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- 小児トリセツ
- 小児の呼吸と循環管理のトリセツ
商品情報
内容
本書は小児の呼吸と循環の評価・管理方法について、基本となる考え方と具体的な実践法を、割り切って、大胆に解説する。
小児集中治療のトップランナーである著者が、まさに指導医のように手取り足取り指南する「トリセツ」である。
序文
はじめに
この本は,ついついPICUで働いているときの感覚で書き進めてしまい,何度も書き直しました。集中治療だけでなく,小児の急性期医療全般に携わる医療者のみなさんにも手に取ってほしいからです。小児患者はあまりいない,しかも重症小児は年に数えるほど。そんな施設でがんばっている医師・看護師が何かひとつでもヒントを得られるような,そしてそれが一人でも多くの小児のためになるような,そんな本を目指しました。
PICUで働いているからこそ分かる,現代医療の限界があります。PICUに来てからでは何をやっても手遅れ。もう少しだけ早く気づけていたら,もう少しだけ早く手を打てていたら変わっていたかもしれない。PICUで待っているだけではいけない。そう思うことが少なからずあります。
そんな折,この企画をいただきました。まずは,思うままに書いてみました。どんどん筆が進むような気がしたのですが,読み返してみたらかなりマニアックな内容で,全然「トリセツ」じゃありませんでした。そこで,ごく一部の人しか読んでくれないようなものはやめ,分かりやすさを第一義とすることにしました。細かなニュアンスや精確な記載にこだわりすぎないようにしました。
エビデンス? びっくりするくらい文献は出てきません。そう言いきっちゃっていいの? と思われる記述が少なからずあるかもしれません。でも,いいんです。小児に携わることのある医療者に最も大切なスキルを身につけてもらうための入り口に,つまらないこだわりはいらないのです。まずは割り切って,基本となる考え方やスキルをしっかりと身につけること。小児急性期医療の底上げのためには,それが一番大事です。その先にあるエビデンス云々は小児の集中治療を専門とする医療者が考えればいいのです。
PICUで働く医師は,自分も含めて,そういった大切なことを後進に伝える努力をなんだかんだ理由をつけて怠ってきた,あるいは出し惜しみをしてきたのではないか,と思うことがあります。
子どもの呼吸や循環の評価・管理をイチから学び,悪いサインにいち早く気づくまでのスキルを身につけることは,けっこう難しいと思います。教科書を読んでも,なかなか臨床と結びつかないという経験があるのではないでしょうか。私はそのために地元東北を離れてPICUでトレーニングを受け,成人の急性期医療を学び,海外にも臨床能力を高めるための場を求めました。
そして,そうして身につけた考え方やスキルをどうすれば多くの医療者に伝えられるか,考えました。臨床の現場でしか伝えられないこともたくさんあるけれど,それがすべてではありません。文章だからこそ伝えられることもたくさんあるのではないか,そう思いました。
たとえば,巻末資料に「重症患者のプレゼンテーションの極意」を付けました。プレゼンのたびに一つ一つ指摘していたらきりがありません。でもこれを読んで自己あるいは同僚のプレゼンを振り返り,ブラッシュアップしていくことができます。もともとは筆者の施設での教育のために書いたものですが,彼・彼女らは文章からスキルを身につけることを実践しています。
本書を手に取った人は向上心があり,小児のためにスキルを身につけようとしており,文章から多くを学び取ることができる人です。重症小児のことを20年考えてきた筆者の頭が,どんな思考過程をたどっているのか,そんなことを読者のみなさんと共有する試みもしてみました。こうでないといけない,というものではなく,何も道標がない人にとっての入り口だと思って楽しんでもらえれば幸いです。
最後になりましたが,絶妙のタイミングで素晴らしい企画をくださった盟友・笠井正志先生と,伝わりやすさを追求してくださった編集の中立稔生様に深謝いたします。
2024年2月
兵庫県立こども病院 小児集中治療科 部長
著者 黒澤寛史
目次
Chapter 1 小児の心肺蘇生
1.小児科医における心肺蘇生の目標
1 教育コースで基本を学ぶ
2 心肺蘇生アルゴリズムの成り立ち
2.エビデンスに基づいた心肺蘇生
1 BLS アルゴリズム
2 心停止アルゴリズム
3 心肺「脳」蘇生
Chapter 2 小児の呼吸評価と重症度判定
1.呼吸の評価項目
1 呼吸数
2 呼吸努力/呼吸筋などの動き
3 呼吸音/空気の入り/換気量
4 皮膚の色/パルスオキシメータ
5 呼吸の重症度判定
2.血液ガス分析による呼吸評価
1 動脈血vs 静脈血
2 酸素化の評価
3 いつ血液ガス分析を行うか
4 血液ガス分析の解釈
Chapter 3 小児の呼吸管理法と実践
1.低流量酸素システム
1 概要
2 低流量酸素システムの効果と注意点
3 各デバイスの種類と装着方法
4 導入方法
5 経過のみかた
6 いつやめるか
2.高流量酸素システム
1 概要
2 HFNC によるハイフローセラピーの効果と注意点
3 導入方法
4 経過のみかた
5 いつやめるか
症例でレビューしよう!
3.非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation;NPPV)
1 概要
2 非侵襲的陽圧換気の効果と注意点
3 導入方法
4 経過のみかた
5 いつやめるか
4.侵襲的人工呼吸(invasive mechanical ventilation;IMV)
1 概要
2 侵襲的人工呼吸の効果と注意点
3 導入方法〜気管挿管の準備
4 導入方法〜気管挿管の手順
5 挿管後の振り返り
6 注意点
7 経過のみかた
8 いつやめるか
9 トラブルシューティング
アドバンストレクチャー 人工呼吸管理をすべきか、せざるべきか
Chapter 4 小児の循環評価と重症度判定
1.循環評価の5箇条
1 血圧が正常値だから大丈夫、と言ってはいけない
2 機器に頼りすぎてはいけない
3 1 つのパラメータだけを根拠に判断してはいけない
4 心拍数に着目せよ
5 患者に触れてみよ
2.循環の評価項目
1 「循環」の話は難しい?
2 循環の評価項目とポイント
3.循環の重症度判定
1 ショックとは
4.ショックを見抜く─頻脈の鑑別
1 心拍数(脈拍数)は雄弁
A Arrhythmia(不整脈)、Anatomy(解剖)
B Bleeding(出血)、Breathing(呼吸)
C Low cardiac output(低心拍出量)、Pulmonary hypertension(肺高血圧)
D Pain(疼痛)、Seizure(けいれん)
E Temperature(発熱)、Medication(薬剤性)
2 重症の小児=頻拍・頻脈!
症例でレビューしよう!
Chapter 5 小児の循環管理法と実践
1.ショックに対応する
1 是正輸液
2 心血管作動薬の使い方
3 フェーズに応じた輸液療法
症例でレビューしよう!
Chapter 6 疾患別にみる小児の呼吸と循環管理
1.肺 炎
1 肺炎の呼吸管理
2 肺炎の循環管理
2.気管支喘息
1 気管支喘息の呼吸管理
2 気管支喘息の循環管理
3.RSウイルス感染症
1 RS ウイルス感染症の呼吸管理
2 RS ウイルス感染症の循環管理
4.小児のARDS(pediatric acute respiratory distress syndrome;PARDS)
1 定義と管理のポイント
2 PARDS の呼吸管理
3 PARDS の循環管理
5.敗血症性ショック
1 敗血症性ショックの呼吸管理
2 敗血症性ショックの循環管理
6.心筋炎
1 心筋炎の呼吸管理
2 心筋炎の循環管理
Chapter 7 重症小児診療のエッセンス
1.バイシステムで考える
1 バイシステムとは
2 バイシステムの評価項目
3 重症患者をプレゼンするときの注意点
2.どんな小児に人工呼吸が必要なのか
1 人工呼吸はABCDE で考える
3.重症小児のモニタリング
1 臨床能力で差がつくモニタリング
2 アラームへの感受性
4.重症小児の搬送のトリセツ
1 搬送スキルの重要性
2 搬送にあたって気をつけること
3 転院前患者情報
巻末資料1 気管挿管患者の鎮痛・鎮静薬のトリセツ
A 麻薬
B ベンゾジアゼピン
C ケタミン
D デクスメデトミジン
E クロニジン
F バルビツール
G 抱水クロラール
H プロポフォール
I ロクロニウム
鎮静・鎮痛薬の減量アルゴリズム
SBS(State Behavioral Scale)
WAT-1(The Withdrawal Assessment Tool-1)
巻末資料2 心血管作動薬のトリセツ
1 アドレナリン注
2 ノルアドレナリン
3 ドブタミン
4 ドパミン
5 ミルリノン
巻末資料3 重症患者の症例プレゼンテーションの極意
1 重症患者のプレゼンの基本
2 重症患者のプレゼン│実践編
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書籍情報
- ISBN:9784307170819
- ページ数:224頁
- 書籍発行日:2024年3月
- 電子版発売日:2024年3月9日
- 判:B6変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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