目覚しい進歩を続ける乾癬治療

最近，乾癬治療薬の新薬が続き日常診療での選択肢が増えた．新薬発売に伴い，地域から全国レベルの学会に至るまで数多くの講演会やシンポジウムが開かれている．日本乾癬学会のみならず皮膚科学会全体の活性化につながっている．

外用治療からみると，ステロイドとビタミンD3外用配合薬がある．それぞれの異なる安定pH域の違いから，単に混合外用すると力価が低下する．しかし，外用アドヒアランスの面から薬局で混合調整を指示する医師は多い．界面活性剤の配合や基剤の配合量の最適化により製剤を安定化させ，高い併用効果が得られる2つの外用配合薬が普及している．今後，顔面や頭皮に使える配合薬の開発が望まれるし，アトピーを含め皮脂欠乏性皮膚炎に使用されるステロイドと保湿薬の配合薬も長期安定性から切望したい．患者にとって悩みの種であった頭皮乾癬には，薬効ランクⅠ群のステロイド入りシャンプー剤が今年7月に発売された．患部に適量塗布し15分後に洗い流すshort contact therapyであり，投与4週後のPSSI（皮疹重症度）50の達成率は57.7％にすぎないが，外用アドヒアランスの面からはユニークな薬剤である．外用薬入りの入浴剤も欲しい．

内服治療は従来シクロスポリンが使われてきたが，副作用の面から定期的な採血を要し，高血圧，腎＆肝障害，易感染性，併用禁忌などの使用上の問題が多かった．今年3月に発売された経口PDE4阻害剤は，投与量が一定で体重別の調整不要，PASI75は28.2％，PASI50は50.6％，ACR20は38.1％程度であるが爪にも効果があり，頭皮には46.5％が有効である．本薬の最大の売りは光線療法との併用が可能で，全身的な副作用が少ないことである．シクロスポリンと同程度の効果と費用であり，診療所でも安心して処方ができる．今年発売以来10,000例を突破しているが，実に90％が診療所で処方されるため，生物学的製剤を目的に大学病院に送る重症患者が減っていると聞く．

最後の注射療法は言うまでもなく生物学的製剤（バイオ）である．現在6種類に選択肢が増え，PASI100クリアやバイオフリー寛解の達成も夢ではない．激戦のバイオ治療が，今後どのように展開していくのか興味深い．バイオの選択基準として，高い有効性，患者満足度，経済性，利便性や副作用などがあげられる．今後さらにバイオの新薬登場が続き戦国時代を迎えるが，バイオを含め治療全般が網羅された乾癬治療ガイドラインの作成がどのようになるのか楽しみである．治療内容に幅ができると，重症や段階ごとの治療法を患者に提供できる．重症で難治性の乾癬性紅皮症や関節症性乾癬例など，多くの先人が治療法を悩んだ代表的な炎症性角化症が，目覚しい乾癬治療の進歩により病勢を掌握できる時代が到来している．

向井 秀樹