底動脈瘤の手術─手術アプローチと術前シミュレーション方法
1 脳底動脈瘤に対するtrans-sylvian approach
2 脳底動脈瘤に対するsubtemporal approach
3 椎骨動脈瘤に対するsuboccipital approach
4 Transpetrosal approach
5 椎骨動脈系解離に対する外科手術戦略
9章 椎骨脳底動脈瘤のIVR─血管内アプローチ
1 椎骨動脈瘤に対するアプローチ
2 脳底動脈先端部瘤,後大脳動脈瘤に対するアプローチ
10章 椎骨脳底動脈瘤のシミュレーションと手術の実際
1 椎骨動脈瘤
A 後下小脳動脈瘤
B 解離(バイパス併用)
C 大型・巨大椎骨動脈瘤
2 脳底動脈瘤
A 低位(1)
A 低位(2)
B 高位
C 高位(経第三脳室アプローチ)
D 大型
11章 椎骨脳底動脈瘤のシミュレーションとIVRの実際
1 椎骨動脈瘤
A 後下小脳動脈瘤
B ユニオン
C 解離(トラッピング)
D 本幹(ステントアシスト)
2 脳底動脈瘤
A 本幹
B 上小脳動脈瘤
C 先端部
D 先端部(大型)
E 後大脳動脈瘤
12章 椎骨脳底動脈瘤応用編
1 椎骨脳底動脈瘤手術のトラブルシューティング
2 椎骨脳底動脈瘤IVRのトラブルシューティング
3 巨大椎骨脳底動脈瘤の手術・IVR
4 椎骨脳底動脈瘤手術とIVRのコンビネーション(hybrid surgery)
おわりにあたって
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書籍情報
- ISBN:9784840457873
- ページ数:368頁
- 書籍発行日:2016年5月
- 電子版発売日:2017年12月1日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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