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- 病理と臨床 2023年8月号(41巻8号)非腫瘍性骨関節病変
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序文
特集:非腫瘍性骨関節病変
本特集の題目は非腫瘍性骨関節病変である.この分野の特集は,本誌では8巻(1990年)3号の「関節の病理」をはじめとして,これまでに4回[ほかの3回は,13巻(1995年)5号の「長期透析患者の骨・軟部病変」,17巻(1999年)7号の「慢性関節リウマチをめぐる最近の進歩」,27巻(2009年)3号の「骨関節病変のエッセンスⅡ 非腫瘍性病変」],組まれている.
骨・関節領域の病理診断は一般の病理医の多くが苦手とする分野である.それは,馴染みがない,経験不足,所見のとり方がわからない,悪性腫瘍と違い病理診断について臨床担当医からの問い合わせがない,施設によっては病理検体が出てこないことがある(切除検体を病理に回さずallograftなどに利用していることもある),提出検体が断片状でオリエンテーションがつけにくい,骨の切り出しが面倒,参考となる教科書が少ない,などなどこの分野に興味が湧かないだろう理由が多々あるからと思われる.かく言う編者のうちのひとり(T.I.)も,骨腫瘍と非腫瘍性骨関節病変のどちらにより興味があるかと問われれば,断然前者に興味がある.そのため,骨・関節を専門としない一般病理医は言わずもがなである.しかし,興味の有無にかかわらず,我々病理診断を専門とする者にとっては,避けて通ることができないのも事実である.
そこでいま一度,なぜ,非腫瘍性骨関節病変が一般病理医の苦手領域になってしまうのか考えてみた.色々な理由があるかとは思うが,以下の3つはそのうちでも大きな理由のように思える.つまり,この分野の疾患そのものについてよく知らないこと,病変が細胞変化よりも基質の変化を主とすること(Virchowの細胞病理学を習ってきた者にとって基質の変化をとらえるのは苦手),そして病変を記述する用語を知らないこと,の3つである.そのため,本特集は一般病理医の苦手意識を少しでも解消できればと思い,疾患概念を含めて解説することを各執筆者にお願いした.また,鑑別診断上問題となる病変や類似病変について,それらを対比することで各病変の違いや診断のポイントを浮き彫りにできるのではと考えて,そのような解説も試みた.また,純粋な非腫瘍性病変ではないのだが,骨・関節病理の成書でこれまでほとんど取り上げられていなかった病変もここで取り上げた.さらに,近年急速に進歩している骨・軟骨領域の再生医療について,最先端の知識をまとめていただいた.
本特集が,非腫瘍性骨関節病変の代表的なものについて疾患概念の把握と病変の理解や日常病理診断に役立ち,少しでも多くの病理医の苦手意識解消につながれば,編者にとってこれに勝る喜びはない.
石田 剛 [国立病院機構埼玉病院 病理診断科]
今田浩生 [埼玉医科大学総合医療センター 病理部]
目次
【特集】
病理医に知っておいてほしい非腫瘍性骨関節疾患画像診断のポイント……塚本 純 他
変形性関節症,関節リウマチ,急速破壊型股関節症……今田浩生
骨壊死と軟骨下脆弱性骨折……山本卓明
脊椎・脊柱管の非腫瘍性病変……佐々木 文
人工関節関連病変……蛭田啓之 他
関節領域の骨・軟骨形成病変:特に傍関節/関節包内軟骨腫について……吉田研一 他
病理医が遭遇する非腫瘍性骨関節病変の鑑別診断のポイント……牧瀬尚大
整形外科領域の再生医療……梅澤明弘
【連載】
マクロクイズ[172]
片山彩香
鑑別の森[23] 腎臓の淡明細胞型腎細胞癌と転座型腎細胞癌
Answer 1:大江知里
Answer 2:大橋瑠子
AIと病理─これまでの5年,これからの5年
連載にあたって……吉澤明彦 他
AIと病理─これまでの5年,これからの5年
[1]病理診断領域におけるAIの技術的側面……備瀬竜馬
今月の話題
表層型の癒着胎盤……佐藤勇一郎
日本人の名前がついた疾患─川崎病─……髙橋 啓
腎生検病理診断での膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)の診断を進めてみよう……清水 章
【ひろば】
内因性急死─特に虚血性心疾患について─……近藤武史
【書評】
『CPC形式でわかる身につく病理所見の見かた、病態の考えかた』……小田義直
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書籍情報
- ISBN:9784011204108
- ページ数:108頁
- 書籍発行日:2023年8月
- 電子版発売日:2023年8月1日
- 判:B5変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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