医学のあゆみ264巻2号 ホスホリパーゼA2-最近の進歩

  • ページ数 : 70頁
  • 書籍発行日 : 2018年1月
  • 電子版発売日 : 2023年8月8日
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内容

ホスホリパーゼA2-最近の進歩
村上 誠(東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター健康環境医工学部門.日本医療研究開発機構(AMED)CREST)

 本特集で取りあげるホスホリパーゼA2(PLA2)は,定義上は「リン脂質のグリセロール骨格2位のエステル結合を加水分解して脂肪酸とリゾリン脂質を生成する酵素」をさす.従来,PLA2は炎症時のアラキドン酸代謝における役割がもっぱら注目されてきた.しかし,生体内には固有の発現分布と基質選択性を示す“広義”のPLA2分子種が30種以上存在し,このなかには定義上のPLA2活性ではなくリン脂質の1位を切るPLA1活性,中性脂質を分解するリパーゼ活性,さらにはPLA2の逆反応であるアシル基転移酵素活性を有する酵素もあることがわかってきた.すなわち,基質であるリン脂質から切り出される脂肪酸やリゾリン脂質はPLA2分子種によって異なり,また“PLA2”と命名されている分子がかならずしも生体内でPLA2反応を担っているとは限らないのである.各PLA2は生体内局所環境に応じて多様かつ異なる脂質代謝物を動員し,多彩な生命応答にかかわる.それゆえ,生体内におけるPLA2の機能を把握するためには,各PLA2分子種の酵素学的・構造学的特徴を理解したうえで,組織微小環境における標的基質の存在状態や代謝産物のプロファイルを考慮する必要がある.(序文より一部抜粋)

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序文

はじめに

本特集で取りあげるホスホリパーゼA2(PLA2)は,定義上は「リン脂質のグリセロール骨格2 位のエステル結合を加水分解して脂肪酸とリゾリン脂質を生成する酵素」をさす.従来,PLA2は炎症時のアラキドン酸代謝における役割がもっぱら注目されてきた.しかし,生体内には固有の発現分布と基質選択性を示す“広義”のPLA2分子種が30 種以上存在し,このなかには定義上のPLA2活性ではなくリン脂質の1 位を切るPLA1活性,中性脂質を分解するリパーゼ活性,さらにはPLA2の逆反応であるアシル基転移酵素活性を有する酵素もあることがわかってきた.すなわち,基質であるリン脂質から切り出される脂肪酸やリゾリン脂質はPLA2分子種によって異なり,また“PLA2”と命名されている分子がかならずしも生体内でPLA2反応を担っているとは限らないのである.各PLA2は生体内局所環境に応じて多様かつ異なる脂質代謝物を動員し,多彩な生命応答にかかわる.それゆえ,生体内におけるPLA2の機能を把握するためには,各PLA2分子種の酵素学的・構造学的特徴を理解したうえで,組織微小環境における標的基質の存在状態や代謝産物のプロファイルを考慮する必要がある.

PLA2は構造的にいくつかのファミリーに分類される.本特集では,各PLA2ファミリーの性質,関連する脂質代謝,遺伝子改変マウスの表現型,ヒト疾患との関連などに関する最新の研究動向について,数名の専門の先生に解説いただいた.PLA2分子群が制御する脂質代謝の多様性とその生理的意義の解明は,まさに生命科学研究の一翼を担っている.これまでに脂質研究の一部としてPLA2が取りあげられることはあったが,PLA2のバイオロジーのみを題材とした特集号がわが国で組まれるのはおそらくはじめてのことであり,当該研究領域を牽引してきた立場としては感無量である.各PLA2が担う脂質代謝は新規創薬やバイオマーカーとしてのポテンシャルを秘めている.本特集を通じて多くの基礎研究者や医療関係者がPLA2に関心を抱いていただければまことに幸いである.最後に,このような特集を企画していただいた本誌編集部に心から感謝申しあげたい.


村上 誠
(東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センター健康環境医工学部門.日本医療研究開発機構(AMED)CREST)

目次

特集 ホスホリパーゼA2-最近の進歩

はじめに 村上 誠

sPLA2 のリポクオリティと皮膚疾患 山本 圭

分泌性ホスホリパーゼA2 と炎症性疾患-炎症性疾患における細胞外リン脂質代謝の生理的意義 武富芳隆・村上 誠

cPLA2(PLA2G4)ファミリー-cPLA2αの病態および生理機能における役割 北 芳博

iPLA2/PNPLA ファミリーがかかわる脂質代謝異常と疾患 平林哲也

iPLA2β(PLA2G6)と神経変性疾患 新沢康英

PAF アセチルハイドロラーゼの病態生理的意義 河野 望

リソソーム・ホスホリパーゼA2(LPLA2)-特性と機能 阿部 晃

PLAAT(PLA2G16)ファミリー 宇山 徹・上田夏生

連載

テレメディシン-遠隔医療の現状と課題(14)

ICT による生活習慣マネジメントの実現に向けて-介入支援すべき患者をみつけるAI の研究開発事例 倉沢 央

救急医学-現状と課題(5)

小児救急医療の現状と課題 市川光太郎

TOPICS

癌・腫瘍学 正常細胞ががん細胞を排除する新しい仕組み 大澤志津江

神経内科学 神経疾患における髄液自然抗体とその役割 木村暁夫・犬塚 貴

免疫学 腸内真菌叢の解析 藤本康介・植松 智

FORUM

生殖倫理の現況と展望(12) 日本における生殖医療-宗教・倫理からの視点 山折哲雄

交通安全問題を自動車運転と疾患・認知機能との関係から考える(前編) 伊藤安海

パリから見えるこの世界(64) 啓蒙主義と反啓蒙主義,あるいは我々を分断するもの 矢倉英隆

次号予告

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書籍情報

  • ISBN:9784006026402
  • ページ数:70頁
  • 書籍発行日:2018年1月
  • 電子版発売日:2023年8月8日
  • 判:B5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
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