まえがき
本書を通読すれば,
非整形外科医に必要な骨折対応学はすて身につきます.
過去に整形外科の本を利用しても"すべて"の整形外傷の対応ができなかった非整形外科医は多いです.なぜでしょうか?それは,多くの本は整形外科医による骨折"治療"学に基づいて書かれているからです.しかし,非整形外科医に求められるのは骨折の"治療"でなく,"診断と初期対応"です.
本書は,非整形外科医を対象にした『骨折対応学書』.通読すれば骨折に対応できるようになります.それを証明するため,非整形外科医にとっての骨折を3種類に分けて解説します.
非整形外科医にとっての骨折は次の3つのどれかだ
1.明確骨折タイプ誰でもレントゲンで指摘できる明らかな骨折
2.微妙骨折タイプ見どころを知って,初めてレントゲンで判断できる骨折
3.亡霊骨折タイプ絶対にレントゲンでは見えない骨折
1.明確タイプの場合は診断可能ですから困りません.対応方法を後で調べることも可能です.ところが2.3の場合は診断ができず,対応に困ります.骨折名がわからないと,既存の整形外科の書籍のページをめくっても対応は調べられません.
ではここで,あなたが実際に3つのタイプを区別できるかどうか,クイズをしてみましょう.
クイズ1
65歳女性
階段から転倒して左膝に疼痛あり.
よく骨折する場所にできるだけ多く線を
引いてください.
(正解は14ページ)
線が引けたら,14ページの正解と照合してください.その結果,正解と1〜2本しか一致しなかったあなたは,1.明確骨折タイプしか判断できません.2.微妙骨折タイプを診断するには,8割以上の骨折線が一致している必要があります.
こうした骨折は,レントゲン検査前に骨折線をイメージできて初めて判断できます.心電図で虚血評価ができるのは,『どこに』『どんな形の』波形が出ると異常かをあらかじめイメージできているからなのと同じです.『どこに→V2/V3/V4やII/III/aVFに』『どんな形の→ST上昇の』波形が出れば異常だ,と検査前にイメージできているからこそ診断が可能なのです.反対に,多くの研修医が脳波を読めないのは,『どこに』『どんな形の』脳波があると異常かをイメージできていないからです.
同じように,微妙骨折タイプのレントゲンを読影するためには,事前にイメージを持っていることが必要なのです.そして,膝だけでなく,肘や肩などすべてのレントゲンで骨折線がイメージできれば,すべての骨折診断が可能になります.
そこで,あなたが骨折線をイメージできているか,さらに確認してみましょう.
クイズ2 4〜9ページの純白レントゲンに予想骨折線を引いてください.
どうでしたか?予想骨折線が正解と完璧に一致していた人には,この本はもはや必要ないかもしれません.しかしあまり線を引けなかった人には,本書は通読の価値が十分あります.各章は複数の症例を疑似体験することで骨折線をイメージできるように構成されています.また,診断後のマネジメントも記載しますので,初期対応もマスターできます.
予測骨折線がすべてイメージできて初めて,正常レントゲンといえます.その上で画像に映らない亡霊骨折タイプを臨床的に推測することができます.そして明確・微妙・亡霊の各タイプの初期対応をあらかじめ知っておけば,非整形外科医のための骨折対応学は完璧です.
最後のページまでたどり着いたあなたは,すべての純白レントゲンに予想骨折線を引け,各タイプの骨折を正しくマネジメントできる,あらゆる骨折の初期対応を身につけた非整形外科医,『骨折ハンター』となっていることを確約します.
2019年8月