病理と臨床 2023年3月号(41巻3号) 感染症と腫瘍―最新の知見―

  • ページ数 : 130頁
  • 書籍発行日 : 2023年3月
  • 電子版発売日 : 2023年3月2日
3,190
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内容

特集テーマは「感染症と腫瘍 ―最新の知見―」.HPV関連子宮頸癌/子宮頸癌以外のHPV関連癌/EBV関連リンパ腫/H. pylori 感染と胃癌/EBVと胃癌/肝癌の動向―ウイルス性から非B非C型関連へ―/HTLV-1と白血病・リンパ腫/HIV感染症に関連したリンパ腫の病理像 他を取り上げる.連載記事として,[マクロクイズ],[鑑別の森],[若手病理医のためのキャリアパス講座][今月の話題]術中迅速病理組織診断における感染対策 等を掲載.

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序文

特集
感染症と腫瘍 ―最新の知見―


腫瘍は様々な環境因子との関わり合いを経て発生するが,その中でも感染症は明確な一因子として認知されている.感染症関連腫瘍の最大の特徴は発がんの因果関係を証明しやすいことにあるだろう.また,病原体という原因が物質として存在するため,研究の対象としやすい,という現実的な側面も確かにある.

しかし,その腫瘍発生の機序は決して単純ではない.さらに,感染症と一言でまとめても,病原体も違えば標的臓器も異なる.たとえば発がんウイルスはDNAウイルス・RNAウイルス・レトロウイルスと多種多様であるし,胃癌に関わるHelicobacter pylori はウイルスですらない.「感染症と腫瘍」というテーマで果たしてまとまりのあるものに仕上がるのか,しばし頭を抱えた.

近年,次世代型シークエンサーに代表される技術の進歩によりゲノム網羅的な解析が進み,多くの腫瘍で分子基盤が明らかにされている.本来,ヒトゲノムを読むことを目的としていた解析でも,副産物的にヒト以外の病原体のゲノム配列も拾えることが明らかとなり,感染症にもスポットライトが当たるようになってきている.Rous肉腫の発見から幕を開けた感染症と腫瘍の舞台は,いまだ鳴り止まない拍手の中,絶賛公演中なのである.

さて,『病理と臨床』で前回,「感染症と癌,病理からのメッセージ」というテーマが取り扱われたのは2013年2月号である.それからちょうど10年の月日が流れたが,各腫瘍での知見の積み重ねには凄まじいものがあり,ちょうどよい節目といえるだろう.

本特集で扱うテーマとして,human papillomavirus(HPV)と子宮頸癌・中咽頭癌,Helicobacter pylori と胃癌,Epstein-Barr virus(EBV)とリンパ腫・胃癌,肝炎ウイルスと肝臓癌,human T-cell leukemia virus type 1(HTLV-1)とリンパ腫・白血病を取り上げた.また,直接的な原因ではないが,human immunodeficiency virus(HIV)感染症により生じうるリンパ腫/リンパ増殖症も感染症に関わる腫瘍として意義深いと考えた.

そこで,各エキスパートに執筆依頼するにあたり,一つ挑戦的なコンセプトを掲げた.病原体(縦の糸)と臓器(横の糸)が複雑に錯綜するこの題目において一本の軸を据えるべく,感染症「関連」腫瘍のcounterpartとなるような感染症「非関連」腫瘍がある場合は,それと比較していただくようにお願いした.この視点を通じることで,感染症「関連」vs.「非関連」腫瘍の特徴が浮き彫りになると同時に,似て非なるもの,あるいは似ていないけれども実は同じもの,が見えてくるのではないかと期待したのである.

個人的にはこの目論見により普段見えない模様が浮き彫りとなり,正解だったと感じている.私自身,編集に携わると同時に,感染症と腫瘍の魅力にとりつかれた一読者として,各エキスパートにより咀嚼された最新の知見にふれられ,至福の時間であった.読者の皆様におかれましても,感染症と腫瘍が複雑に織りなす色彩豊かな多層世界に出逢える機会となれば,編集に携わった者として望外の仕合わせである.


古田玲子 [北里大学医療衛生学部 医療検査学科 臨床細胞学]
松坂恵介 [千葉大学医学部附属病院 病理部・病理診断科]

目次

【特集】

HPV関連子宮頸癌……古田玲子

子宮頸癌以外のHPV関連癌……利安隆史

EBV関連リンパ腫……大島孝一

H. pylori 感染と胃癌……岩谷 舞 他

EBVと胃癌……松坂恵介

肝癌の動向―ウイルス性から非B非C型関連へ―……原田憲一

HTLV-1と白血病・リンパ腫……加留部謙之輔

HIV感染症に関連したリンパ腫の病理像……比島恒和

【速報解説!ここが変わった】

「子宮頸癌取扱い規約病理編 第5版」改訂ポイント……三上芳喜

「子宮体癌取扱い規約病理編 第5版」改訂ポイント……安田政実

「卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取扱い規約病理編 第2版」改訂ポイント……清川貴子

【連載】

マクロクイズ[167]

泉 美貴 他

鑑別の森[18]

潰瘍性大腸炎での反応異型と異形成

Answer 1:八尾隆史 他

Answer 2:下田将之

若手病理医のためのキャリアパス講座[16]

他分野から病理へ……森井英一

【今月の話題】

鼻副鼻腔癌の遺伝子異常と臨床病理学的特徴―分子診断時代の幕開けか―……山元英崇

“SOX10”と病理診断……森 泰昌

病理学的解析……藤井誠志

術中迅速病理組織診断における感染対策……若狹朋子

【第68回 日本病理学会秋期特別総会 開催報告記】

突き抜ける病理学―Breakthrough and Innovation in Pathology―……菅井 有

【Information】

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書籍情報

  • ISBN:9784011204103
  • ページ数:130頁
  • 書籍発行日:2023年3月
  • 電子版発売日:2023年3月2日
  • 判:B5変型
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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