医学のあゆみ287巻13号 アルツハイマー病―研究と治療の最前線

  • ページ数 : 272頁
  • 書籍発行日 : 2023年12月
  • 電子版発売日 : 2023年12月19日
¥6,490(税込)
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商品情報

内容

・わが国でアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD )に代表される認知症を患われる方の数は数百万名にのぼり,社会損失は年間十数兆円に達し,われわれ国民の社会生活,経済活動にも重大な影響を及ぼしはじめている.
・2023年に日米で薬事承認されたレカネマブはADの進行を抑える効果がある.投与適否の診断には, PETスキャン,副作用管理と安全使用にはMRIが重要であり.これらと血液バイオマーカー診断の組み合わせにより,認知症の超早期段階での治療が期待される.
・ADの治療薬が国民に行き渡るには,認知症疾患医療センターの充実をはじめとする医療の均てん化に加えて, “認知症専門医”の充実は焦眉の急である.本特集では, ADをはじめとする認知症に関する最先端の知見を,各分野のエキスパートの先生方に解説いただく.

序文

はじめに


わが国でアルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)に代表される認知症を患われる方の数は数百万名,社会損失は年間十数兆円に達し,われわれ国民の社会生活,経済活動にも重大な影響を及ぼしはじめている.2023年に,世界に先がけてわが国において開発され,ADの疾患修飾薬としてはじめて日米の規制当局から薬事承認の得られた抗アミロイドβ抗体薬レカネマブは,ADの本質的なメカニズムに直接働きかけ,その進行を抑える画期的な医薬品と申せる.その投与適否の診断には,核医学を用いたアミロイドPETスキャンが必須であり,また副作用の管理と安全な使用には磁気共鳴画像法(MRI)が重要な役割を果たす.これらの技術を,最近わが国でも急速に開発の進みつつある血液バイオマーカー診断と組み合わせることにより,認知症の超早期段階での治療に結びつくことが期待される.

治療薬が国民に行き渡るには,医療提供体制の充実が急務となる.認知症疾患医療センターの充実をはじめとする医療の均てん化に加えて,新規治療薬の適正かつ安全な臨床使用で中核的な役割を担う“認知症専門医”の充実は焦眉の急である.PET診断や投薬体制を整えても,患者の入口となる認知症の専門診療を担う医師の数とその全国配置を格段に充実させなくては,適切な医療提供は不可能である.現在,日本で専門的な認知症医療を担っているのは,約2,200名の日本認知症学会専門医と,約1,000名の日本老年精神医学会専門医であり,両学会は緊密に協力しつつ認知症医療のさらなる向上に努めている.わが国における専門医制度を全医療分野にわたって体系化し,高いレベルでの均てん化を目指している“日本専門医機構”ならびに国の先導のもとに,日本認知症学会,日本老年精神医学会の専門医を糾合し,国民のために役立つ認知症専門医制度を拡充して,医療提供にあたらせることは,認知症医療充実のためのすべての根幹となることに疑いはない.専門医がPETイメージングなどの画像診断,血液などの体液バイオマーカーを駆使し,近未来にはAI読影などの最新技術に支えられた統合的な患者ワークフローの下で適正な診断・治療を行い,諸外国とも連携して認知症の検査,治療の輪を拡大していくことは,ポストコロナの世界的高齢社会の諸問題を解決し,ふたたび発展につなげていくための,明るい道筋につながるものと考えられる.

疾患修飾薬の登場するいま,ADをはじめとする認知症に関する最先端の知見を,本特集において各分野のエキスパートの先生方からわかりやすく解説いただけたことは,まことに時宜を得た幸いにほかならず,改めて心より御礼を申し上げます.


岩坪 威
東京大学大学院医学系研究科神経病理学,国立精神・神経医療研究センター神経研究所

目次

特集:アルツハイマー病─研究と治療の最前線

はじめに─アルツハイマー病治療の新時代に向けて  岩坪 威

基 礎

アルツハイマー病とミクログリア炎症  富田泰輔

アルツハイマー病とβアミロイド蓄積  橋本唯史

Aβ凝集とプロトフィブリル  小野賢二郎

アルツハイマー病の病理変化とリスク因子としての糖尿病  若林朋子

細胞外フローを介した脳内クリアランス─グリアリンパ系と硬膜リンパ系  山田 薫

タウオパチーの構造生化学的な疾患分類  樽谷愛理長谷川成人

アルツハイマー病のモデル開発─前臨床モデルから臨床モデルへ  眞鍋達也齊藤貴志

エピジェネティクスとアルツハイマー病  間野達雄岩田 淳

バイオマーカーとゲノム

アルツハイマー病の脳脊髄液バイオマーカー─AT(N)分類から5年  春日健作

質量分析を用いた血液バイオマーカー測定法の開発金子直樹中村昭範

疾患修飾薬時代のAPOE遺伝学的検査の臨床的意義  池内 健

アルツハイマー病のGWAS  宮下哲典

画像AI

アミロイドPETイメージング─アミロイド抗体薬による治療を迎えて  加藤隆司他

タウPET  樋口真人

グリアリンパ系(glymphatic system)のMRIを用いた臨床評価  佐藤典子太田深秀

アルツハイマー病の安静時機能的ネットワーク  渡辺宏久

MRIとアミロイド関連画像異常(ARIA)  堀内大右他

アルツハイマー病の新規MRIプローブ  遠山育夫柳沢大治郎

アルツハイマー病とデータサイエンス─データ活用によるプレクリニカルAD研究促進  佐藤謙一郎

AIを用いたアルツハイマー病の診断  武田朱公

予防疫学

認知症の地域疫学研究の知見  二宮利治

アルツハイマー病認知症の予防を目指した多因子介入  杉本大貴他

臨床治療薬

アルツハイマー病の診断基準の変遷と将来像  井原涼子

アルツハイマー病における認知機能評価  森 悦朗

アルツハイマー病の鑑別診断─AGD,LATE,FTD,FLTD  東 晋二新井哲明

アルツハイマー病疾患修飾薬概論と抗Aβ抗体医薬の実用化栗原正典岩田 淳

全身性アミロイドーシスからアルツハイマー病へのimplication  関島良樹

実臨床におけるアルツハイマー病疾患修飾薬導入の課題─レカネマブを中心に  吉山容正

アミロイド関連画像異常(ARIA)とその診断治療  冨本秀和

タウを標的とする治療の将来  田中稔久

アルツハイマー病症候改善薬の開発と将来像  本間 昭

認知症診療における患者家族への非薬物的アプローチ  田村法子三村 將

若年性アルツハイマー病と非定型/海馬保存型アルツハイマー病  川勝 忍小林良太

プレクリニカルアルツハイマー病の診断と臨床研究  新美芳樹

アルツハイマー病の行動心理症状  數井裕光

認知症ケアと共生社会  繁田雅弘今井幸充

社会医学政策

認知症と社会保障  粟田主一

認知症の地域包括ケア─認知症ケアパスの活用  鷲見幸彦進藤由美

認知症施策と共生社会実現に向けた取り組み  石井伸弥

認知症の人に対する生活支援  木下彩栄

本人の立場から認知症の課題を考える─生活上の課題とサポートの重要性  奈倉道隆

家族の立場から認知症の課題を考える  鎌田松代

アルツハイマー病の医療経済学  池田俊也

アルツハイマー病からみた認知症診断治療ガイドラインの将来像  和田健二

新時代のアルツハイマー病治療に求められる専門医教育  秋山治彦

「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」の成立─法律の内容と今後について  鈴木隼人

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書籍情報

  • ISBN:9784006028713
  • ページ数:272頁
  • 書籍発行日:2023年12月
  • 電子版発売日:2023年12月19日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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