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- 宇川 義一
- Annual Review 神経 2022
商品情報
内容
脳神経科学分野のエキスパートたちが内外の文献を踏まえてその年の最注目トピックを厳選し,解説する好評シリーズの2022年版がいよいよ登場.臨床・研究に役立つ貴重な情報源として,神経エコーといった基礎医学における最新の知見や変性疾患をはじめとする難病へのアプローチ,外科治療の新たな神経機能の解明・病態の理解への貢献など,幅広い側面からの話題を取り上げた.
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序文
序
この一年は,コロナ感染の影響を受ける2年目となり,様々な生活での制限が我々の医療行為にも影響を与えた.現場の医療業務に加えて,アカデミックな分野でも興味深い変化があった.人が集まることができず実験などをする機会が少なくなり,事務業務が増えたために論文を書く時間があるようで,国際的な雑誌では投稿論文数がどの雑誌でも例年に比べて1.2~1.5倍くらいに増えている.そこでレフリーの依頼の数も増加した印象がある.もう一方で,論文・本を読む機会も増加していることが予想される.勉強家の多い脳神経を専門とする研究者,臨床医(脳神経内科,脳神経外科,精神科など)は,おそらく外出せず単行本,文献などを読んでいるのではないだろうか.そこで,楽しく読めて貴重な情報源となるような単行本を作成するべく,今回も編集を行った.
Basic Neuroscienceでは,それぞれの分野で新しい知見を紹介いただいた.多くが基礎医学での成果であるが,生理の分野では臨床検査に近い神経エコーを取り上げ,従来あまり知られておらず検査数も多くない,脳神経のエコー解析の解説をいただいた.本年の動向では,変性疾患をはじめとするいわゆる難病と言われる疾患への最新のアプローチを記載いただくとともに,日本人がはじめて記述し,最終的に遺伝子解析までたどり着いた瀬川病の50年の歴史を野村先生にまとめていただいた.これからの若い脳神経研究者,脳神経関連医師が,新しい病気にアプローチする時の参考にしていただければ幸いである.Clinical topicsでは,日常臨床に役立つ最新情報・病態生理から治療にいたるまでの様々な側面の話題・神経内科から脳神経外科,精神科の領域にいたる広い範囲からの話題を取り上げて記載いただいた.外科治療自体が,新たな神経機能の解明・病態の理解に貢献している事項も取り上げた.
上述の内容が日々多忙を極めていらっしゃる先生方に最新の情報をお届けできて,日々の臨床に本書を大いに活用していただければ,編集者一同喜びとするところである.また,お忙しい中ご執筆いただいた先生方に大変感謝します.最後に,コロナ感染症が一段落して,世の中全体の状況が改善する事を祈りながら編集の言葉とします.
2022年2月
編集者一同
目次
I. Basic Neuroscience
1.神経生理
1 脳神経のエコー検査〈能登祐一〉
視神経の超音波検査 顔面神経の超音波検査 迷走神経の超音波検査 副神経の超音波検査 今後の展望
2 視床網様核のコア/シェル構造と多様な入出力線維〈高田則雄 稲森俊之介〉
TRNの入出力線維とその機能 TRNのコア/シェル構造 TRNと精神疾患 今後の展望
2.神経病理
1 進行性核上性麻痺と抗IgLON5抗体〈下畑享良〉
抗IgLON5抗体関連症候群 PSP様症候群およびCBSを呈する症例
2 パーキンソン病:嗅球・腸管-迷走神経系へのαシヌクレイン凝集体接種による脳病理〈澤村正典 ?橋良輔〉
Braak仮説とα-Synの凝集・伝播 プリオン様伝播仮説 嗅球からの伝播経路 消化管からの伝播 今後の展望
3.生化学(分子生物学)
1 シヌクレイノパチーにおけるプリオン様伝播の分子メカニズム〈長谷川隆文〉
α-シヌクレインの分泌機構 α-シヌクレインの取り込み機構 細胞間伝播を標的とした疾患修飾療法 今後の展望
2 ALSのゲノムワイド関連解析〈熱田直樹〉
孤発性ALSにおけるゲノム要因の寄与 ALSに対するゲノムワイド関連解析 今後の展望
4.画像
1 酸素の安定同位体17Oによる脳水動態イメージング〈亀田浩之 工藤與亮〉
Glymphatic systemと水動態MRイメージング 同位体顕微鏡による水ミクロイメージング 今後の展望
2 4D Flow MRI〈関根鉄朗 武田康寛 安藤嵩浩 村井保夫〉
動脈瘤 脳血管バイパス 脳動静脈奇形 脳脊髄液評価 今後の展望
II. 本年の動向
1 筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者を対象としたロピニロール塩酸塩(ropinirole)投与による医師主導治験―iPS細胞創薬の黎明期〈森本 悟 ?橋愼一 岡野栄之〉
新規創薬戦略であるiPS細胞創薬の台頭 iPS細胞創薬発のALS治療薬候補ロピニロール塩酸塩とその医師主導治験(ROPALS試験)
2 脳梗塞後の制御性T細胞による組織修復機構〈伊藤美菜子〉
組織Treg 脳梗塞における脳Tregの集積 脳Tregの性質 脳Tregによるアストログリオーシスの制御機構
他の脳内炎症モデルとTreg ヒト脳内炎症性疾患とTreg
3 腸内細菌叢を介した神経炎症・神経変性の修飾機序―多発性硬化症における研究の進展〈山村 隆〉
最近の進歩 これからの展開
4 Xeroderma pigmentosum(XP)の神経症状〈杉山淳比古〉
概念・疫学 XPの皮膚症状 XPの神経症状 神経症状の病態機序と治療
5 自閉スペクトラム症とセロトニン〈鈴木秀典 齋藤文仁〉
ASDモデル動物におけるセロトニン神経系の障害 ASDの社会的行動異常とセロトニン 感覚異常とセロトニン
睡眠障害とセロトニン セロトニン神経系の修飾による治療の可能性
6 瀬川病50年の歩み〈野村芳子〉
第1例目との出会いから病因遺伝子の発見まで 病因遺伝子の発見後明らかになった臨床的特徴―症状の多様化 病態 今後への課題
7 ALSの新たな診断基準:Gold Coast診断基準〈澁谷和幹〉
Lambert診断基準 改定El Escorial診断基準 Awaji診断基準 Gold Coast診断基準
8 特発性基底核石灰化症の分子病態〈保住 功〉
名称について リン酸ホメオスタシスの異常 脳血液関門(BBB)の傷害 いわゆる‘脳内リンパ系(glymphatic system)’ 今後の課題と展望
9 覚醒下手術で明らかになりつつある言語機能〈中田光俊〉
新規に同定された言語関連領域 言語経路の包括的理解 前頭斜走路の新知見 言語機能の可塑性
10 iNPH治療のオーバービュー:現状と課題〈中島 円〉
iNPH診断 症候 脳形態/神経画像所見 脳脊髄液動態 脳脊髄液所見 併存疾患・鑑別診断 シャント手術
III. Clinical Topics
1.感染症・炎症疾患
1 口腔常在菌と全身感染症〈高橋幸裕 才木桂太郎 田代有美子〉
レンサ球菌アドヘジンantigen I/II Hsaアドヘジン インターメディリシン phosphoglucosamine mutase 今後の展望
2 次世代シーケンサーを活用した神経感染症のショットガンメタゲノム解析〈崎山佑介 ?嶋 博〉
メタゲノム解析とは何か? メタゲノム解析の種類 mNGS解析のパイプライン mNGSの有用性
前向き研究 後向き研究 mNGSの限界 メタゲノム解析の役割を再考する 今後の展望
2.脳血管障害
1 腸内細菌と脳卒中〈山城一雄 栗田尚英 卜部貴夫〉
腸内細菌と脳卒中リスク 虚血性脳卒中急性期と腸脳連関 虚血性脳卒中患者の腸内細菌叢 腸内細菌と脳卒中治療
2 脳動脈瘤に対するshield technologyを用いたflow diverterによる血管内治療〈大石英則 石原一彦〉
Flow diverter(FD)治療について Shield technology PIPELINE shieldを用いたFD治療の成績 今後の展望
3 脳血管障害における新たなarterial spin labeling技術を用いたMR angiographyの臨床応用〈栂尾 理 樋渡昭雄 石神康生〉
pulsed ASLを用いた4D-MRA pseudo-continuous ASL(pCASL)を用いた4D-MRA 血管選択的4D-MRA Acceleration-selective ASL(AccASL)を用いた3D-MRA
4 Dolichoectatic and fusiform aneurysmの病態と治療に関する最新の知見〈中冨浩文〉
最近の自然歴に関する論文 最近の治療成績に関する報告 最近のfusiform and dolichoectatic aneurysmsに関するゲノム医学の進歩
5 もやもや病の治療と研究:現状と可能性〈藤村 幹〉
出血発症もやもや病に関する最新知見 もやもや病に対するバイパス術後の特徴的脳循環と周術期管理 疾患感受性遺伝子RNF213遺伝子多型の臨床的意義 今後の展望
3.脳腫瘍
1 転移性脳腫瘍の新展開multidisciplinary approachに向けて〈武笠晃丈〉
薬物療法の進歩と転移性脳腫瘍における個別化治療 放射線治療の最近の動向〜高次脳機能障害の回避
2 膠芽腫の病態・治療と未来医療を見据えた今後の展望〈篠山隆司 田中一寛〉
膠芽腫の病態 膠芽腫の治療 今後の治療―免疫療法の可能性 未来医療を見据えた今後の展望
4.外傷
1 重症頭部外傷の急性期管理〈梶原壮翔 森岡基浩〉
Intracranial pressure(ICP)モニタリング Brain tissue oxygenation monitoring(PbtO2)
Pupillometer Biomarkers 低体温療法(Therapeutic hypothermia) 高張食塩水持続注入療法(Hypertonic Saline:HS)
高酸素療法Hyperoxia treatment バルビツレート療法 トラネキサム酸(Tranexamic acid:TXA) Xenon
5.変性疾患
1 網膜でパーキンソン病を診断できるか〈星 秀夫 狩野 修 佐藤二美〉
網膜におけるPDの非運動症状 PDと網膜神経回路の形態変化 内網状層(IPL) 今後の展望
2 アルツハイマー病の抗アミロイドβ抗体治療〈鈴木一詩 岩坪 威〉
歴史概観 抗Aβ抗体薬の特性と作用機序 現在承認されている(または開発中の)抗Aβ抗体薬 今後の展開と課題
6.中毒・代謝疾患
1 タウリンによるミトコンドリア病の治療〈砂田芳秀〉
タウリンの細胞保護作用 MELASはtRNAのタウリン修飾欠損症
タウリン補充によるMELASモデル細胞のミトコンドリア機能障害の回復 タウリン補充療法の医師主導治験と長期投与試験
タウリン修飾の分子メカニズムの解明 タウリン修飾欠損による多様な病態メカニズムの解明 今後の臨床応用
2 ライソゾーム病の治療とマネジメント〈坪井一哉〉
ゴーシェ病の治療とマネジメント ファブリー病の治療とマネジメント ポンペ病の治療とマネジメント
ムコ多糖症I型の治療とマネジメント ムコ多糖症II型の治療とマネジメント MPSIIにおける新たな動向 今後の展望
7.脱髄・免疫性疾患
1 免疫性疾患としての筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)〈佐藤和貴郎 山村 隆〉
ME/CFSの疾患概念 ME/CFSの発症原因と疫学 病態解明へ向けた研究 ME/CFSに関する脳画像研究
ME/CFSにおけるB細胞・自己抗体 治療法開発へ向けて
2 視神経脊髄炎とGRP78抗体〈清水文崇〉
NMOでのBBB破綻 NMOからBBB破綻に関与するGRP78抗体の発見 GRP78とは
GRP78抗体と長大な脊髄病変を有する脊髄炎を認めるNMO関連疾患 GRP78抗体と中枢神経ループス
GRP78抗体と傍腫瘍性小脳変性症を合併したLambert-Eaton筋無力症候群 今後の展望
8.末梢神経障害
1 COVID-19とギラン・バレー症候群〈水地智基〉
GBSと先行感染因子 COVID-19とGBSの関連 COVID-19関連GBSの特徴 COVID-19ワクチンとGBSの関連
2 抗Plexin D1抗体をはじめとする自己抗体介在性神経障害性疼痛〈藤井敬之 宮地佑希野〉
抗Plexin D1抗体 抗Caspr 2抗体と抗LGI1抗体 抗TS-HDS抗体と抗FGFR3抗体 抗小径後根神経節ニューロン抗体 今後の展望
9.神経筋疾患
1 神経核内封入体病〈曽根 淳〉
Fragile-X関連振戦症候群(Fragile X-associated tremor/ataxia syndrome:FXTAS)
Oculopharyngodistal myopathy(OPDM) Essential tremor
2 非コード領域リピート伸長病〈石浦浩之〉
脊髄小脳失調症37型 良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん 新しいCGGリピート伸長病 常染色体劣性遺伝疾患 今後の展望
10.自律神経疾患
1 第3の視覚受容体と自律神経系:そのメカニズムと破綻〈栗田 正〉
ipRGCsのnon-image-forming機能における新たな発見 ipRGCsのimage-forming機能への関与
新生児におけるipRGCsの網膜,神経回路の成熟への関与 ヒトのipRGCsの破綻と臨床 今後の展望
2 純粋自律神経失調症型のレビー小体病と免疫介在性自律神経ニューロパチー〈小池春樹〉
純粋自律神経失調症(pure autonomic failure:PAF) 免疫介在性自律神経ニューロパチー
11.機能性疾患
1 AMPA受容体拮抗薬の作用機序〈戸島麻耶 小林勝哉 池田昭夫〉
AMPA受容体とてんかん AMPA受容体拮抗薬
2 Responsive neurostimulation治療の可能性〈重藤寛史〉
てんかんの外科治療 発作反応型電気刺激療法(responsive neurostimulation:RNS) 今後の展望
12.機能的脳神経外科
1 デバイス開発による機能的脳神経外科の進歩―脳深部刺激療法―〈貴島晴彦〉
脳深部刺激療法(deep brain stimulation:DBS)で使用する機器の進歩
充電式IPG D-Leadに関する報告 MRI対応機器の検証 DBSの電極からのLFPの記録
LFPからの症状推定 他疾患への応用 未来の展望
2 てんかんに対する定位的外科〈岩崎真樹〉
定位手術ロボット 定位的頭蓋内脳波(SEEG) てんかんに対する定位的凝固治療 今後の展望
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書籍情報
- ISBN:9784498328822
- ページ数:332頁
- 書籍発行日:2022年5月
- 電子版発売日:2022年5月19日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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