病理と臨床 2024年2月号(42巻2号)IgG4関連疾患と鑑別疾患

  • ページ数 : 112頁
  • 書籍発行日 : 2024年1月
  • 電子版発売日 : 2024年2月2日
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内容

IgG4関連疾患と鑑別疾患

特集記事として,IgG4関連疾患の臨床/B細胞とT細胞から紐解くIgG4関連疾患の病態形成メカニズム/IgG4関連疾患の病理診断/消化器病変/涙腺・唾液腺炎/腎病変/肺疾患/後腹膜線維症・肥厚性硬膜炎/リンパ節病変 を取り上げる.連載記事として[マクロクイズ],[鑑別の森],[AIと病理―これまでの5年,これからの5年]他,また,[今月の話題],[第69回 日本病理学会秋期特別総会 開催報告記]を掲載.


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序文

IgG4関連疾患と鑑別疾患

自己免疫性膵炎 autoimmune pancreatitis(AIP)の概念はYoshidaらが1995年に提唱し,膵癌に類似する原因不明の膵炎として本邦で注目され始めた.AIP の特異な組織像は,AIP の概念提唱前にlymphoplasmacytic sclerosing pancreatitisとしてKawaguchiらが既に報告していた.2001 年にはHamanoらが,AIP 患者の血清中にIgG4 が増加していること,病変内に多数のIgG4陽性細胞が浸潤していることを報告した.さらに2003年にKamisawaらが,AIP 患者は膵外病変を合併すること,それら病変内にも多数のIgG4陽性細胞が浸潤していることを報告し,今日のIgG4関連疾患の概念を提唱した.特筆すべきはこれらの業績がいずれも日本人の手によることで,IgG4 関連疾患は本邦から発信された疾患概念である.

本誌においても27巻1号(2009年)において,「臓器線維症─IgG4関連硬化性疾患を中心に─」という特集が組まれた.IgG4関連疾患という言葉もまだない時代の話であるが,黎明期の疾患概念に対する著者らの熱い思いが伝わってくる特集号であった.その後,IgG4 関連疾患は厚生労働省の指定難病となり,難治性疾患政策研究事業においてオールジャパンでの研究体制が構築され,診断基準やガイドラインが整備された.一方で,IgG4 関連疾患についての関心が国際的にも次第に高まり,4 回の国際シンポジウムが開催されて, 疾患名, 病理診断基準(consensus statement on the pathology of IgG4-related disease),分類基準(classification criteria)などが国際的コンセンサスとして出版されてきた.

知見の集積によりIgG4関連疾患の臨床病理像は,一部の稀な臓器病変を除くとかなり明らかになった.しかしながら一方で,血清IgG4高値や病変中の多数のIgG4陽性細胞を認めてもIgG4関連疾患ではない症例(mimickers)の存在も知られるようになった.さらに,疾患概念の周知,診断基準の整備とともに,かつてのように腫瘍と診断され切除されたIgG4関連疾患の検体は目にしなくなり,生検標本による診断を求められる機会が増えた.前回の特集号が発刊されてから15年が経過した今,鑑別すべき疾患や診断基準に配慮しながら,小さな検体で診断を下すことが病理医に求められているのである.

そこでIgG4関連疾患についてのアップデート,診断基準の紹介,鑑別すべき疾患,生検診断への対応法といった新しい情報を提供すべく,本特集号を企画した.病理医の日常業務の一助となれば幸いである.


能登原憲司[ 倉敷中央病院 病理診断科]
佐藤康晴 [岡山大学学術研究院保健学域 分子血液病理学講座]

目次

【特 集】

IgG4関連疾患の臨床 川野充弘

B細胞とT細胞から紐解くIgG4関連疾患の病態形成メカニズム 坂本瑞樹 他

IgG4関連疾患の病理診断 上原 剛

消化器病変 能登原憲司

涙腺・唾液腺炎 池田博子 他

腎病変 原 重雄 他

肺疾患 蛇澤 晶 他

後腹膜線維症・肥厚性硬膜炎 小山 貴 他

リンパ節病変 西村 碧 フィリーズ 他

【連 載】

マクロクイズ[178]

 安岡弘直

鑑別の森[29]

 軟部組織の結節性筋膜炎と紡錘形細胞肉腫

 Answer 1:山元英崇

 Answer 2:加藤生真

AIと病理─これまでの5年,これからの5年[7]

 病理診断支援AI─ELSIに関わるFAQ─ 白石泰三 他

病理トレンド[6]

 日本病理学会 病理診断紹介動画の制作秘話 伊藤智雄

【今月の話題】

卵巣奇形腫の「未熟性」─精巣腫瘍の視点から─宮居弘輔

STASは生物学的現象か?アーチファクトか? 松原大祐

気をつけろ その膵断端は 焦げまみれ(字余り) 松原亜季子

分葉状頸管腺過形成から発生した胃型腺癌の診断─画像と細胞診の役割─ 南口早智子

【第69回 日本病理学会秋期特別総会 開催報告記】

最新の病理学を捉え,未来を想う 矢野博久

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書籍情報

  • ISBN:9784011204202
  • ページ数:112頁
  • 書籍発行日:2024年1月
  • 電子版発売日:2024年2月2日
  • 判:B5変型
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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