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- 病理と臨床 2022年2月号(40巻2号)エピジェネティクスと病理
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序文
特集:エピジェネティクスと病理
現在,がん遺伝子パネル検査によるがんゲノム治療は,保険診療として行われており,その適応は広がりつつある.過去数十年にわたって,多くの研究者が,個別にがん遺伝子やがん抑制遺伝子として関連遺伝子を特定し,その基礎的研究の情報をデータベースとして積み重ねてきたことと,遺伝子の異常や遺伝子の発現状態を短時間で網羅的に検査することができるテクノロジーの発達により,がん遺伝子パネル検査が可能となった.病理診断の領域でも,標本の選別に始まり,がん遺伝子パネル検査の解釈に至る全てのプロセスで病理専門医による適切な助言が求められており,そのための分子病理専門医認定制度が既に始まっている.
一方,がんの発生や進展過程には,遺伝子・ゲノムを構成する塩基配列の変化によらない遺伝子発現の変化,すなわちエピジェネティクスあるいはより包括的にエピゲノムも大きく関わっている.例えば,がん抑制遺伝子の遺伝子発現調節領域などに集簇するシトシン塩基にメチル化修飾が加わると,その遺伝子の発現が低下し,がん細胞の自律的な増殖がもたらされるということが知られている.このような変化はがん以外の多くの疾患形成にも重要であることが明らかにされつつある.がん遺伝子パネル検査では,点突然変異や欠失,重複,キメラ形成といったDNA塩基の変異が注目されがちであるが,エピジェネティクスの概念を十分理解した上で,がん遺伝子パネル検査の解釈を行うことが,正確な診断と治療選択につながるものであり,ゲノムとエピゲノムとの統合的な理解が欠かせない時代となっている.
『病理と臨床』では,いち早く2009年に金井弥栄先生の編集による特集号「エピジェネティクスと病理」が刊行され,エピジェネティクスについての情報を広く病理医に発信してきた.それから10年以上が経過し,エピジェネティクスに関する知見は更新され新たな技術が導入されている.本特集号では,分子病理専門医制度が本格的に始動するこの時期をとらえ,再び「エピジェネティクスと病理」を取り上げることとした.
エピジェネティクスの根本的な事項について,最初に総論として記述し,次に前がん状態や悪性腫瘍の発生に関わるエピゲノムの異常,そして悪性腫瘍の中でも,胃癌,肝臓癌,骨軟部腫瘍の各領域で解明されてきたエピジェネティクスに関わる異常について,最先端の研究を含めてご紹介いただいた.さらに,腫瘍微小環境に関わるmicroRNAを中心とするユニークなエピジェネティクス機構,腫瘍以外の疾患として神経変性疾患と関わるエピジェネティクス異常を取り上げた.また,エピジェネティクス異常をターゲットとした新たな創薬の分野での最近の動向や,日常病理組織診断に直結するヒストン蛋白の異常といった幅広い内容を網羅した.本特集が,ゲノム医療に関わる病理医の知識の整理や日常病理診断の一助となれば幸いである.
北澤荘平 [愛媛大学大学院医学系研究科 分子病理学講座]
宇於崎 宏 [帝京大学医学部 病理学講座]
目次
【特集】
エピジェネティクス総論……北澤荘平
前がん状態のエピゲノム異常―発がんにおける意義と臨床応用―……金井弥栄
胃癌とエピジェネティクス異常……岡部篤史 他
肝発がんのエピゲノム・エピジェネティクス……新井恵吏 他
骨軟部肉腫のエピゲノム異常……田中美和 他
microRNAと腫瘍微小環境……菊地良直 他
神経変性疾患とエピジェネティクス……間野達雄 他
ヒストン蛋白の異常と病理診断……北澤理子
ゲノム機能を標的とした創薬への遺伝子座
特異的クロマチン免疫沈降法の応用……藤田裕貴 他
【速報解説!ここが変わった】
「WHO Classification of Tumours, 5th Edition, the Central Nervous System」改訂ポイント……畑中佳奈子 他
【連載】
・マクロクイズ
[154]
内藤 裕 他
・鑑別の森
[5]
皮膚の境界母斑とmelanoma in situ
Answer 1:泉 美貴
Answer 2:木村鉄宣
・若手病理医のためのキャリアパス講座
[3]
女性病理医のキャリア……中村律子
【今月の話題】
口腔癌と腫瘍間質……中野敬介 他
MYC と小児腫瘍……中澤温子
乳癌薬物療法後の針生検診断……堀井理絵
G2P-Japan consortium……田中伸哉
【Information】
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書籍情報
- ISBN:9784011204002
- ページ数:108頁
- 書籍発行日:2022年2月
- 電子版発売日:2022年3月2日
- 判:B5変型
- 種別:eBook版 → 詳細はこちら
- 同時利用可能端末数:3
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