抗HIV/エイズ薬の考え方、使い方、そして飲み方 ver. 3 ゼロエイズと「新時代」のために

  • ページ数 : 230頁
  • 書籍発行日 : 2023年10月
  • 電子版発売日 : 2023年9月28日
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商品情報

内容

ゼロエイズ実現のためのマイルストーン

HIV/エイズの診療は治療薬の進歩を背景に標準化され,予後も劇的に改善されました.それに伴い患者の高齢化の問題も浮上していますが,その先に新規感染者ゼロの「ゼロエイズ」を目指す未来も視野に入りつつあります.本書では旧版の内容をアップデートし,「元気なHIV患者」に接する機会があるかもしれないプライマリ・ケア医,ナース,薬剤師,そして当事者である患者さんにとって必要な情報をリーダブルにまとめました.

序文

ver. 3 の「はじめに」

「抗HIV/エイズ薬の考え方,使い方,そして飲み方ver. 3 ゼロエイズと「新時代」のために」を上梓いたします.

過去に書いたように,HIV 感染のケアについては1990 年代後半ですでに「完成」していると思います.効果的な抗レトロウイルス療法(ART)の開発により,患者の予後は劇的に改善し,HIV 感染は死なない病気になりました.あとから出てくる新薬はすべてART の「バージョンアップ」に過ぎず,本質的には我々のケアの形はこの20 年ちょっと,ほとんど変化していないのです.

個々の患者のケアは大きな進化はありません.が,HIV/エイズケアに「新時代」がやってくる.ぼくはそう考えています.これが今回,ver. 3 を書いた理由です.

一つは,ゼロエイズです.ゼロエイズはもちろん,「ゼロコロナ」のもじりです.しかし,オミクロン変異株が出てきてから抑え込みがほぼ非現実的になってきたSARS—CoV—2 感染症,COVID—19 に対して,HIV の新規感染は「本当に」ゼロにできます.もちろん,現在存在するHIV 感染者を「非感染者」にする実質的な方法はまだありません(例外はありますが).しかし,それとてART の活用でCD4 を伸ばし,エイズ発症自体はゼロにすることは可能です.

本稿執筆時点では,日本のHIV/エイズ患者は減少傾向です.そして,我々が行ったベイズ推計を加味した時系列解析によると,このペースを保っていれば2031 年には日本でのHIV 感染者の新規発生をゼロにすることは可能です(あくまでも,可能性のあるシナリオの一つであり,「そうなる」という予測ではありません).まあ,新型コロナで世の中全体が激変してしまったので,この趨勢は良い方にも悪い方にも「ぶれる」可能性もあるのですが.

ART で血中のウイルスを検出感度未満にすれば,コンドームなしでのセックスでもHIV 感染は起きない可能性が高いです.これがU=U(Undetectableequals untransmittable)という概念です(後述).

新規感染をゼロにし,エイズ発症をゼロにする.「ゼロエイズ」にはこの2 つの意味が込められています.どちらも,実践可能ですし,世界のあちこちでこの実現が目指されています.

新規感染がゼロになり,エイズ発症がゼロになったとき,我々には新しい時代,「新時代」がやってきます.

そのときは,おそらく「専門家」の時代は終焉します.HIV 感染者はプライマリ・ケア医にみてもらうのが主流になるのです.あれ? この話,前のバージョンでもやったな.まあ,いいか.

新時代の医師,看護師,薬剤師,ソーシャル・ワーカーなどなど,HIV 感染に関係するかもしれないすべての人達(あと,学生さんも)のために本書を書きました.「HIV 界隈の人」という業界の狭い世界は本書のターゲットではありません.文字通り,すべての医療従事者が本書の想定読者なのです.みんなが買ってくれたら本書はベストセラーやん! あ,あとお薬を飲む患者さんも,本書は想定読者にしています.よって,めっちゃわかりやすい,ためになる内容を目指しました.

現実は厳しくて,HIV に関心を持っていただける医療者は稀有な存在です.こんな本を書いてもなかなか手にとっていただけない可能性が高いです.せめて,立ち読みでもいいのでちょっと読んでいただけると嬉しいです!


2023 年4 月

岩田健太郎

目次

第1章 エイズ治療の世界に触れてみよう

1 わかりやすくなった,HIVのお薬

 抗HIV薬の名前は複数ある

 抗HIV薬は組み合わせて使う

 ARTを実際に使ってみよう

2 イワタとHIVのささやかな歴史

3 ARTのざっくりな様相

 INSTIとは

 日本におけるHIV/AIDS

4 HIVのしくみ,ARTのしくみ

 HIVとは何か

 エイズとは?

 大切なのは,CD4とウイルス量

 HIV感染・エイズの自然歴

 エイズの診断

 いつからARTを始めるか?

 実際の治療例

 アイリス(IRIS)とは何か?

 ARTとお金の話

 Dual therapyの可能性

 ジェネリックという選択肢

 実際のARTの始め方

 何を目標にするか?

 副作用の問題

 耐性の問題

 ARTはいつまで飲むのか? いつになったら止めてもよいか?

 ART治療がうまくいかないときは?

5 耐性検査とは?

 薬剤耐性検査の読み方

6 ARTの基本骨格

 

第2章 抗HIV薬各論

1 インテグラーゼ阻害薬

 ラルテグラビル(RAL)

 ドルテグラビル(DTG)

 ビクテグラビル(BIC)

 エルビテグラビル(EVG)/コビシスタット(cobi)

 カボテグラビル(CAB—LA) ボカブリア

2 NRTI 105

 ラミブジン(3TC)・エムトリシタビン(FTC) XTC

 アバカビル(ABC)

 テノホビル(TDF)

 ジドブジン(AZT)など,その他のNRTI

3 NNRTI

 エファビレンツ(EFV)

 リルピビリン(RPV)

 ドラビリン(DOR)ピフェルトロ(R)

4 プロテアーゼ阻害薬(PI)

 ダルナビル(DRV)

5 CCR5阻害薬

 マラビロク(MVC)

 

第3章 さまざまな合併症のことなど

1 結核になったら

2 B型肝炎(HBV感染)の合併時は……

3 C型肝炎合併例

4 肝機能が悪いときのART

5 腎機能が悪いときのART

6 妊婦および小児

7 プライマリ・ケアとHIV

 家族歴

 社会歴

 アレルギーと内服

 Review of System(ROS)

 身体診察

 内分泌代謝疾患のチェック

 薬を使わない治療も選択肢に

 性感染症のチェック

 他の感染症

 予防接種のチャンスを逃さない

 G6PD欠乏

 妊娠

 授乳

 血中テストステロン濃度

 他の感染症のスクリーニング

 がんの予防

 歯科衛生

 脂質異常

 糖尿病

 骨密度

 非HIVのコモンな問題に気をつける

 食事

 高齢者の併用薬

 フレイルのスクリーニング

 ペット

8 急性レトロウイルス症候群

9 針刺し対応,レイプ対応

 PrEP 

10 神経症状がある場合

11 脂質異常の治療

12 糖尿病

13 HIVと固形臓器移植

14 日和見感染(OI)やその他の合併症の治療

 予防薬

 OIの治療(コモンなもの)

参考文献

巻末対談

「HIV/AIDS診療の黎明とこれから」(岡 慎一×岩田健太郎)

おわりに


索引

【付録1】抗HIV薬一覧(よく使うもの)

【付録2】よく使う薬剤組み合わせ(原寸大)

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書籍情報

  • ISBN:9784498117228
  • ページ数:230頁
  • 書籍発行日:2023年10月
  • 電子版発売日:2023年9月28日
  • 判:A5判
  • 種別:eBook版 → 詳細はこちら
  • 同時利用可能端末数:3

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