病理と臨床 2022年6月号(40巻6号)PD-L1検査と免疫チェックポイント治療のバイオマーカー

  • ページ数 : 120頁
  • 書籍発行日 : 2022年6月
  • 電子版発売日 : 2022年6月7日
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内容

特集テーマは「PD-L1検査と免疫チェックポイント治療のバイオマーカー」. 腫瘍免疫と免疫チェックポイント/承認されている免疫チェックポイント阻害薬とその臨床/肺癌におけるPD-L1検査/頭頸部癌・食道癌におけるPD-L1検査/悪性黒色腫におけるPD-L1検査/ミスマッチ修復異常の検査/TMB-High腫瘍と免疫チェックポイント治療 他を取り上げる.連載記事として,[マクロクイズ],[鑑別の森],[若手病理医のためのキャリアパス講座]等を掲載.

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序文

特集:PD-L1検査と免疫チェックポイント治療のバイオマーカー


免疫逃避機構に関連する物質を標的とした免疫チェックポイント治療は,その効果から,細胞障害性抗がん薬,分子標的治療と並ぶ治療法の一つとして確立され,多くの腫瘍に対する有効性が示されている.また,ミスマッチ修復異常やtumor mutation burdenhigh(TMB-High)などの分子生物学的な特性に基づく臓器横断的な治療法としても確立している.一方で,この治療効果を予測するにあたってPD-L1 発現が従来用いられてきたが,適応する腫瘍が増えるに伴い,その計測方法や基準値がそれぞれ異なり,実臨床で扱うのに困難を覚えるようになっている.肺癌では腫瘍細胞でのPD-L1 発現を評価するtumor proportion score(TPS)が主に用いられるのに対し,腫瘍細胞での発現と腫瘍浸潤リンパ球とを併せて評価するcombined positive score(CPS)を用いる頭頸部癌・食道癌・乳癌もある.また,同一臓器であっても,使用する薬剤によってそのアッセイ法および評価方法が異なり,例えばトリプルネガティブ乳癌に対しては,アテゾリズマブ併用療法の際にはSP142抗体を用いてimmune cells(IC)を評価するのに比し,ペムブロリズマブ併用療法の際には22C3抗体でのCPSを評価する必要がある.いずれもコンパニオン診断薬であるため,当該治療を考える際にはこれらのPD-L1 検査を施行する必要がある.

一方で,コンパニオン診断薬ではなく投与に必須ではないが,治療効果を推定する上で有用な情報を提供するコンプリメンタリー診断テストとして,最適使用推進ガイドラインで推奨されている検査もある.その例としては,肺癌における切除不能局所進行非小細胞肺癌に対する根治的化学放射線療法の術後治療でデュルバルマブを用いる際のSP263 抗体による1%以上の陽性例の推奨などである.さらには,殺細胞性抗がん薬や他の機序の免疫チェックポイント阻害薬との併用によってそのバリエーションが増大するとともに,治療ラインによっても免疫チェックポイント治療適応に対する評価基準が異なる場合があり,極めて複雑化している.

PD-L1 検査については『病理と臨床』2018 年1 月号で特集「免疫チェックポイント療法と病理」が組まれ,免疫チェックポイント治療と病理診断の関わりについて広く記述されているが,当時はここまでの広がりをカバーするには至っていなかった.そこで今回は複雑になったこれらの治療法に合わせ,患者選択を行わなければならないコンパニオン診断テストと,投与に必須ではないが治療効果を推定するうえで有用な情報を提供するコンプリメンタリー診断テストとを明確に区別し,免疫チェックポイント治療における病理診断医が知っておくべき知識の理解が得られるような企画とした.日常診療のレファレンスになれば幸いである.


谷田部 恭 [国立がん研究センター中央病院 病理診断科]
藤井 誠志 [横浜市立大学医学部大学院医学研究科・医学部 分子病理学]

目次

【特集】

腫瘍免疫と免疫チェックポイント……小室裕康 他

承認されている免疫チェックポイント阻害薬とその臨床……中島裕理 他

肺癌におけるPD-L1検査……横瀬智之 他

乳癌におけるPD-L1検査……吉田正行

頭頸部癌・食道癌におけるPD-L1検査……藤井誠志 他

悪性黒色腫におけるPD-L1検査……小俣 渡

ミスマッチ修復異常の検査……関根茂樹

TMB-High腫瘍と免疫チェックポイント治療……高野忠夫

【連載】

マクロクイズ[158]

羽賀敏博 他

鑑別の森[9]唾液腺のリンパ上皮性唾液腺炎とMALTリンパ腫

Answer 1:長尾俊孝

Answer 2:中村直哉

若手病理医のためのキャリアパス講座[7]

病理から見た霞が関(2):経済産業省ヘルスケア産業課への出向により見えたもの……山本浩平

【今月の話題】

Hodgkin & Reed-Sternberg細胞とは何か……加留部謙之輔

細胞動態解析と病理学……黒瀬 顕

【CPC解説】

運動ニューロン徴候と軽度認知障害を呈したALS-TDP(amyotrophic lateral sclerosis-TAR DNA-binding protein)の一剖検例……坂口涼子 他

【Information】

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書籍情報

  • ISBN:9784011204006
  • ページ数:120頁
  • 書籍発行日:2022年6月
  • 電子版発売日:2022年6月7日
  • 判:B5変型
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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