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- 医学のあゆみ288巻7号 精神疾患における環境要因と遺伝-環境相互作用
商品情報
内容
・NGSによるWES/WGSの進展により頻度の高い遺伝子多型から頻度の低い変異まで様々な“遺伝要因”が同定された.遺伝要因と環境要因の絡みによりリスクとなる遺伝-環境相互作用にも着目する必要がある.
・本特集では,精神疾患の遺伝-環境相互作用,あるいは環境要因をテーマとし,古くて新しい知見をエキスパートが解説.疾患・薬物相互作用(cytochrome P450と喫煙)に関しても紹介していただく.
序文
はじめに
精神疾患のほとんどは,遺伝要因と環境要因が関与して発症する複雑疾患であることはよく知られている.実際,古くから遺伝疫学的研究は多数行われてきており,統合失調症や双極性障害の遺伝要因の指標である遺伝率は80%程度,うつ病のそれは40%程度と概算されている.20 世紀は分子遺伝学的研究を実施するための技術的な制限があったため,それ以上の進展はめだたず,他方,環境要因を調べる研究の方が確からしい結果を創出していたと考えられる.しかし,2000 年以降の安価なDNA マイクロアレイの開発,そして最近では次世代シーケンサー(next generation sequencer:NGS)による全エクソーム解析(whole exome sequencing:WES)/全ゲノム解析(whole genome sequencing:WGS)の進展により,頻度の高い遺伝子多型から頻度の低い変異までさまざまな,そしてピンポイントな“遺伝要因”が同定されてきている.さらにゲノムワイド関連解析(genome wideassociation study:GWAS)の結果を総体的にとらえ,“小さなeffect size が相加的に疾患発症に寄与する”と考えるポリジェニックモデルも精神疾患にフィットすることが証明された.
このような背景から,近年はややもすれば遺伝要因にばかり目がいきがちな状況になっている.しかし,どれだけサンプル数を拡大しようと,GWAS やWES/WGS だけではおそらくすべての遺伝要因は同定できるわけではないこと(例:missing heritability),また疾患のすべてを説明できるわけではないことは自明である.換言すると,環境要因はどう考えても重要であり,また,遺伝要因と環境要因の“絡み”があってはじめて“リスク”となりうる遺伝-環境相互作用にも着目する必要がある.
本特集では,精神疾患の遺伝-環境相互作用,あるいは環境要因をテーマとし,古くて新しい知見を本分野のエキスパートの先生方に執筆をお願いし,疾患・薬物相互作用(cytochrome P450 と喫煙)に関して紹介していただいた.これらを通じて,遺伝要因だけでない精神疾患発症のメカニズムや治療方法を整理し,新たな疾患研究・臨床応用へのアイデア創出の機会を提供したいと考えている.
池田匡志
Masashi IKEDA
名古屋大学大学院医学系研究科精神医学
目次
特集 精神疾患における環境要因と遺伝-環境相互作用
はじめに
うつ病における遺伝要因と環境要因
ひきこもりと精神疾患―従来の環境要因モデルから遺伝-環境相互作用モデルへ
統合失調症の環境要因と遺伝-環境相互作用
自閉スペクトラム症の遺伝-環境相互作用および環境要因
アルツハイマー病の遺伝-環境相互作用
心的外傷後ストレス障害(PTSD)における環境要因と遺伝-環境相互作用―逆境的小児期体験に着目した検討
精神科領域の薬物相互作用―統合失調症患者における喫煙の影響を含めた薬物動態学的相互作用
環境要因としてとらえた精神療法の治療反応性予測
【TOPICS】
神経精神医学
周産期の精神障害―精神科と産科との協働
眼科学
過去の肥満は記憶されている―一度肥満になると肥満解消後も神経炎症増悪のリスクは継続する
【連載】
医療システムの質・効率・公正―医療経済学の新たな展開(23)
くすりの費用対効果・価値評価―認知症抗体薬の評価とともに
遺伝カウンセリング―その価値と今後(13)
多因子疾患の遺伝カウンセリング
臨床医のための微生物学講座(3)
梅毒トレポネーマ
【フォーラム】
世界の食生活(12)
地中海料理の挑戦―食と健康の関係を考え直す
死を看取る―死因究明の場にて(4)
生と死の境界線(4)
数理で理解する発がん(8)
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書籍情報
- ISBN:9784006028807
- ページ数:70頁
- 書籍発行日:2024年2月
- 電子版発売日:2024年2月15日
- 判:B5判
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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